Ⅳ
葵と富山も同じバトミントンを選択しており、二人はペア同士で、他のコートでラリーを行っていた。
ネットを挿んで、俺と犬伏は、ラリーを始めた。
シャトルが、交互に飛び交い、初心者の誰もが出来ることである。テニスのラリーよりかは簡単だ。
今のところ何もない。今のところは……。
「坂田さん」
「何だ?」
「後ろ、恐らく、狙ってきますよ」
「そうかい」
俺は視線だけを後ろに集中させる。
体育館の半分のスペースでは、バレーの授業が行われていた。バレーは、陽キャラな生徒達が、集まっており、その中に俺を標的とする生徒がいるのだ。
向こうは、二人でレシーブやトス、スパイクを打っている。
なるほど、今度は、ワザと狙ってくるわけね。どうせ、スパイクだろうけど、バレー部じゃない限り、コントロールは良くないだろう。
うちのバレー部は、女子は強いが、男子バレー部は存在しない。昔はあったらしいが、部員の減少により、現在は廃部扱いになっている。
さて、どういう感じで仕掛けてくるのか、お手並み拝見だな。
俺は、ラケットを振り回しながら犬伏にシャトルを返していく。
だが、数分経っても仕掛けてこなければ、されに十数分待っても、こっちにボールを売ってくる気配がない。
犬伏の予感が、外れたのか? 珍しいな。あの犬伏が?
「犬伏、狙ってこないぞ」
「そうですね。僕も今のあなたなら狙われてもおかしくないと思ったのですが……」
バトミントンの方は、ダブルスの試合に移る。
俺と犬伏は、余ったダブルスのペアと、試合することになった。
まぁ、対戦相手の二人組のデータはないが、この二人組は白に近い。普通に試合中もシャトルを打ってくる。それに彼ら、意外とダブルスがうまい。俺も狙ってくるが、犬伏相手にも動じず、狙ってくるのだ。
点数は十六対二十で、相手のマッチポイント。
相手の打ち返したシャトルが返って来る。
高くロブで返してきたシャトルが、俺の方に目掛けて落ちてくる。
「坂田さん、お願いします!」




