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>>>ウィルを守る会

ダイター、コーエン、団長、王子2人+ミラン



「ミラン、ウィルに会ったんだってな。」

「うん、さっき会ったよ。それが何?」

「俺も会ったけどな。ノックせずにドアを開けたら怒られた。」



「それは団長が悪いと思います。」

「そうだな。団長が悪い。」

「うんうん。」



「ミランさんは、魔術部隊の部隊長なんですよね?そしてウィルさんを戦場に呼び出した人。」

「あ、あぁ、まぁ。それは悪かったよ。もうウィルを戦場に呼びつけたりしないし。」


「で、ウィルの様子はどうだった?」

「どうとは?」



「私たちはウィルが戦場からやつれ果てて戻ってきた時依頼会ってないんだ。」

「前侯爵殿からは、旅から帰って元気になったと聞いていますが、味覚も戻ったとか。

しかし、元気とはどの程度なのか分かりませんね。」


「味覚が戻った?何それ〜?」

「ウィルは、両親を亡くしてからずっと味覚が無かったんだ。肉も食えない。」


「マジか。あぁ、それで戦場でも肉が苦手とか言ってスープとパンだけ食べてたんだね〜。納得。

表情はあったよ。ちょっと微笑んでたし。」


「え?ウィルが微笑んだ?」

「その話、詳しく聞かせてくれ!」



「え?え?何?戦場では強張った表情だったけど、普段は微笑みもするよね?」

「いや、ウィルは普段から表情がほとんどない。無か、凍るような冷たい表情しか見せない。」



「なんかよく分かんないけど、皆を頼ってみようかと思うと言って微笑んでたよ。」

「私もウィルの微笑む姿を見たかった。」

「ダイター、私も同感です。」


「私たちも見たかったな。ウィルさんが微笑む姿。美しいんだろうな。」

「だろうね。」



「ねぇ、団長、ここは何なの?ウィルのファンクラブ?」

「まぁ、そのようなものかもしれないな。」



「じゃあファンクラブの皆さんにウィルの有益な情報を教えてあげよう!」

「何だ?自分だけウィルと話したという自慢か?」

「とりあえず聞かせてもらいましょうか。」



「ウィルの中隊長室には悍ましい絵が飾ってあるが、あれ、森に佇む妖精だって知ってた?

ウィルはあの絵に癒されるらしいよ。なぜならウィルの初恋は妖精だからだって。

しかも、ポケットに入るサイズも持ってるし、最近もう一枚買って邸に飾っているそうだ。

どうだ?」


「妖精?妖精って、あれか。」

「何だ?団長、何か知っているのか?」



「あぁ、あれはいつだったかな、まだたぶんウィルが騎士団に来て間もない頃だと思う。

ウィルが突然本部からいなくなったんだ。でも、日暮れ前には帰ってきた。」

「それで?」


「隊員に赤目だからロルトに拾われたと言われてショックを受けて逃亡したんだが・・・。」

「なんと・・・。」

「子供に酷いこと言うな・・・。」



「まぁそこは、解決しているからいいんだ。

で、ウィルは1人で王都を出て森に行ったらしい。そこで猪に追いかけられている天使だか妖精だかを助けたんだと。

俺も又聞きだから、それだけしか知らん。」


「へぇ〜、で、その妖精が初恋の相手で、その妖精を思い出して絵を買ったんだな。」

「それ、ウィルさんの初恋がまだ続いているってことなんじゃ・・・?」



「団長、それは何年前の話だ?」

「ロルトがいた頃で、ウィルが騎士団に来た頃だから、5-6年前だと思う。」

「ずっとその妖精を想い続けているんだろうか?」



「ウィルの部屋にはマッチョな変なのが飾ってあるでしょ?

