Ⅴ
歩き始めても出口は見つからない。本当にここから出られないのだろうか。だったら、このままこの世界に取り残されたままでいい。
『なるほどね。ここで何をしているかと思ったら、私がこの体を乗っ取ってもいいという事かな? なぁ、私自身よ』
聞き覚えのある声。これはもう一人の私の声。いや、これは天使が私に話しかけている。
後ろを振り返ると、私と同じ姿をした私が、そこで堂々と立っていました。
「なぜ、あなたがここにきて出てくるのですか?」
私は、震えた体を押し殺して、私の姿をした天使に問いかける。
『ん? それは私があなた自身だから、現に今のあなたは意識を失っているからこの暗闇に出てきてもおかしくないんじゃない? まぁ、このタイミングならあなたの体はすぐにでも私のものになるけれど、それはどうもうまくいかないみたいだし、暇だったからここにでてきたってわけ』
「そうですか……」
私はどこか安心したかのように肩の荷が下りました。この世界に閉じこもったままでもいいのかもしれない。もし、戻れたとしても私の人生は楽しいのでしょうか。それなら彼女に私の肉体を捧げた方がいいでしょう。
『ねぇ、私。あなたはこのままこの世界で生き続けたいと思っているのかしら? この暗闇の世界で……。それなら、私にとっては好都合。意識を取り戻したら、世界を支配できるしね。でも、それだけじゃあ、面白くないのよ。なぜ、私はあなたに宿ったと思うかしら?』
天使の私が、私に問いかけてくる。だったら、なぜ、ここに姿を現さずに私の体を乗っ取らないのでしょうか。
不思議に思う私に続けて問いかけてくる。
『天使は、悪魔の力を宿していると同時に愛の力で支配できるの。まぁ、私的には、どちらでもいいのだけれど、悪魔の力で世界を破滅させるより、愛の力で支配した方が面白いじゃない。言っておくけど、私は今もあなたの体を狙っていることだけは、忘れないでほしい。それがどういう意味なのか、あなたの頭脳なら少しくらいは理解できるわよね?』
天使は、意地悪そうに私に言ってくる。
「でも、本来、私の体を乗っ取る天使が、なぜ、そのような助言をしてくれるのでしょうか? それに愛の力とは、どうすればいいのですか?」
『そうだね。なんとなくだよ。私が、あなたに宿ってから一応、この体も気にいっているし、この世界をあなた自身の手で壊させたくはない。それに愛の力は、なんとなくわかるんじゃない? 誰かを好きになるってことよ』
「誰かを好きになる? 私が……ですか? ありえません、そんな事……。私を好きになってくれる人など、それは本気で好きになってくれた人なんていませんから……」




