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死にたい女の子と優しい女の子

 むかしむかし、ある所に魔女がいた。その魔女は不老不死について研究をしていた。その過程で魔女は長く生きることができた。その長い人生の中でついに魔女は不老不死の研究を成功させた。しかしその研究の成果は魔女を不老不死にさせるものではなく、自分ではない誰か一人だけを不老不死とするものだった。魔女はそれが自分にできる研究の果てだと悟った。魔女はその術を世界の誰かに、自分もわからない誰かにかけた。それと同時に魔女はその長い長い人生に終わりを告げた。魔女の祝福を幸運にも授かったの16歳の可憐な少女であった。とんでもなく白い肌にとても長い白髪そしてそれはもう神がその悠久の時間を持って創り出したかのような体を持った少女であった。少女はその祝福と美貌を持って今も幸せな人生を送っているという。


 母親が女の子にお話を聞かせた。

「その人って今もどこかに暮らしているの?」

 母親は優しい口調で

「ええ、今もどこかで幸せに暮らしているわ」


 女の子は少女に会ってみたいと思った。その白髪を手で梳いたり、その体を見て絵を描いてみたり、少女が送ってきたであろう人生を聞いてみたかった。何より少女と友達になりたかった。けれどもお話の中の登場人物に会えるわけもなく、やがて女の子は、成長してそんなことは忘れてしまった。


 時は流れ、かつての女の子は高校に入学するほど大きくなっていた。


「準備はできたの?」


「ええ、もう完璧よ」


「そう、なら気をつけてね」


「大丈夫!行ってきます!!」


 かつての女の子は勢いよく家から飛び出し勇ましく歩き出した。燦々と輝らつく太陽までもが彼女の門出を祝っているようだった。


 しばらく女の子は歩いていると道の途中に同じ制服を着たとてつもなく綺麗な女の子がいた。


「こんにちは。その制服ってことは、同じ高校よね。私、高木美優と言います。よろしくね!」


 女の子は、元気よく綺麗な女の子に話しかけた。おおよそ遠慮というものがない。彼女のようなものを陽キャと呼ぶのであろう。


 綺麗な女の子は、胡乱げな目で彼女を見つめ面倒くさそうに

「佐藤えま」

 とだけ答え、まるでこれ以上の質問を拒むかのようにその場からさっさと歩いて行きました。


 女の子はこんな礼儀を全く知らないような子にも同じクラスにならないかなと心を躍らせていました。


 嗚呼、なんという聖人君子なのだろうか。


 女の子が教室に着く頃、教室の中では決められた席に座りながら前後左右あらゆる方向に向かってあらゆる人がおしゃべりをしていた。


 どこの中学校出身なのかだったり、部活動はどれにするか、などといった他愛もない話をしているのである。女の子もそれに倣い話しかけようとしました。先ほど会ったばかりの綺麗な女の子に。


 彼女のような陽キャにとって躊躇いなどといった言葉は全く意味をなさない文字列へと変貌するのであろう。


「佐藤さんってどこの中学校から来たの?」


 返事はない。失礼な女の子は、話しかけてくれた女の子に対して目に見えない巨大な障壁を作っていた。


 ただし、陽キャである女の子には無意味。


 目に見えないものはないのと同じ、構わず突撃を繰り返そうとしたところで先生が教室へと入りその場は収まった。


 初日の学校が終わり、下校しようと大勢の生徒が一斉に下駄箱へ向かっている時、女の子はその群れに加わり下駄箱に向かっていた。


 靴を取り外に出た女の子はこれから三年間お世話になる校舎を見上げた。


 すると、窓から人が乗り出しているのが見えた。


「あっ」


 その人物は、窓から落ちてその下の校庭へと落ちていった。


 女の子は今起きたことを理解できていないようでただぼーっと見ていたがやがて事の重大さに気づいて落下したと思われる場所にかけて行った。


 その場に着いた時に想像していたような凄惨な現場はなくなぜか失礼な女の子、佐藤エマがその場にいた。エマは、こちらに気づいているようでむすっとした表情で女の子のことを見ていた。


「今の事は、誰にも喋るな」


エマは睨みを効かせながら女の子に対して言った。


女の子は窓から落ちたのがエマだという事とケガ一つ無い事に気づいていた。


「どうして、飛び降りたの?」


エマは目を逸らして


「死にたいから」

とだけ言った。


女の子は頭の中をはてなマークでいっぱいにしながらも言った。


「死にたいの?」


エマは少しだけ首を前に倒した。


「分かった。協力してあげる」


女の子は何を考えているのだろうか。今日、出会ったばかりの人が死にたいから手伝う。一体どういう事なのだろうか。イカれてる。そう言わざるを得ない。


「だから、なんで死にたいのか教えてくれる?」


エマは、何言ってんだこいつという目をしながらも

「教えるわけねーだろ、バーカ」

と、もうそれはうざったらしく言った。


「じゃあ、友達になろうよ」


嗚呼、やはり女の子は聖人なのだ。こんな奴に対しても友達になろうだなんて倫理観ないが優しい子なのだろう。


しかし、エマは何の返事もする事は無く、去ってしまった。

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