マッチョな男が好きなのかって聞いたら、初恋が妖精の女の子だから違うと思うって言ってたんだけど、人間は好きになれないってことかって聞いたら、分からないし自信がなくなってきたって言ってた。

まずくない?」



「ミランさん、ウィルさんにそんな失礼なこと聞いたんですね・・・。」

「ウィルはやはり、子供の頃から過酷な戦場にいて、心を病んでしまったんだな。」

「令嬢たちに嫌な目に遭わされてるしな。」



「ミランさん、戦場というのはそれほどまでに過酷なんですか?」

「まぁ、ウィルは戦争で両親を殺されているしな。さっきまで話していた奴が、次の瞬間には血だらけで亡くなっていることもある。

ギラついた目で殺意を放ってくる奴もいるし、血の匂いや怒号や、大人でも怯む者はいるし、子供が行くような場所ではないな。」


「そうですか・・・。

そんなところにウィルさんは何年もいたんですね。」

「それは表情も無くなるよな。きっと、感情を殺さないと、そこにいることができなかったんだろう。」



「ウィルには幸せになってもらいたい。」

「父上、もうウィルさんを戦争に参加させないでください。」

「もちろんだ。もうウィルを戦争に参加させてはならん。これは王命だ。」


余程のことがない限り発動されないと言われている王命が、たった1人の青年の心を守るために発動された。



「そう言えば、マッチョな置物作ってる人がウィルの領地に引っ越してくるとか言ってた。

しかも工房を建設中だって〜。」

「あ、それは俺も聞いた。」



「団長、いつ聞いたんだ?」

「あー、ウィルの中隊の飲み会に飛び入り参加した時に・・・。」


「抜け駆けだな。」

「ですね。」

「団長ずるい。私たちは会うことも我慢しているというのに。」



「すまん。オークジェネラルのことを聞いておきたくてな。

マッチョ作品の作家は冒険者で、ウィルと一緒にトルーキエでオークの群れを倒したと言っていた。確かBランクだとか、オークナイトを1人で倒せるほどの人物らしい。

ちなみにエトワーレのオークジェネラルは単体だったそうだ。」

「あれを作ったのはそんな強い人だったのか。」

「ウィルさんはトルーキエでオークの群れを討伐したんですね。」



「トルーキエって国外じゃん。そいつは何でウィルの領地に引っ越してくるの?ウィルの追っかけ?」

「ミラン、俺もウィルに同じ質問をした。ウィルは逆だと言っていた。私の方がファンで追っかけですね。とか言ってた。」

「それほどまでにウィルはあの作品が好きなのか・・・。」



「あ、そうだ。ウィルは冒険者ギルドに登録したらしい。で、冒険者としてその作家と共闘する約束をしているとも言っていた。」

「ちょっと待て、ウィルが冒険者登録?どういうことだ?」

「ウィルさんが冒険者・・・。」



「あー、オークというか、魔獣の情報を得るために冒険者登録したらしい。

ただ、そのトルーキエの冒険者ギルドの受付がウィルを馬鹿にしたとかで、倒したオークは素材も情報も冒険者ギルドには渡さなかったそうだが。」

「何?ウィルを馬鹿にした?」

「冒険者ギルドには抗議が必要ですな。」


「あ、いや、もうその受付に制裁は下ってる。解雇されて横領の罪で捕縛されたらしい。」

「その者の処罰の内容によっては、こちらも黙っていないぞ。コーエン、その者がどうなったか調べてくれ。」

「分かりました。」



「あまり騒ぐとウィルが嫌がるぞ。元々ウィルは気にしていなかったらしいしな。」

「ウィルさんは優しい人ですからね。」


「冒険者か〜

しかも冒険者と共闘するとは、ウィルもなかなか面白いことをするね〜。」




「そうだミラン、オークの群れの倒し方がおかしかったんだが、そんなことが可能なのか確認したい。」

「何で?団長はウィルの言葉を信じられないの?」


「いや、そういうわけではないんだが、あまりにも現実離れしているというか・・・。」

「分かった、聞こう。で、どんな倒し方だって言ってたの?」


「群れの内訳は、ジェネラル1体、ナイト2体、ノーマル12体だったそうだ。

ウィルは、ジェネラルがどんな動きをするのか確認をするために、まず邪魔なノーマル12体とナイト1体を風の矢で貫いて倒し、ナイト1体は氷の檻に閉じ込めた。」

「ふんふん、それから?」



「そして、ジェネラルの動きを観察し、観察が終わったら風で喉と心臓を貫いて倒した。

その後は冒険者がナイトと戦って倒したそうだ。」

「うん?それのどこがおかしいのか俺には分からない。別に普通じゃない?」



「いやいやいやいや、オークをそんな簡単に、しかもジェネラルは災害級だぞ?」

「あ、もしかして団長はウィルの攻撃魔術を見たことないとか?

