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「これ、預かってもらえるか?」


 俺は貴重品を入れた袋を犬伏に渡す。


「体育が終わる時間まででいい。俺が持っているより、お前が持っていた方が、安心できるからな」


「いいんですか? おそらく、一緒にいる僕のカバンの中も荒らす可能性は高いですよ」


「大丈夫だ。どうせ、お前の事だから、カバンは自分以外、開けられない道具とかでなっているんだろ? お前、秘密が多すぎるから、分かるんだよ」


「そうですか……。分かりました。これは僕が預かっておきますね」


 俺から渡された袋を犬伏は、自分のカバンの中に入れた。


「さて、面倒だが、体育でも行くか」


「そうですね」


 俺達は、体操服を着たまま、体育館シューズを持って、教室を後にした。


 廊下を歩いている途中、犬伏が、話しかけてくる。


「藤峰さんとは、うまくいっているのですか? 今日も、わざわざ、教室まで来てくださって、放課後のデートまで約束していましたが……」


「あれはそんなんじゃねぇーよ。おそらく、『一緒に帰りましょう』と、彼女は言いたいんじゃないのか? 別に俺は、仕方ねぇーからやっているだけであって、天使関連がなかったら、今頃相手なんかしてないよ」


 俺はそう言った。


「それにしては、仲良さげでしたよね。僕のデータによると、好感度はいいと思いますよ。でも、天使化の暴走を抑えるのには、まだまだですけど」


「ああ、そうかよ。富山に言われた通り、恋愛ゲームも休まずにやって、それを生かしているつもりなんだけどな」


「そうですか。それはなりよりです。どうです? 女の子を堕とすゲームは、シミュレーションとは違うでしょ。辻中さんとは、違うタイプの女の子です」


「お前、楽しんでないか? 俺、結構、悲惨な目に遭い続けているんだが……。出来れば、お前に代わって欲しいくらいだぞ」


「ははは、それはできませんよ。主人公は、僕ではありません。僕はあくまでもサポートであり、モブ役です。女の子の好感度を上げるのも、下げるのもあなた次第です」


 と、冗談を交えながら、ハッキリと断られる。


 体育館に着くと、シューズを履き替え、授業の準備を手伝う。


 ラケットを出したり、ネットを張ったり、することは、あまりなかった。


 授業が始まると、準備運動をし、ペア同士のラリーをする。


 もちろん、相手は犬伏である。

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