137
今日は2話更新します。
>>>国の重鎮と冒険者
コンコン
「ミランです。冒険者のテフも一緒です。」
「入れ。」
「ウィルを連れてよく戻ってくれた。座ってくれ。
テフと言ったか、よく来てくれた。遠くまで呼び出してすまなかったな。」
「いえ。」
「テフ、あの人が陛下で隣が宰相、あれが団長で、あの人がウィルのおじいちゃん。」
「あ、あぁ。はい。」
「で、こちらはテフ。あれ?テフってあだ名だったよね?名前なんだっけ?」
「ティフロート、です。」
「ティフロート、テフでいいか。別に取って食おうというわけじゃない。言葉遣いも気にしなくていい。少し話を聞きたいだけだ。」
「はい。」
「ウィルは今、医者が診ているから、容態はその報告を待とう。」
「そうですね。」
「テフはオークの群を見つけてウィルをティーダに呼んだのか?」
「あーそれ、俺もそう思って聞いてみたんだけど違ったみたい。」
「ミラン、どういうことだ?」
「妖精ちゃん、他に好きな人がいるんだって。」
「はぁ?」
「それに気づいたウィルは、ショックで仕事が手に付かなくなって、逃げたらしい。」
「なんと・・・。」
「聞く限り、最初は領地のレーマンに行ってサイクロプスとワイバーンを狩って、その後どこかに寄ったかは分からないけど、ティーダに行った。目的は分からない。そこで初めてテフと会ったって。
ブラックサーモンとクラーケンを倒して海の上を歩いたらしいよ。
俺はそこまでしか聞いてない。」
「海の上を歩いた?色々ツッコミどころはあるが、それはひとまずおいておこう。
それでオークはいつ出てくる?」
「ブラックサーモンとクラーケンを倒した後、です。酒場で飲んでいて共闘を持ちかけたら、索敵で探ってくれて、オークの群がいると教えてくれた。」
「なるほどね。」
「領都まで援軍を呼んでいる余裕はないと思って、侯爵様と冒険者30人くらいで翌朝、討伐に向かいました。」
「それで?」
「侯爵様は全員に結界をかけて、お一人で群れと対峙して、泳がせて観察したいと。」
「ウィルらしいね。」
「向かう途中も、泳がせて観察している時も、何度か吐いていて、体調が悪そうでした。」
「そうか。」
「そして、ジェネラルを倒すと、オークを氷の檻で囲って、俺ら冒険者に順番に戦わせてくれました。」
「ウィルらしいな。」
「その間、フロイを呼び寄せて、座らせたフロイにもたれていたので、かなり体調が悪かったのかと・・・。」
「そうか。」
「それで、街に戻って、オークの群を倒してきたので街全体が宴会になって、ウォッカをジョッキで頼んでいたので、大丈夫なのかと聞いたら、オークを倒し終わる頃にはマシになっていたから大丈夫だと。
ジョッキを半分ほど空けたところで急に倒れて、医者の家に運びました。」
「なるほど。」
「目が覚めるまで様子を見ようと思っていたんですが、初日に騎士団の中隊長で、週明けには仕事に戻らないといけないと言っていたのを思い出して。連絡だけでもと思ったんです。
しかし、俺らはウィルという名前しか知らなかったから、中隊長であれば貴族かもしれないし冒険者の名前はあだ名かもしれないと思って、荷物を確認して・・・。
騎士団の身分証を見つけたんです。」
「それでフェルゼンと書いてあったから兄貴に相談に行ったのか。」
「はい。」
「それ以外に何か気づいたことはあるか?」
「いえ、ただ・・・酒を飲む量がおかしかったです。」
「というと?」
「ウォッカをジョッキで頼んでいましたし、宿の部屋には酒樽がありました。
それと、潰れるまで飲まないと眠れないと言って、本当に潰れるまで飲んでいたのが気になりました。」
「また味覚を失ったのでは?」
「味覚を??」
「あぁ、ウィルは子供の頃から辛い境遇に置かれて、成人する頃まで味覚を失っていたんだ。」
「そうですか・・・。
酒場ではブラックサーモンやクラーケンを食べて美味しいと言っていたので、大丈夫だと思います。」
「そうか。それは良かった。
魚介を食べていたんだな?」
「はい。エビや貝も食べていました。」
「そうか。それは良かった。」
「あーいいな〜
俺もせっかく兄貴のところまで行ったんだから魚介食べたかった。
そうだ。馬を取りに行かなきゃいけないから、その時に食べよ〜っと。」
「ミラン、お前は呑気なものだな。」
「だって俺にはこれ以上どうしようもないし。焦ったところで何が変わるわけでもないじゃん。」
「まあそうだが。」
「そうだ。ウィルの馬、あの子ウィルの近くに置いてあげて。かなりウィルのこと心配してたし。
そのままにしておくと何するか分からない。」
「何するか分からないというのは何だ?」
「あの馬、ウィルと意思疎通できるのは知ってるよね?」
「あぁ。何となく言いたいことが分かるとか。」
「いや、たぶんウィルとなら本当に会話ができると思う。あの馬は特殊個体だ。」
「え?そうなのか?」
今まで黙って話を聞いていた前侯爵が驚きの声を上げた。
「前侯爵殿、知らなかったのですか?」
「知らなかった。少し高かったが、ウィルのために綺麗で賢そうな馬を与えようと思って買ったんだ。」
「特殊個体ということは分かった。会話ができるんだろ?」
「それだけじゃない。あの馬は魔術を使う。」
「なっ、そんなことがあるのか?」
「俺たちが確認しただけでも、身体強化を使えることが分かっている。
考えてもみてよ。いくら俺の馬車でも、こんなに早くゼーグラースの領都から帰って来れない。」
「確かに、やけに早いとは思ったんだ。」
「行きは普通の馬2頭で丸2日かかった。馬に回復を何回もかけて煌々とライトを照らして夜通し走ってだよ?
それがウィルの馬は、昨日、日が傾き始めてから領都を出て夜明け前には着いた。ライトも要らなかった。」
「そんなに早く走れるのか・・・。」
「もしかしたら、他にも魔術を使うかもしれない。だから、ウィルから長いこと離しておくのは勧めない。」
「そうか。じゃあウィルが運ばれた部屋の外にウィルが見えるように繋いでおくか。」
「それがいいと思う。まぁ、あの馬は人の言葉を理解しているようだから、説得できるなら説得してもいいけどね〜
ウィル以外が説得できるかは分かんないけど。」
ヒィーン!<ウィルー>
「ほら、なんか魔力纏わせた声で鳴いてるし。」
「そうなのか?」
「そうだよ。感情を乗せてるのかな?
魔力を纏わせなきゃここまで聞こえないでしょ?
この前陛下が便利だけど簡単にはできないとか言ってたけど、ウィルの馬にはできるみたい。馬に負けたね〜」
「・・・そんなことはいいんだ。
コーエン、手配を。身体強化を使えるなら、厩舎を壊してウィルの元に行くかもしれない。怪我をしたら大変だ。」
「分かりました。」
閲覧ありがとうございます。




