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コンコン
「医者が面会を求めています。」
「入ってくれ。」
「失礼します。」
「ウィルの容態はどうなんだ?」
「多少内臓にダメージがありますが、命に別状はありません。
しかし、目を覚まさない原因は特定できていません。」
「そうか・・・。」
「命に別状がないのであれば、とりあえずは良かったのでは?」
「そうだな。」
「何か、精神的に強い衝撃を受けて、自分を守るために眠りに就いた可能性が1番有力ですが、何か魔術をかけられているような感じもあるので、呪いや闇魔術の可能性もあります。」
「なんと・・・。」
「ウィルが弾けない魔術なんてあるのか?」
「んー確かに俺も魔力は感じた。目の色を変える魔術を寝てても使い続けてるのかと思ってたけど、目が覚めない原因だとすると、ちょっと俺も調べてみたい。」
「いいだろう。魔術に関してはミランの方が専門だからな。医者と共に向かってくれ。」
「私もウィルに付いていてやりたい。」
ミランと前侯爵は医者とともに部屋を後にした。
「団長、中隊はウィルが不在でも大丈夫なのか?」
「あぁ、ウィルがきっちり部下を育てているから問題ないだろう。補佐のイースも優秀だしな。
もうすぐ春だが、何年か前にウィルの隊が過去の報告書から傾向の統計を出してくれたのが役に立っているし、緊急事態が起きてもミランを引っ張り出せばいいからな。
ウィルが関係を色々築いてくれたから、魔獣討伐なら冒険者ギルドを頼ることもできる。」
「そうか。それならいいんだ。
もし、魔術や呪いをかけられたとなると、一体どこでかけられたんだ?」
「テフ、ティーダでは何も無かったんだな?」
「はい。宿にいる時以外は俺が一緒にいたが、魔術をかけられたりする感じは無かった。
ずっと側にいたのはフロイだから、もしフロイと話せる人がいれば何かわかるかもしれないが・・・。」
「それは難しいな・・・。
ティーダに来る前はどこにいたか分かるか?」
「ティーダに来る2日前にレーマンで魔獣を討伐したことは聞いているが、ティーダに来る前日はどこにいたか聞いていない、です。」
「そうか。」
「そう言えば、今思い出したんですが、旅の途中で仕事が増えたと言っていました。詳しくは聞いていませんが。」
「やはりティーダに行く前に誰かと接触しているな。調べてみよう。」
「テフ、ありがとう。色々参考になった。」
「いえ、国王陛下に感謝されるなど畏れ多いことです。」
「そんなことは気にしなくていい。ミランが馬を引き取りに行くと言っていたから、ゼーグラース領まで一緒に乗せてもらうといい。」
「いえ、俺は冒険者ですし、せっかく王都まで来たので、さらに足を延ばしてレーマンに行こうと思っています。
ウィルに、あ、侯爵様に、レーマンで修行するといいと教えてもらったので・・・。」
「いい、いい。ウィルが許可しているならウィルのことはウィルと呼んでいい。ここは公式な場ではないから言葉は気にするな。
ウィルが起きたら冒険者ギルドを通して連絡しよう。気になるだろう?」
「ありがとうございます。」
そしてテフは王城を後にした。
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