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「今年も友人の行商の護衛依頼があった。今回も1月半ほど留守にするが、お前らなら大丈夫だよな。何かあればミランか団長を頼ってくれ。
またお土産買ってくるからな。」
「「「はい!」」」
「中隊長、今回はどこに行くんですか?」
「今回はトルーキエ、ビマグーン、ラジリエンの予定だ。」
「ビマグーンか、中隊長はエルフの嫁を連れて帰ってくるかもな。」
「とうとう中隊長も結婚か?」
「エルフ見たいなー」
「森が似合う女か〜」
色々言いたい放題言われているが、私は結婚ができるような人間じゃないんだ・・・。
エルフを連れて帰るという期待には応えられそうにないな。
フロイはタルツに預けた。
「雪深いトルーキエなどに連れていくのは危ないからな。すまないが、フロイを頼んだ。」
「畏まりました。お気をつけて。」
「何かあれば祖父や代官、ミランを頼ってくれ。タルツなら大丈夫だろうが。」
「はい。」
パスタは乾燥しているので持ち運びも軽いし冬の行商にいいとのことで多めに持っていくことにした。
ジムナーシア伯爵にはロゼシードルをお土産に持った。
トルーキエに入り、ジムナーシア伯爵の邸を訪れると、歓迎してくれた。
ロゼシードルも珍しいと喜んでくれた。良かった。
冬なので領地を見て回ることはできなかったが、私の領地を真似て、氾濫することが多い川に堤防を作っているそうだ。
次回はぜひ暖かい季節に訪れたいな。
治安部隊にも挨拶に行った。
久しぶりだし覚えてないかと思ったが、皆私のことを覚えてくれていて、また一緒に飲みに行った。
タルツのことも聞いてみたら、彼らは覚えており、私の領地の治安部隊にいると言ったら驚かれた。
トルーキエでは大きな街はあまり回らず、今回も辺境の小さな村を中心に回っていった。
「ウィル、ここの先のビマグーン共和国という国は、少し注意が必要だ。
国の政府軍と森の守人と呼ばれるエルフ族が長年戦っているから、全く安全とは言えない。
紛争地帯というやつだ。」
「そうなのか。森の守人というのは気になるな。」
隊員たちが噂していたエルフか・・・。
「彼らは森の中で森と共に暮らしている。
耳が尖っていて、端整な顔立ちの者が多いため、外見が少し異なることから迫害されたり、奴隷として攫われたりすることが多いんだ。
彼らは迫害されたり、攫われたりしないよう、独立国家を築きたいと長年戦っている。」
「そうなのか。長年とはどれくらいなんだ?」
「俺も詳しくは知らないが、少なくとも100年は戦っているらしい。」
「そんなにか。で、彼らはなぜ独立できないんだ?」
「森の守人たちを支配下に起きたいと思う政府軍が反対していることや、森の恵みを独り占めされたくないとかそんな理由だろうな。」
「そうなのか。何とも強欲なことだ。」
「それ、ビマグーンに入ったら言ったらダメだからね。他国の者であっても、捕縛される可能性がある。」
「分かった。気をつけよう。」
他国同士で領地を争う戦いは知っていたが、国の中でそのような紛争が起きている場所があるなど、全然知らなかった。
独立するための戦いか。しかも自分たちを守るためだ。
他国民の私が簡単に介入していい問題ではないのは分かるが、何とかしてあげたいという気持ちもある。
しかし、私が介入することでエトワーレに敵意が向いてもいけない。
私がただの一平民であったなら問題にならないことも、侯爵家や騎士団の肩書きがあることで、大きな問題へと発展する可能性がある。
私は無力だな。
「ウィル、この国は宝石と布が有名なんだ。
トルーキエよりは暖かい気候だから、きっと過ごしやすいはずだ。」
「そうか。それは楽しみだな。」
「初めは森の守人の集落で宝石を買おうと思う。
