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私は索敵を広げていく。
オークの群れは、昨日の位置から移動はしていないようだ。
数も、増減はなくそのままだった。
「位置は右斜め2時の方向1.5キロ、オークの数は15、うち3体は他より大きいから、上位種かもしれない。」
「上位種・・・。」
「モスケルが上位種のどちらか倒すか?ノーマルのオークじゃ物足りないだろ。」
「物足りなくはないが、ジェネラルやキングが出たら俺には無理だぞ。ハイオークかナイトなら、少し戦ってみたい。」
「分かった。じゃあちょっと見に行こう。」
「おう。」
臭いや気配で察知されないために、私は2人分の結界を張って進んだ。
見た目でも分からないよう認識阻害付きだ。
「そんなに近づいて大丈夫か?」
「あぁ、私とモスケルに認識阻害と結界をかけているから、かなり近づいても大丈夫だと思う。」
「そんなこともできるのか・・・。」
「見えたぞ。手前はノーマルばかりだな。
モスケルは上位種に詳しいのか?何がいるか分かるか?」
「ナイトが2体と、ジェネラルがいる・・・。」
「そうか!ジェネラル!それは私が相手してもいいか?」
「あぁ、もちろんいいが、大丈夫か?それに、ナイトが2体いるぞ。」
「昨日言っていたジェネラルは、サクッと倒してしまったから、動きを見れなかったんだ。
後でラオに、小隊が3つ出ていくレベルだと聞いて、もう一度遭いたいと思っていたんだ。」
「そうか。ジェネラルに遭えて良かったな?」
「あぁ。良かった。」
「オークジェネラルを前にして、なんつー輝くような笑みを浮かべるんだ・・・。」
良かった。
ジェネラルにはなかなか遭えないと聞いてから、さっさと倒してしまったことを後悔していた私は、再びジェネラルには遭えたことを喜んだ。
「じゃあ、とりあえず邪魔なノーマルを全て倒して、ナイトも1体やったら、もう1体のナイトはモスケルの方に向けるぞ。
ジェネラルは私が相手するから安心しろ。」
「あ、あぁ・・・。
ウィルはジェネラル相手でも本当に大丈夫なんだよな?
難しいなら街に戻って援軍を呼ぶぞ。冒険者が嫌なら領地の治安部隊でもいいし。」
「大丈夫だと思うけど、倒せなさそうなら氷で閉じ込めて援軍呼ぶか。
ちなみにナイトはどれくらいの強さなんだ?」
「そうか。なんか余裕みたいだから、要らぬ心配だったか?
ナイトはAランク冒険者か、Bランクパーティーならいけると思う。
騎士団なら、分隊?1つ、5−6人いればいけるんじゃないか?」
「そうか。じゃあジェネラルを相手しながらモスケルとナイトとの戦いもちょっと見せてもらうよ。
モスケルは冒険者ランクはAなのか?」
「いや、俺はBランクだ。
だから、ウィルの支援が無ければナイトの相手は厳しい。」
「そうか。まぁ頑張れ。私が死なさないから安心して戦えばいい。」
「あぁ、分かっ、た。」
「ん?モスケル、息をしっかりしろ。」
「あ、あぁ、オークジェネラルがいるかと思ったら、緊張してな。」
モスケルの顔色が悪い。それに動揺がひどい。すぐに息をするのを忘れるし、指先が小刻みに震えている。
これは良くないな。
「モスケルのナイトは氷の檻に閉じ込めて取っておくから、先に私がノーマルとジェネラルとナイト1体を倒そう。
ジェネラルがいると気が散ってしまうだろう?
その間モスケルはちょっと休憩していればいい。」
「俺は・・・。」
「気にするな。人の戦いを見たり魔獣の動きを観察するのも成長に繋がるからな。」
私は氷の柱で1体のナイトの周りを囲んだ。これはモスケル用だ。
そして、風の矢を13本出すと、ノーマルのオークとナイト1体の喉元を一気に貫いた。
動揺して騒ぎ出すよりも前に全て終わってしまった。
流動で死んだオークの血抜きを一気にして、血を燃やすと、一呼吸遅れて異変に気付いたジェネラルが怒り出した。
ブヒブヒと騒いで、氷の檻の中のナイトに指示を出すが、ナイトは出られない。
ブオモォー!!!
