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拾われた戦争孤児が魔術師として幸せになるまで  作者: 武天 しあん
そして・・・

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「ウィル様、いけません。私のために早く帰ってきてくれることは嬉しいのですが、皆さんとのお付き合いを蔑ろにしてはいけません。」

「・・・分かった。」


朝は朝練が終わって邸に戻り、リーゼと朝食をとってから出勤している。

夕方も、定時できっちり仕事を切り上げて、さっと帰るという生活をしていたら、リーゼに注意されてしまった・・・。


私はもっと一緒にいたいのにな。



「じゃあ、明日は中隊の飲み会に参加するから遅くなる。

週末は友人と会うがリーゼも一緒に行ってくれるか?」

「はい。分かりました。」


「緊張しなくていい。畏まる必要もないからね。そうだ、彼らの婚約者も呼んでもらおうか。それならリーゼも男ばかりより安心だろう?」

「はい。」




>>>仲良し3人組+婚約者


「ウィルーおめでとう。」

「ラオ、ありがとう。」


「ウィル、おめでとう。良かったな。」

「あぁ、ありがとうヴィント。」


「こちらは私の婚約者になったリーゼだ。」

「リーゼです。よろしくお願いします。」


「こちらは私の婚約者というか、腐れ縁の幼馴染、マリーだ。」

「マリーでございます。」


「こっちはもうすぐ俺の嫁になるリナだ。」

「リナです。よろしくお願いします。」


少し緊張した様子のリーゼが可愛い。

そうか。リーゼも同年代と知り合う機会が無かったのかもしれない。彼女たちと仲良くなれるといいな。


女性たちはそんな心配などどこ吹く風というように、すぐに打ち解けたようだ。




「ウィル、嬉しそうだな。」

「あぁ。リーゼが楽しそうだからな。」

「本当に良かったな。一時はどうなることかと思っていたが・・・。」


「あぁ、2人には心配をかけたな。」

「で、リーゼさんが探していた相手はウィルだったんだろ?」


「あぁ、まぁ・・・。」

「だろうね。俺たちは初めからそうだと思ってた。」

「そうだね。」


「そうだったのか・・・家の者にもそう言われたよ。私だけが1人で空回りしていたのか。恥ずかしい・・・。」

「ウィルはいつも完璧なのに、リーゼさんのことになると急にポンコツ感が出るからな。」

「だな。」


「・・・私はそんなに酷いか?

いや、少し自覚はある。何度も逃げたからな・・・。」

「何度も?あの後も逃げたのか?」



「あぁ、リーゼに邸を出ていくと言われるのが怖くて、リーゼに会わないようにみんなが寝静まってから帰宅して、誰も起きていない早朝に家を出るという生活をしていた。」


「「・・・。」」



「まぁおかげで隊員と朝練をしていい成果が出たり、新たな試みもできた。」

「そ、そうか。なんか、良かったというか何というか・・・。」

「そんな状態でどうやって婚約まで漕ぎ着けたんだ?」


「私が逃げ続けていたら、リーゼが痺れを切らして騎士団本部に来た。」

「リーゼさんはなかなか勇気があるね。」

「凄いな。」



「とうとう終わるのかと思って、最後にリーゼに想いを伝えて邸にずっといてほしいと言ったら、リーゼが私のことを好きだと言ってくれて、探していた相手は私だと。

少し前に魔力操作が乱れて赤目に戻ることがあったから、リーゼはそれで気付いたようだ。」

「分かってはいたけど、相思相愛だったんだな。」



「そこで結婚しようと言ったら、了承してくれて。

婚約ならすぐにできるから、リーゼを抱えて陛下の執務室まで走って行って婚約の承認をしてもらった。」

「・・・展開早くない?貴族ってそんな感じなの?」

「いや、貴族はもっと家同士の色々があるから時間がかかるはずだ。」


「何かおかしかっただろうか?」

「うん。でもまぁ、ウィルだからな。いいんじゃない?幸せそうだし。」

「そうだね。」


「あぁ、幸せだ。年明けにはティーダにも一緒に行く予定だ。」

「そうか。それは良かったな。」




「しかしウィルが婚約したとなると、ウィルを狙っていた令嬢たちがどうなるかだな。いつ発表するんだ?」

「発表?した方がいいのか?」


「いや、しなければならないわけではないが、侯爵家当主だし、ウィルだからな。した方がいいんじゃないか?」

「怖いねー」

「怖い?」


「確か今年の夏の建国記念の夜会でもリーゼさんを伴っていたな。しかもリーゼさんとだけダンスを踊ってすぐに帰った。

もう既によからぬことを計画している者がいるかもしれない。」

「なんだと?まさかリーゼに危害を?」


「そうならないことを祈るが、やる奴はやるだろう。陰口やぶつかるとか、飲み物をかけるくらいの嫌がらせ程度ならまだマシだが、中には顔に傷でも付けばウィルの隣に立てなくなると思うような過激な考えを持つ者がいる可能性もある。」

「俺、貴族じゃなくて良かった。怖すぎる。」


「それは、私が婚約を発表すればなくなるのか?」

「いや、多少は収まるだろうが、婚約者の座を奪い取ろうとする者や、第二婦人や妾を狙う奴もいるだろう。

リーゼさんだけじゃなくウィルも気を付けろよ。」


「そうか・・・。新年の夜会で発表しよう。リーゼは何があっても私が守る。

しっかり結界も張るし、嫌な思いをしないよう私が守ってみせる。」

「相変わらずウィルは格好いいな。」

「そうだね。」



「リーゼの存在は私が生きる理由だ。守るのは当然だろう。」


「なんなのそれ、そんな格好いいセリフどこで仕入れてくるの?」

「ラオ、ウィルはあれを素で言っている。ウィルだからな。」


「恋愛くらいでは勝ちたかったなー」

「諦めろ。私たちにウィルに勝てることなど何も無い。」

「いや、そんなことはないだろう。私なんかまだまだ未熟だしな。」


「ずるいなーウィルは。そんな真っ直ぐで。」

「そうだね。」


「でもウィルには幸せになってもらいたいしな。」

「あぁ。」



閲覧ありがとうございます。

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