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拾われた戦争孤児が魔術師として幸せになるまで  作者: 武天 しあん
変化する日常

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私はモスケルと別れて街長の邸宅へ向かった。


先ぶれを出していないが大丈夫だろうか?私1人だから仕方ないよな。

忙しいようならまた別の機会に挨拶に来るとしよう。



街長の邸宅の門番に名前を告げ、街長が忙しくないようなら挨拶をしたいと伝えると、門番は怪訝な顔をしながら確認しに行ってくれた。


あぁ、そうか。今日は冒険者の格好をしているから怪訝な顔をされたのか。

レーマンまで走って、更に森を歩き回った後だしな。埃っぽかっただろうか?

血などは着いていないと思うが・・・。



しばらくすると玄関のドアが勢いよく開き、体格のいい中年男性が走ってきた。

やけに速いな。身体強化でも使っているんだろうか。



「領主様、どうぞ。」

「あぁ。突然来てすまんな。時間は大丈夫なのか?忙しいならまた改めて来るが。」


「いえいえ、全く問題ありません。領主様より優先することなどありませんから。」

「そんなことはないだろう。」


サロンに案内されると、すぐに紅茶と菓子が届けられた。



「領主様、今日はどのようなご用件で?」

「いや、挨拶がまだだったから、挨拶をしにきただけだ。

改めて、私がフェルゼン侯爵領の領主になったウィルバート・フェルゼンだ。

領主となってから随分時間が経ってしまって申し訳ない。」


「いえ、とんでもございません。私は街長を務めております、ブラッツと申します。

あの、その格好は?」

「あぁ、今日は冒険者の友人と冒険者の活動をしていてな。そのままの格好で来てしまった。」


「そうでしたか。私も実は元冒険者なんですよ。」

「なるほど、それでその鍛え上げられた体格なんだな。」


「まぁ、そうですね。体力だけが取り柄みたいなものですから。」

「健康なことはいいことだ。」




「ところでブラッツ、ここレーマンの街で困っていることなどはないか?」

「特には・・・。先日、冒険者ギルドから、誰も受けられないような難しい依頼がずっと放置されていると相談されたくらいでしょうか。」


「それはどんな依頼なんだ?」

「ブラックサーペントを無傷か傷を限りなく少なく討伐して欲しいという依頼です。まぁ、受ける者はいないでしょう。そのうち依頼主も諦めて取り下げるんじゃないでしょうか。」



「あぁ、その依頼ならさっき私が受けた。」

「え?そうなんですか?」


「あぁ。納品もして依頼は完遂したぞ。」

「領主様ともなるとAランクの冒険者の知り合いも多いんでしょうな。」


「いや、Aランクの知り合いは受けた時はいなかったな。今日友人がAランクに昇格したが。」

「そうですか。ではBランク冒険者を多数集めて討伐されたのですか?」



「いや、ブラックサーペントは私1人で倒した。」

「は?あ、いえ、すみません。」


「友人は別の魔獣を相手していたからな。おかげで私もAランクに上げられてしまった。」

「Aランク・・・そうでしたか・・・。」


「ふふふ、私は弱そうに見えたか?」

「い、いえ、そんなことは・・・。」


「別にいいんだ。私は魔術師だから、戦士のように鍛え上げられた肉体をしているわけではないし、まだ成人してから2年しか経っていないから子供だと思われても仕方ない。」

「決してそんなことは・・・。

あの、お1人でどのように倒したのか伺ってもよろしいですか?