ウィルや俺なら、15体くらいのオークの群れなんて一瞬で終わる。その中にジェネラルがいたとしてもね。

ウィルが本気を出せば、山一つ消すこともできると思う。」



「そ、そうか・・・。俺、団長辞めたくなってきたな。」

「それはダメ。俺は団長なんかやらないし、ウィルもやらないだろう。ウィルは領地のこともやってるしね。

それにしても、動きを観察するために泳がすか。ウィルっていい上司だね。

そういうことだよね?」


「あぁ。そうだな。」



「ミランさん、そういうことって何ですか?」

「ウィルはオークジェネラルなんか一瞬で倒せるんだけど、隊員にオークジェネラルがどんな動きをして、どんな戦い方をするかを教えて対策を取るために、わざわざ泳がせて観察したんだ。」


「そうなんですね。」

「ウィルはそういう奴なんだ。ウィル自身はほとんど戦わない。全部隊員たちに手柄を渡す。しっかりサポートと指導をしながらな。

この前の飲み会でも、皆を魔術も精神力も指揮能力も必ず上に上げると、騎士団1の中隊にすると宣言していたしな。」



「うわ〜、何それ格好良すぎる。しかもウィルは口だけじゃなくてそれを実現しちゃうんでしょ?俺ウィルの隊に入りたい。」

「いや、お前は部隊長だろ。何言ってんだ?」


「俺、部隊長辞めてウィルの隊に入りたい。」

「ダメだ。俺だって団長辞めてウィルの隊に入りたいのを我慢しているんだ。たまに飲み会に参加するだけで我慢してるんだ。」



「やっぱり団長はたまに飲み会に参加してるんだ・・・。」

「居心地がいいんだよな。皆の仲がいいし。ウィルが色んな提案したり、隊員も色んな意見出したり、たまに別の隊の奴が混ざったり、戦士まで混ざってたりな。」



「ずるい。俺は辺境だから参加できないじゃん。」

「私たちも参加できない。」

「私も参加したことないぞ。」



「ダイターが参加したら、皆が緊張して一言も話さなくなるだろうな。」

「それでは意味がない。そうだ、騎士団の制服を着て参加しよう。団長、用意してくれ。」

「その時は私も参加したいです。」


「マジか。」


「俺は?もうさ、俺辺境から撤退する。こっちに住めば、たまには本部に顔出すよ?」

「ミラン、本部に顔出すってそれ、ウィルのところに行くだけだよな?部隊長の仕事もするのか?」



「う、それは・・・。でも、本当に辺境からは撤退を考えている。」


「それはなぜだ?戦争はどうする?研究所は?」



「秋にウィルが1発大型の魔術放ってるし、もう辺境伯の部隊だけでも大丈夫だろう。

というか、そろそろ停戦協定結べば?って、まぁ今回王都に来たのはそれを言いに来たんだけどね。

今ならいけると思うし。暖かくなる前に片付けた方がいいんじゃない?」


「停戦できるなら、その方がいいな。誰も傷つかない方法があるなら、その方がいい。辺境はそれで進めるか。」

「そうですね。」



「それで研究所はどうするんだ?」

「研究所なんだけどね、いや〜うっかりしてたら半壊しちゃってね。

元々何だっけ?薬師の店だっけ?まぁ古くなってたしね。で、これを機に立て直ししてもらおうかと。それも今回王都まで来た理由の一つだね。」



「なぜうっかりしたら半壊するんだ?」

「なんていうか、火力をちょっと間違えちゃったっていうの?」



「まぁ、建物が老朽化していたのは事実だしな。しかし、うっかり半壊するような研究が行われるような施設を王都に作るとなると、広い土地が必要になるし難しいな。」

「王都周辺で良さそうな場所がないか探してみましょうか。」



「俺の研究所はウィルの領地を希望する!それなら本部に縛りつけられることもなさそうだし〜、ウィルの領民になれるし〜

後でウィルに相談してみよ〜っと。」

「なんかミランさんだけずるい。」



「俺はウィルと目の色も同じだしな。ふふん。お揃い。いいだろ〜」

「いつの間にミランはそんなにウィルに傾倒したんだ?」


「善は急げ!ウィルに相談に行ってくる!」

「ちょっと待てミラン、ここにウィルを呼べばいいだろう?」


閲覧ありがとうございます。

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