ジェネラルが吠えると、モスケルが青い顔のまま一歩後退した。
「モスケル、大丈夫か?モスケルの結界は張ったままにするから、あまり動くなよ。」
「あ、あぁ。」
「じゃあ私は結界を解いてジェネラルの相手をしてくるよ。」
「あぁ。だ、大丈夫だよな?」
「大丈夫だ。モスケルには奴を近付けないから安心しろ。」
「わ、分かった。」
私は結界を解いてジェネラルの前に姿を晒した。
ブオモォー!!
うん、何だか怒っているな。
まぁ当たり前か。自分の群れのほとんどをやられたんだからな。
さて、どんな技を使ってくるのか見せてもらおうか。
私はさらに挑発するように、ウォーターボールをオークジェネラルの顔面に当てて割った。
ブオモォー!!!
怒ったオークジェネラルは、私に向かって突進して来た。
スピードは、それほどではないな。
レッドボアの全力の突っ込みと同じくらいか。
拳を私に向かって突き出した。
まさかの素手か。
格闘系の技を持っているのかもしれないな。
パンチや蹴りは、当たれば重そうだし、風切音を乗せて繰り出されるということは、かなりのスピードだろう。
私はジェネラルが繰り出すパンチや蹴りをヒラヒラと交わしながら観察した。
この空気を切り裂くようなパンチは、拳に強化でもかけているのか?
それは珍しいな。魔獣が意識して使っているかは分からないけれど、魔術を使うとは。
他にも使うんだろうか?
他にも使うなら、ぜひ見てみたいものだ。
私はオークジェネラルから距離を取った。
拳や蹴りが届かないとなると、魔術を使ってくるのではないかと期待を込めて。
お、魔力を練り上げているな。
やはりジェネラルは魔術を使うのか。
何を使うか楽しみだ。
しかし、魔力操作が苦手なのか、えらく時間がかかっている。
それでは、魔術が放たれるまでの間は攻撃され放題ではないか。
先の尖った石というか岩?を複数出している。
ロックバレットか?
魔獣のくせに上手いものだ。
30個ほど岩を出すと、一斉に私に向かって放った。
精度は、まあまあだな。
数とスピードは思った以上に良かった。
確かにこれは小隊が何組か必要になるかもな。
ロックバレットを30も出せるのは、私の隊にも私を除くと1人しかいない。
照準を合わせるのが苦手なのか、着地点はあまり細かく計算できないらしい。
しかし、数があるから、大した問題ではないのかもしれない。
発動までに時間はかかるが、その時間稼ぎをするためのナイトたちだったんだろう。
ジェネラルというだけのことはある。
今も何かナイトに向かって指示を出しているし。
ナイトは私が作った氷の檻から出られないから意味がないが、それでも他の魔獣を指揮するのは面白いと思った。
オークジェネラルが、恐れられるのは、個体が強いからではなく、周りを従えているからかもしれない。
確かに歩兵としてノーマルが襲いかかり、ナイトが剣を持って駆け回り、その間にジェネラルが魔術を放てば、小隊1つでは厳しいだろう。
ナイトがどれほど強いのか分からないが、群れに連携されたらなかなか倒すのに手こずりそうだと思った。
なるほど。面白いな。
当たらないことに腹を立てたジェネラルは、その後も魔術を何度か撃ったり、距離を詰めて殴りかかってきたりしたが、それ以降は特に他に珍しいと思える動きは無かった。
うーん。出し尽くしたのか。もうだいたい知ることができたからサクッと倒して終わろう。
モスケルの精神状態も気になるし。
私は先日と同じように風の魔術で細めの槍を出し、ジェネラルの喉と心臓に放った。
ブオ・・・
驚いた表情のまま、オークジェネラルは動きを止めた。
血抜きだけしておこう。
流動を使って血を出すと、さっさと燃やしてモスケルの元へ歩いて行った。
私のことを唖然と見つめるモスケルがおかしくて、思わず笑いが漏れる。
ふははは。
「モスケル、どうした?」
「あ、いや、本当に倒しちまった。しかも、ウィルは無傷だし、倒す瞬間は瞬きしたら見逃すほど一瞬だった。
本当に、ウィルは凄いんだな。これは、国の重役達が目をかけるわけだ。」
「いや、国の重役たちは、私の父と仲が良かったらしい。だから私にもよくしてくれるんだ。」
「それだけじゃ、ないと思う・・・。」
「ん?何か言ったか?」
「いや、何でもない。」
「そうか。それでモスケル、ナイトとは戦えそうか?」
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分隊:5-7名
小隊:25-30名(分隊×5)




