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 気づいたときには、洗面所の扉は勢いよく閉められていた。


「え……。結局、何だったんだ? あの……栞さん? 理解が追い付かないんですけど……」


「知らないっ!」


 と、言い残して、栞はリビングへと行ってしまい、扉を閉じた。


 え~……。これ、どういう事。俺、何も説明されていないんですけど。洗面所の扉を開けたら、知らない全裸の少女がいたんだぞ。説明くらいしてくれよ。なぁ……。


 とりあえず、今は、この場から離れた方がいいと判断した俺は、自分の部屋に戻り、制服を脱ぐと、ズボンはハンガーに掛けて干し、ワイシャツの方は、また、洗面所に行くと、同じことの繰り返しになりそうなので、後回しにすることにした。


 着替えの服や短パンは、適当に選び、それを身に着けると、再び、リビングへと向かった。


「栞、ちょっと、話があるんだが、大丈夫……か……?」


 と、栞がキッチンで料理をしているのはいいとして、俺はまたしても、言葉を失う。


 先程の全裸の少女が、ソファーに座っていたのである。


 俺は、すぐさま、栞の元へ行き、耳元で囁く。


「おい、これはどういう事なんだよ。さすがに説明してくれないと、困るんだが……」


 栞は包丁をまな板の上に置き、小さく息を吐くと、ようやく、俺の口を聞いてくれる。


「私も最初の方は戸惑っていたんだけど、まぁ、今も戸惑っているんだけどね。どうやら、お父さんとお母さんの知り合いの娘さんらしいよ。で、預かったって感じ」


「なるほど……。って、そんな簡易された説明で納得できるわけがないだろうが! もう少し、詳しくお願いします!」


 栞は、俺の方を見ず、蛇口から水を出し、手を洗うと、服についているポケットからスマホを取り出し、ポチポチと、画面を打ち込み始める。


「ん……」


 そして、それを俺に渡すのだ。それを受け取った俺は画面を確認する。


 画面は、『お母さん』と表示されており、俺は、なるほどねぇ、としか思わなかった。


 説明するのは面倒だから、直接、母親に訊けと……。そうですよね。俺の電話だったら、あの人、出る確率、低いですよね。いや、別にいいんですけど、俺の心は、もう、傷ついていることだし……。気にしてないから。


 俺は栞のスマホを耳に当て、電話の音が鳴り終え、聞き覚えのある大人の女性の声が聞こえると、やはり、俺の母親だと、確信する。


『もしもし、どうしたの、栞?』


「もしもし、じゃねぇ……。これはどういう事なんだ?」


『はぁ……。なんだ、あんたか……。何、妹の携帯から電話してんのよ。自分のから掛けなさいよね。こっちは忙しいんだから』

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