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>>>ミランクッキング
「フロイ、今日は近くの街まで行って泊まるよ〜」
ブルルル<このまま王都まで行ける。泊まらない。>
「嫌みたい。首振ってるし。スピードも上がった。このまま走りたいのかな?」
「そうかもな。」
「フロイの好きにさせるか〜
でも一旦休憩はしたいな。お腹空いたし〜
テフもお腹空いたでしょ?フロイ、一旦休憩しよう。」
「あぁ、そうだな。けど、何も持ってきていないぞ?」
「大丈夫。パスタならあるし、肉ならちょっと行って狩ってくるし。」
「そうか。」
そう言うと、ミランは風のように消えた。
「なっ、騎士団の魔術師ってのは凄いんだな・・・。」
テフの感心した声は、日の暮れた夜の森に消えていった。
間も無くミランはホーンラビットを手に帰ってきた。
「俺、これ捌けないから捌いて〜」
「分かった。」
「パスタ作ってよ。」
「俺はパスタっていうのを知らないから作れない。」
「えー
どうしよう。俺も作れない。なんか茹でてた気がする。あ、鍋が無い。」
「鍋が無ければ茹でるのは無理だな。」
「うーん、そうだ!熱湯のウォーターボールの中にパスタ放り込めばいけるんじゃない?」
「熱湯のウォーターボール?そんなことできるのか?」
「分かんないけどたぶんできる。俺がウォーターボール出すから、その中に黄色い棒みたいなやつ入れてみて。」
「分かった。この棒みたいなやつ食うのか?硬いぞ?」
「茹でれば柔らかくなるから大丈夫。」
「そうか。」
「・・・。」
「なぁ、茹でるのはいいが、これどうやって取り出すんだ?」
「どうやって取り出すか・・・考えてなかった〜
どうしよう。」
「・・・。」
「あ、皿もない。」
「・・・。」
「とりあえず上にウォーターボールを飛ばして、それが落ちてくるまでの間に木を切って皿を作ってみる。」
「あぁ。分かった。」
ミランがパスタの入ったウォーターボールを上に向けて放つと、空高く飛び、そしてどこかへ消えていった。
「飛んでっちゃった。」
「・・・そうだな。パスタは諦めて肉を食うか。」
「そうだね。食べたらさっさと出発するし、魔術で焼こう。」
「分かった。」
「・・・ミラン、失礼を承知で言うが、お前は馬鹿なのか?」
「しょうがないじゃーん。料理なんてしたことないんだもん。高温でサッと仕上げれば時間も節約になると思ったんだもん。」
炭になったホーンラビットを眺めながら、テフはため息を吐いた。
「はぁ・・・。もうミランは料理をしないでくれ。次は死人が出るかもしれん。」
「え〜死人は出さないよう気をつけるよ〜」
「フロイ、悪いがどこか近くの街に寄ってくれ、何か食べ物を買ってくる。フロイの干し草も買ってくるよ。」
ハァー、ブルルル<仕方ないね。いいよ。>
「ほら見ろ、フロイも呆れているぞ。」
「え〜?俺のせい?」
「そりゃあそうだろ」
「いいもん。もう俺は料理なんてしない。」
ミランは拗ねたようだ。
ーーーーー
街の屋台でサンドイッチと串焼きの肉、フロイの干し草を買うと、少し休憩をして出発した。
「テフは仮眠をとってもいいよ。」
「いや、1日くらい寝なくても大丈夫だ。」
「そう。
ねえねえ、ウィルとオーク倒したんでしょ?どうだった?成長できた?」
「あぁ。成長できた。自信もついたし、ウィルが支援や援護してくれて、アドバイスもくれたから、俺はオークナイトを倒せた。」
「良かったね〜
もしかしてテフも次回の共闘の約束した?」
「あぁ。でも、ウィルは偉い人だし、社交辞令だろうな。」
「まだまだテフは人を見る目が甘いねー
ウィルはその約束、ちゃんと守るよ。
ウィルは身分なんか気にすることはないし、意外と冒険者の活動も楽しんでるからね〜」
「そうなのか。しかし、侯爵様と知ってしまったからには、今までと同じようには・・・。」
「それはダメだよ。
ウィルが悲しむ。今まで通り接してあげて。」
「分かった。」
もうすぐ夜明けだというところで、王都に着いた。
「フロイ王城に行って。」
ブルルル<分かった>
「王城・・・。俺も一緒に行くのか?」
「当たり前じゃん。もう到着は伝令魔獣で伝えてあるし、みんな揃ってると思う。」
「みんな?」
「うん。団長とか。」
「あぁ。」
「あと陛下とか宰相も。ウィルのおじいちゃんも来てるって言ってた。」
「ちょっと待ってくれ、まさかとは思うが俺も会うのか?」
「そうだよ?」
「俺、生きて帰れるのかな?」
「ウィルの仲良しに手なんか出さないよ。」
「俺、マナーとか分からないんだが・・・。」
「大丈夫じゃない?俺もマナーなんか知らないけど大丈夫だし。」
「丁寧な言葉も得意じゃないんだが・・・。」
「大丈夫。俺もそんな言葉は使ったことないけど咎められたことないし〜」
「そうか・・・。」
ミランの言葉ではまだまだ安心できないテフだった。
王城に到着すると、王城の使用人たちがウィルを運んで行った。
フロイも付いて行きたがったが、テフとミランが宥めて仕方ないという風に厩舎へ向かって行った。
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