XV
やべぇ……。気を抜いたうちに溜まりにたまっていた疲れが一気に襲い掛かってくる。
意識がもうろうとする。気持ち悪い。
俺は飯も食べずにそのまま眠りについた。
「お兄ちゃん、ご飯できたよ。おーい」
私は、手軽で簡単に作ったご飯をテーブルに並べて、お兄ちゃんを呼んだ。
だが、返事は一向に返ってこない。
さっきまでは、普通に返事を返してくれたのに、一体、どうしたのだろうか。
帰って来てからのお兄ちゃんは、どこか体調がきつそうにみえた。
「ねぇ、お兄ちゃんってばぁ……って、あれ? お兄ちゃん?」
様子がおかしい、息が荒ければ、顔が赤くなっている。
「お兄ちゃん⁉ 返事して! お兄ちゃん‼」
私は、すぐにお兄ちゃんの熱を体温計で測る。
三十八度。間違いなく、高熱だ。朝は、こんな状態でもなかったし、昼間もおかしいところはなかった。
「ほら、しっかりして! 寝るなら自分の部屋で寝ないと……」
私は兄の体を支えながら二階の部屋へと移動を始める。
重たい……。
自分よりも体も大きければ、体重も上の兄を二階へ運ぶのは、至難の業だ。部屋までにたどり着くまで、結構な時間と労働力がかかった。
「ふへぇ~。疲れた……。お兄ちゃんって、こんなにも重かったなんて驚いたよ。まぁ、それでも男性の平均体重だけど……。人、一人、運ぶなんてなかったからね……」
カーテンを閉じて、部屋のクーラーを点ける。体温調節を考えて、温度を設定する。
「あとは、冷たいタオルくらいかな。本当は服脱いで、新しいのに着替えてほしかったんだけど、仕方ないか。これじゃあ……」
私は部屋を出て、風呂場に置いてある洗面容器を持って台所に向かい、氷を入れ、水を入れる。その後、洗濯して、まだ、畳んでいないタオルを二、三枚、手にすると、お兄ちゃんの部屋に向かった。
氷水にタオルを濡らし、絞って、顔の額に載せる。
それを数時間おきに繰り返し、たまに、体を拭くようにする。
「ふわぁ……。そう言えば、私、まだ、ご飯、食べていなかったっけ? ま、別に後から食べても大丈夫か……。腐るものでもないし……」
私に少し、睡魔が襲ってくる。
クーラーが効いているせいなのか、目蓋が少しずつ重たくなっていく。