私も冒険者でしたので、あのような依頼をどうやって完遂したのかが気になって・・・。」


「あぁ、いいぞ。

それほど面白いことはないんだが、魔術で作った風の槍で頭を貫いただけだ。

頭を貫いてもしばらくは動いていたな。倒したと思ってもすぐには近づかない方が良さそうだ。」

「そ、そうですか。風の槍で・・・。」




「他には困っていることはないか?些細なことでも何でもいいんだ。」

「はぁ、それでは・・・。格下の冒険者に喧嘩を吹っ掛けるパーティーがいるようで、どうしたものかと・・・。

ギルマスと証拠を掴むために動いているのですが、どうもどこかへ連れ出して喧嘩をしているようで、なかなか捕まえられないんです。」


「そうか。そのようなパーティーは複数いるのか?」

「いえ、今のところ複数いるという話は聞いていません。」


「そうか。では私がお灸を据えておこう。ちょうど私は弱く見えるらしいからな。」

「わざわざ領主様自らが対応することはないかと。お怪我でもされたら・・・。」



「問題ない。私はそうそう怪我などしないしな。その辺の冒険者に遅れをとる気はない。で、どんな人物なんだ?」

「最強戦士という名前のパーティで・・・。3人組の戦士だけのパーティーです。

髪の色が緑、赤、紫でそれぞれ髪の色と同じ革鎧を着ていて派手な3人なので、すぐに分かると思います。

しかし、本当に領主様が対応されるのですか?」


「あぁ。私は騎士団で中隊長をやっているから、血の気の多い者たちの扱いには慣れているんだ。心配ない。」

「そうですか。」



「もう少し着古したローブでも買って羽織れば駆け出しに見えそうだな。よし、中古のローブを買いに行こう。

ブラッツ、平民が通う安い服の店は無いか?」

「ありますが・・・平民の服を着るんですか?」


「あぁ。豪華な服など着ていたら意味ないだろう?平民が着古したようなローブがいいんだ。全身揃えるのは面倒だからな。」

「そ、そうですか・・・。

店ですね、冒険者ギルドから西に200メートルほど進んだところに服屋が数軒ありまして、駆け出しの冒険者をよく見かけます。」


「いい情報をありがとう。助かる。

私はもう出るが、また何か困ったことがあればすぐに言ってくれ。緊急性の高いものは勿論だが、些細なことでもいい。

遠くてなかなか来れなかったが、身体強化を使って走れば、それほど時間をかけず来れることが分かった。」

「まさか、領主様はクンストからレーマンまで走って来られたんですか?」


「あぁ。冒険者の友人と走ってきた。その方が馬車などを使うより速いからな。」

「そ、そうですか・・・」



「ではまた、結果は報告に来よう。忙しいようなら伝言だけ残しておく。」

「分かりました。お気をつけて。」





私は早速、ブラッツに教えてもらった服屋に行き、着古して少し破れた枯葉色のローブを買った。



やはり冒険者ギルドに行くべきか?それともこれを着て街を歩いているだけで絡んで来るんだろうか?

ローブを羽織って歩いていると、武器を眺めているモスケルを見つけた。



「モスケル。」

「おぉ、ウィル、ってなんだその汚いローブは。なぜそんなものを着ているんだ?」



私は街長のブラッツに会った時に聞いた、格下の冒険者に喧嘩を吹っ掛けるパーティーがいることを話し、お灸を据える計画をしていることを伝えた。



「なるほど。それでそのボロボロの汚いローブを着ているのか・・・。」

「あぁ。これなら駆け出しに見えるだろう?」



「あぁ、まぁ・・・。駆け出しというより物乞いの方が近い気もするが・・・」

「この辺りを歩いていればいいのか、冒険者ギルドに行った方がいいのかどっちがいいだろうか?」



「冒険者ギルドに行った方がいいんじゃないか?」

「そうか。じゃあギルドで適当にFかEランクの掲示板の前でも彷徨いてみるよ。」


「1人で行くのか?」

「あぁ。モスケルはどう見てもベテランだからな。モスケルと一緒にいたら絡まれないだろう?」


「そうか。じゃあ知り合いではない風を装ってギルドの酒場でエールでも飲んで待っていよう。」

「あぁそうだな。」



閲覧ありがとうございます。

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