Ⅱ
「葵、どこだ⁉ どこにいるんだ⁉」
何も見えない暗闇の中で、俺は叫ぶ。この空間で響き渡る俺の声は、彼女に届いているだろうか。
「ちっ、返事はないか。一体、どこにいるんだよ」
俺は、また、深く潜り始める。本当にこの道で会っているかも不安であるが、それでも行くしかない。
『来ないでください』
「葵か? この声は葵なのか?」
声が聞こえた気がした。深く潜っているうちに小さな光が見える。
「そこか? そこにいるのか、葵!」
俺は、自分に話しかけてくる声に対して、聞き返す。あれは確かに葵の声だ。間違いない。
『もういいんです。私は、覚悟していたことですから、私の事はほっといてください。私はこの命を犠牲にして、天使化を止めます』
「おい、どういう事だ! 何を言っているんだ⁉ 俺が助けに行くから待ってろ‼」
光が見える方へ潜っていくが、それが近づいていくほど、風圧が強くなっていく。
『知っていましたか? 天使化の暴走を止めるには、もう一つあることに』
「ああ、知っている。だが、その選択肢だけは、俺の頭の中に絶対にない‼」
『分かっています。おそらく、あなたは私の事を助けに来ること自体、予想していましたから』
「だったら!」
『もし、仮に、私をここから連れ出したとして、その後はどうするのですか? 天使化の暴走は、すでに始まっているんですよ。今はまだ、これは序章にすぎないらしいです』
「それは……。分からねぇーが、絶対に俺が何とかするだから!」
『もう、無理なんですよ。これは私が決めたことです。アリエスさんにも話を通しています。アリエスさん、お願いします』
そう言い残し、会話が途切れる。
「くそっ! このままじゃあ、押し戻される……。くっそぉおおおおお!」
俺は、少しずつ光に近づいているものの、その遠さの現実を思い知らされる。
『諦めたらどうだ、小僧』
「やはり、来たか、アリエス」
目の前に現れた葵の姿をしたアリエスは平然としており、俺に話しかけてくる。
「そこをどけ! 今は、お前に構っている暇なんてない!」
『ふっ……。まぁ、そう言うな。一応、葵の願いだからな。宿主の願いは、私も叶えなければならない。それが最後の望みだったとしてもな』
アリエスは、葵の顔で微笑みながら言うのだ。