彼らは宝石を採掘して生計を立てているが、農業は苦手なようで、豆や穀物がよく売れる。」
「そうなんだな。」
宝石か。いいものがあれば祖父母のお土産にいいかもしれない。
先日も心配をかけたし、今でも領地経営に協力してくれている。
「ここから先の森は、狭い道が続くから気をつけて。
少しでも道を外れると罠が仕掛けてある地帯もあるからね。」
「分かった。なるほど、ここに来るためにラオは小さい荷車を引いていたのか。」
「まぁね。確かに大きい荷車なら荷物をたくさん乗せられるけど、この道を通るのは厳しいからね。」
「そうだな。」
しばらく森を進んでいくと、索敵に反応があった。
「人がいるな。」
「森の守人かもしれないね。止まろう。」
「あぁ。少し敵対の気配がある。」
「彼らは警戒心が強いからね。」
「行商人のラオです!隣にいるのは護衛のウィル。我ら2人だけだ。」
枝と枝の間を素早く飛び越えて目の前に降り立った人物は、真っ白な肌に尖った耳、端整な顔立ちをしていた。
「やぁ、ラオじゃないか。久しぶりだね。
そっちの男は・・・守人?ではないか。
人間にしてはえらく綺麗な顔だな。それに魔力が多い。」
「久しぶりだな。ニーヤ。
こっちは俺の友人で、今回の行商の護衛をしてくれているウィルだ。」
「初めまして。ウィルです。私の魔力が多いことも分かるんですね。」
フルネームを名乗らなかったのは、貴族であることが知られれば政府との関係が疑われたりする懸念があったからだ。
それに、冒険者カードが身分証になるのだから、ウィルと名乗っても問題ないだろう。
「あぁ、俺はニーヤ。守人はみな魔力が多い。それに長寿だ。色々な人を見ていれば、分かってくるさ。」
「長寿?」
「あぁ、俺はまだ若い方だが156歳だ。」
「そ、そうですか。凄いですね。私はきっとそんなには生きられない。」
「まぁ人間はそうだろうな。」
「ウィルはまだ19だから、守人の中では赤ちゃんみたいなものだね。」
「ラオも似たようなものだろう。」
「集落まで案内しよう。人だけではなかなか辿り着けないからな。」
「あぁ、なるほど。隠密の魔術がそこら中に撒いてあるな。」
「分かるのか?かなりキツくかけてあるはずなんだが。」
「えぇ、でも普通の人には分からないかもしれないですね。」
「そうか。君が政府軍の人間でなくてよかったよ。」
「ウィルの魔術の腕は守人たちにも負けないくらいだからね。数年前のトルーキエの厳冬ではかなり助かったし。」
ニーアがチラリと私を見た。
敵対しないことを示すためにも、索敵は解除しておくか。
きっと彼は魔力の流れに気付いたんだろう。
ラオには結界を張っているし、急に魔獣が襲いかかっても大丈夫だろう。
「君のその目・・・。」
「え?」
「それに、色々並行して魔術を使っているね。本当に人間?」
「両親は人間ですし、人間です。」
まさか人間であることを疑われる日がくるなんて思ってもみなかった。
え?そうだよな?私は人間だよな?
まさか人間でない、なんてことはないよな?
何だか少し不安になってきた・・・。
「で、その目は何を隠してるんだ?」
「隠しているわけではないんですが、目の色を変える魔術を使っています。」
私は目の色を変える魔術を解いてみせた。
「あぁ。なるほど。赤い目か。それで魔力が多いんだな。
分かった。もう紫にしていいぞ。」
「はい。」
「ラオ、面白い人物を連れてきたな。
それにこのタイミング。」
「ん?何のタイミングだ?」
「いや、集落に着いてから話そう。」
「分かった。」
私はラオに目を向けたが、ラオは首を左右に振った。
ラオも知らない何かがあるんだな。
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