XXXVIII
「カッコよくて、可愛いの、二つじゃ、ダメなのか? 俺的にはそれが一番しっくりとくるんだが……」
「はぁ……。これだから、童貞は……」
童貞は、関係ないだろ。童貞は。
「いい? 男はね。大人になると、可愛いより、美人を取るの。確かに、子供のうちは、可愛いが、有効的だけど、大人は違う。美人がどちらにしろ、可愛いが、後からついて来るものなのよ」
「そういうものか?」
「そういうものなのよ。あんた、恋愛ゲームは、最近やっているの?」
「ここ最近は、やっていなかったな。おそらく、溜まっている。積みゲー状態だな」
「だと思った。いい? とにかく、中間テストも大事だけど、ゲーム攻略の方もしなさいよ」
と、念を押される。
「葵、さっき、富山の話、分かったか?」
「はい、結構、的確に言っていましたけど……。陣君は、もう少し、女心を学ばないといけないですね。もしかすると、私も愛想つかしちゃうかもしれないです」
「ぐっ……」
このたまに、意地悪っぽい所を責めてくる葵には、どうしても勝てない。
勝てないくらいならいいとして、無視されるのは、もっとダメージを受ける。
「いや、愛想だけは……なぜか、傷つく……」
「だったら、頑張ってください。女心も藤峰先輩の事も、後、中間テストも、ですよ」
んー、なぜか、その最後の言葉だけ、引っ掛かるぅ~。
話し合いも終わり、中間テスト期間中の部活動の活動時間である一時間を過ぎると、俺達は、下校することにした。
まだ、雨が収まる気配もなく、いつになったら晴れるのだろうと、神様に訊きたいくらいである。
一週間の天気予報では、晴れる日は全くない。あるとすれば、時々、曇り、くらいだ。
どちらにしろ、雨合羽を手放せない状況である。
俺は、靴箱に置いてある自分の靴に履き替えようとすると、「はぁ……」と、深くため息をついた。
「陣君、どうしたんですか?」
と、俺の隣に来て、俺の見ている先を葵も見る。
「これ、どう見ても誰か、やっているよなぁ」
俺の靴箱の中に置いてあるはずの靴がない。いたずらと言うよりも、もう、これはいじめに近いと言った方がいい。




