前途多軟 I
毎週投稿を心がけていきたい所存であります。
ぜひ【寡黙なVtuberは心手遅れ】、称して『かもてお』を読んでいただけたら幸いです。
では、アディオス。
もし、私が泣けたなら。
私の母は笑って最期を迎えられただろうか。
もし、わたしが笑えていたなら。
わたしの父は心を病み自ら命を投げ捨てることなどしなかったのだろうか。
もし、ワタシに心があるのなら。
ワタシを救ってくれる人がいるのでしょうか。
ワタシはわからない。
命を持つ権利のないワタシには。心を持てない、ワタシには。
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瞼の上にあたる直射日光で、目を覚ます。
いつもよりも早い、7時半。ゲームをするにもワタシのパーティーメンバーはきっとぐっすりのことだろう。
少しいいな、と思うも別にどうでもいい。
あの人たちはいわば在宅警備員。家にいることが仕事なのだ。
きっとリモートワークとかをしているのだろう。
対してワタシは今日も今日とて学生生活。
勉強して、憂鬱な運動をして、気だるい気分になりながら帰宅する。
そんな生活を繰り返す。
「おいネクラ隠キャ」
「……何。また金せびるつもり」
街路樹が佇む道端で囲まれるワタシ。いつも通り。
囲んでくるのはクラスカースト上位に座るクソギャルの黒瀬率いるギャル軍団。
この4人組のせいで1日が憂鬱になると言っても過言ではない。
「ものわかりがいいじゃん。今日は各2万」
「流石にもう無理。生活費とか考えたら来月の最初までせびってこないで」
「お前如きが調子に乗んな!」
ワタシがその場を颯爽と後にしようとすると、気に触れた黒瀬が殴りかかる。
後ろからの不意の一撃についよろけてしまう。
こういう時にチームワークを発揮するのがこの軍団。
各々でポケットやら鞄やらを漁り、即座に財布を見つけ、有り金ほぼ全て奪っていって即座に立ち去る。
「……今日も、断食生活か」
ワタシはとっくの昔に親に愛想を付かれ捨てられた身。仕送りなんてものはなく今までの生活費も、彼女らが攫ったお金も全てワタシの血肉の成れの果て。
通っている高校ではバイトは原則禁止だが、担任を通し校長に直談判した結果。家庭の事情なら仕方ないとのこと。
なんと考えのゆるい高校なのだろうと、その時思った。
ありがたいことに奪われなかったスマホを取り出す。
画面には初期背景とデジタル表示で“7:40”と書かれている。彼女らと戯れたせいで時間を食い過ぎたようだ。
「……サボるか」
担任からは辛ければ1日2日くらいサボってもいい、と承諾をもらっているから気兼ねなくズル休みできる。
ワタシはどうせだし住み込み、もしくは基本的に家で仕事できるバイトとかないかな、と指を回す。
すると、見慣れたものが目に飛び込む。
「V、tuber……か」
数年前から急激に流行り出したDutube上でのジャンルだ。
はちじくじや、strliveなどの大企業の出現によって界隈に火がついたようなものだ。
ワタシも、そんなVtuber好きだったりする。
個人勢の中で一番登録者数の多いVtuberの、白鷺ノア。
基本ほんわかした雰囲気の中ではちじくじやstrliveのカップリングの話の時だけ見せるオタクな一面。
そのギャップで視聴者の心を完全に鷲掴みにする、とにかくすごいVtuberだ。
彼女曰く、収益化が通れば数万とか稼げるようになるのも時間の問題らしい。
機材を買うのにうん十万とか軽々しく通り過ぎるからその元を取るのがまず最初らしいが。
「strliveなら、機材費等全額負担……か」
Vtuber募集の事項を漁りに漁り、ワタシはいつの間にかstrliveに面接申し込みをおくっていた。
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