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拾われた戦争孤児が魔術師として幸せになるまで  作者: 武天 しあん
苦悩と克服

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>>>トルーキエ王国ハーブル ハンカチの街




「あの丘まで行けば、ハーブルの街が見えるはずだよ。」

「楽しみだな。」



「ハーブルの街はハンカチも有名になってきたけど、石鹸も有名なんだ。」

「そうなのか。良いものがあれば買って帰りたいな。」


「意外にもウィルは石鹸に興味があるのか?」

「いや、隊員の間で香り付きの石鹸が流行っていたから、お土産に買って行ったら喜ぶかと思って。」



「部下のためか〜

なんともウィルらしいな。」

「私だけ長期休んでいるしな。快く送り出してくれた皆にお土産を買って帰りたい。」



「ウィルの中隊って何人部下がいるんだ?」

「ん〜今は小隊5つ分だから130人くらいかな。」


「そんな数を買えば荷物が凄いことになるぞ?」

「寮の風呂に置くから、そんなに数は要らないと思う。」


「そうか。お、見えてきたぞ。」

「結構大きな街なんだな。」



「石鹸と最近流行り始めたハンカチで、工場も増えて雇用も増えたから、人が集まってきているんだ。」

「そうなのか。産業が栄えると人が増えて街が大きくなるということもあるんだな。」


「そうだね。逆に農作物で生計を立てているような街や村だと、不作が続くと人が村から出稼ぎなどで出て行ったりして、縮小してしまうこともある。」

「そんなことが・・・。」


「その地域でしか作っていない野菜や果物なんかもあるから、できるだけ支援して、衰退してしまわないようにしたいが、俺個人や商会程度では支援もしれてるからな。

できれば領主や国が補助をして欲しいものだ。」


「なるほど。確かに不作となれば収入が無くなるのだから、外に出て稼ぐしかないよな。そうならないための補助や支援か。それは必要なことだな。」




私はまだまだ世間知らずなんだな。


フェルゼン領にも農作物で生計を立てている村はいくつかあったはずだ。

その現状を全然知らないし、確かに天候などは村の人がどんなに頑張ってもどうにかできる問題ではない。

これは帰ったら調べてみて、必要に応じて対処する必要があるな。



「ウィル、黙り込んでどうした?」

「あぁ、すまん。私の領地にも農作物で生計を立てている村がいくつかあったのを思い出してな。

祖父が置いた代官にほとんど任せてしまって私は全然現状を知らないのは問題だと思ったんだ。

だから帰ったら調べて、必要に応じて対処しようと考えていたところだ。」


「そうか。ウィルは中隊長だけでなく、忘れそうになるが侯爵家当主で領主でもあるんだよな。」

「あぁ。一応な。

ところでラオ、支援というのはどのようなことをしているんだ?」


「通常より高い値段で仕入れたり、各地で宣伝したり、出資して、その見返りに優先的に商品を卸してもらったりだな。商人にできることなどそれくらいしかない。」

「それでもかなり助かるんじゃないか?」


「そうならいいんだけどね。」

「そうか、出資という方法もあるのか。色々勉強になる。ラオ、ありがとう。」


「いや、それくらいどうってことない。ウィルの役に立てたなら良かったよ。」

「今回の旅は本当に色々と勉強になることばかりだ。ラオには感謝しかないよ。」


「なんかそんな風に感謝されると照れるな。

でも俺も、ウィルには感謝しかない。重力操作も、オークも、結界も、感謝しかない。」

「そ、そうか。そう感謝されると確かに照れるな。」


「ま、とにかくハーブルに入ろう。」

「そうだな。」





「このハンカチは、黒だけではなかったんだな。」

「初めは黒だけだったんだけど、染色職人を呼んできて色んな色を作り始めたようだね。」


「なるほど。騎士団で使うならやはり黒だな。しかし家の中で風呂や洗面に使うなら、違う色でもいいな。」

「そうだね。気に入った色があれば、ヘンドラー商会に発注してくれれば親父が用意すると思うよ。」


「それは便利だな。大きなサイズのものを邸で風呂用に買おうかと思っていたんだ。」

「それなら荷物になるし王都で親父に発注したらいい。」


「そうするよ。色だけ見ておこうかな。」

「そうだね。俺は色見本をもらってくるよ。」



ハンカチの工場なども少し見学させてもらってから、石鹸の店に向かった。




「あら〜綺麗なお兄さん、お好みの香りは見つかったかしら〜?

私が見立ててあげましょうか〜?」

「店長、それは私のツレだからちょっかいかけないでくれよ。」


「あら〜ラオじゃない。

こんな美少年どこでひっかけてきたのよ?羨ましいわね。」

「ウィルは俺の友人で、今回の冬の行商の護衛をしてくれているんだ。」


豪快な縦巻きロールの髪に濃い化粧で露出の多い派手な服装だが、真っ赤な口紅の上には立派な髭が生えていて、初めて見るビジュアルに私は唖然としてしまった。


「やだ〜固まっちゃって可愛い〜

オネエを見るのは初めてかしら?私が色々教えてあげようかしら〜?」

「ウィルに余計なことを吹き込まないでくれよ?」


「あ、えっと・・・。

香りのいい石鹸を探していて、若い男性に合うのはどちらでしょう?」

「うーん、そうね、ミントやレモンは若い男の子に人気よ。リラックスを求めるならラベンダーやバレリアンもいいわね。」


「ありがとうございます。」

「女の子へは買わないのかしら?」


「そうか。邸のメイドのお土産にしようかな。壮年から中年辺りの女性にはどんな香りがいいでしょうか?」

「あら、年上が好みなのかしら?

美容のために蜂蜜が入ったものや、香りならホワイトローズかリリーもいいかしら。」


「女性の友人はいませんので・・・。女性といえば私の邸のメイドくらいしか。」

「あらあらあら、若いうちは恋をたくさんするものよ〜」


「ウィルはモテすぎて女性不信なんだ。その辺で勘弁してやってくれ。」

「そうなの。美しく生まれるのも大変なのね。」

「いや、まぁ・・・。」


結局、何を選んでいいか分からずに、勧められたものを数個ずつ買った。



「気に入ったものがあれば俺か商会に言えば取り寄せもできるからね。」

「そうか。便利なものだな。」


「取り寄せなんてダメよ〜

直接来てくれないと。私だって美少年を見て目の保養をしたいのよ。」

「そ、そうですか・・・。」


物凄い距離を詰められて、ど迫力の顔面でジッと見つめられると、とても居心地が悪くて、一歩後退ってしまった。



「ウィルを困らせるならもう帰るぞ。」

「もう。ラオは冷たいわねぇ。いいじゃない。眺めるくらい。」


「どっちにしてももう帰る時間だな。さぁウィルもう行こう。」

「あ、あぁ。店長、お世話になりました。」


店長へ軽く頭を下げて、私たちは店を出た。



「色々思うところはあるだろうけど、お土産が買えて良かったな。」

「まぁ。そうだな。」


その後も旅は順調で、大きな街で乾物や豆を仕入れて、辺境の小さな村を回る日々を過ごした。



閲覧ありがとうございます。

今回の話はちょっとダラダラしていました。

明日からまたストーリーが変化していきます。お楽しみに。

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