Ⅵ
富山もそれを聞いたまま黙っているが、こういった考え事は全て、犬伏に任せているのだろう。でも、これを犬伏、一人だけに任せるわけにはいかない。
「だとしたら、私達をこの街に送り込んだ人が関係しているんじゃないの?」
「そうですね。それも一理あると思いますが、誰が信用できる人物なのか、僕も慎重に物事を進めないといけませんね」
「そう……。分かったわ。あなたも座ったらどうかしら?」
富山に言われた犬伏は、素直に席に座る。
「それで一体、これからどうするんだ? とりあえずは、葵の天使化の暴走から抑えないといけないんだろ? さっきの話に関することはお前らに任せるとしても……」
「え、あ、そうですね。それは早めになんとかしないといけません。アリエスさん、後どれくらいで天使化の暴走は進みそうですか?」
『そうね。後、もって二週間くらいかしら? もしかすると、私が思っている以上に進んでいるのかもしれないわ。早くした方がいいわね』
「そうですか……。色々と、調べる必要はありますが、とりあえず、辻中さんの事を優先して進めましょう。アリエスさん、ありがとうございました」
『いいわ、それくらい。何か、あったらすぐに情報をよこしなさい」
「分かりました。情報が入り次第、お伝えは致します」
犬伏の返事にアリエスは、そのまま姿を消し、代わりに葵の意識が戻った。
「ええと……葵か?」
「はい、そうですけど……。どうやら、話は終わったようですね。私がこうして戻っているという事は、何か情報は得たのでしょうか?」
「ああ、ちょっと、収穫はあったが、それよりもお前の事を優先しないといけないからな」
「そうですよね。すみません、ご心配をかけて……」
葵は、しょんぼりして誤る。
そこまで落ち込まなくてもいいだろ。別に葵が悪いわけでもないんだし……。
「さて、これからどうする? 俺達はまず、何をすればいいんだ?」
とりあえず、犬伏に訊いてみる。だが、すぐに返事をするはずの彼が、俺の問いに返事をしないのはおかしい。
「おい! 聞いているのか? 犬伏⁉」
俺が少し怒鳴ると、ようやく、犬伏がハッとし、我に戻る。
「あ、そうですね。とりあえず、僕が考えている計画の中では、これが一番、手っ取り早いでしょう。それも『デート』というのはどうですか?」
「「デート!」」
俺と葵は、同時に声を上げる。




