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拾われた戦争孤児が魔術師として幸せになるまで  作者: 武天 しあん
苦悩と克服

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SS

エイプリルフール特別SS


>>>ウィルの休日


「旦那様、今日のご予定は?」

「あぁ、今日は領地の代官からの報告書を確認して、領民からの意見書も確認して、調査が必要なら手配したり、まぁそんなところかな。」


「旦那様は平日は騎士団のことで忙しくされ、休日も領地のことで忙しくされ、最近はお休みを取られておりません。

たまにはゆっくりお休み下さい。」

「確かに。そうだな。緊急の要件でない限り明日に回して今日は1日休むか。」


「それがよろしいかと。」

「ありがとうセバ。セバもたまにはゆっくり休んでくれよ。」


「ありがとうございます。」


私は報告書をざっと確認すると、緊急で対処しなければならないような要件は無かったので、出掛けることにした。


「フロイ、出掛けるぞ。」

ブルルル

私が出かけると言うと、フロイは嬉しそうに私に頭を擦り付けてきた。


丁寧にブラッシングをしてから、フロイに乗って王都を出る。




さて、どこに行くか。


王都から馬で1時間ほど駆けた森に湖があると聞いたことがある。

今日はそこに行ってみよう。



春の若葉が綺麗だな。


「フロイ、ここから森に入るぞ。西に向かってくれ。」

ブルルル

フロイは森の中を走るのが楽しいようだ。



お?あれか。

森に入ってしばらく駆けると、急に森が開けて湖が現れた。


私はフロイから飛び降りて湖に向かった。

陽の光が湖面に反射して、キラキラと輝いている。



「フロイ、綺麗だな。」

ブルルル



妖精の彼女がいそうな場所だな。

まぁ、再び出会えるわけはないと思っているが、この森のどこかにいるような気がして心が洗われた。


フロイが地面に座ると、私もフロイにもたれて座った。

木々の間から覗く空を眺めて、春の森の香りを胸いっぱい吸い込んだ。


ふぅ


忙しいことを苦痛に思ったことはないが、こんなゆったりと過ごす休日も悪くない。

私は目を閉じた。風が葉を揺らす音、鳥の声、聞こえる音はそれだけで、人がいない世界に迷い込んでしまったようだ。


私はしばらく心地よい音に耳を澄ませていたが、いつの間にか眠ってしまった。





ブルルル

フロイが私の顔に鼻を寄せて話しかけてきたため、私は起きた。


「フロイ、どうした?」

ん?魔獣の気配がするな。

魔獣が近づいたことを私に知らせてくれたのか。フロイは本当に賢いな。


索敵を広げると、もう100メートルも離れていないような近くまで魔獣は来ていた。



「フロイ、結界はかけてあるから、動かずここで大人しく待っていてくれ。私は様子を見に行ってくる。」



そんな気はしていた。ワイルドベアか・・・でかいな。

ワイルドベアは私をターゲットとして定めると、一気に私に向かって駆けてくる。


私はワイルドベアが辿り着く前に風の魔術で細い槍を作り、喉と心臓に向けて一気に放った。


一瞬固まって、ゆっくりと倒れていくワイルドベア。


やはり森の奥までくるとこのような魔獣がいるのだな。

だからあれほど美しい景色の湖なのに人が来ないのかもしれない。



それはいいが、ワイルドベアか・・・

こんなところまで騎士団に回収に来させるのは時間もかかるし仕方がない。担いで帰るか。


血抜きをすると、体長が3メートル近くあるワイルドベアに重力操作をかけ、背負ってみるがどうしても足は地面を引き摺ってしまう。


フロイの元まで行くと、フロイは立ち上がって目を見開いていた。

ふふふ

「大丈夫だ。もう死んでいるから。」


フゥ

フロイはゆっくりと息を吐いた。

魔獣を見てもパニックになったり逃げ出したりしないフロイは偉いな。



しかし、フロイにワイルドベアを乗せるのは可哀想なので、私が引き摺りながら担いで帰ることになった。


重力操作で重さは感じないが、硬い毛がチクチクするし、なんとも言えない獣臭が不快だ。

騎士団に王都の外門まで取りに来てもらおう。

私は伝令魔獣を騎士団宛に飛ばすと、自分に身体強化をかけて、フロイと共に走って王都へ向かった。



「フェルゼン中隊長、お疲れ様です!」

「あぁお疲れ様。来てもらって悪いな。これよろしく。」


私は非番の隊員が持ってきていた荷車にワイルドベアを降ろすと、あとの処理は隊員に任せてフロイと共に邸へ向かった。



「おかえりなさいませ、旦那様。お早いお戻りで。」

「あぁ、魔獣が出たから仕方なくな。」


午後からは庭師が綺麗に整えてくれている庭でも眺めてのんびりしよう。


こうしてウィルの休日は過ぎていった。







後日、馬と熊が街道を走っているのを見たという話が市民の間で広がり、団長に呼び出されることになる。



いつも見てくださってありがとうございます。

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