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XXXIV

「あ、葵……」


 思いっきり抱きしめられる俺は、顔を赤くしながら、俺の胸の中で顔を埋めている葵に呼び掛ける。


「もうちょっと……」


 人前で、こんなにイチャイチャしてもいいのだろうか。


 俺は、富山の方をチラッと見るが、こちらを見向きもせずにスマホの画面を見ている。


 少しはこちらに興味を持てよと思うくらいではあるが、俺と葵の関係は、彼女にとって普通の事であるかのように感じる。


「ダメですから……」


「え? 何が?」


「一番は私ですからね。それだけは覚えておいてください。忘れたら許しませんよ!」


 大胆な告白というか、他の女にデレデレして、自分の事を後回しにしたら、どうなるか分かっているわよね、とも読み取れる。


 ヤンデレにも限度がありますよね。以前、どこかのアニメで少女が恋人を殺すシーンがあったなぁ。確か、原因が、恋人の不倫というか、いろんな女と関係を持っていたのが理由だったな。死にたくないなぁ。本当に死にたくない。


「どうも、遅れてすみません。お待たせしま……した」


 と、扉を開けた犬伏が、そっと扉を閉じた。


「ちょっと待て! そこまでしなくていいだろ! 別にいいから、気にしていないから‼」


 俺は思わず叫んで、犬伏を呼び戻す。


「ほら、葵も離れた、離れた。犬伏も来たことだし……」


 俺は葵から離れると、葵も席に座りなおす。


 犬伏は、もう一度、扉を開いて、部屋に入ってくる。


「冗談ですよ。冗談。二人がそのような関係は分かっていますし、それに何より富山さんがスマホをいじりながら何もしなかったとでも?」


 ん? それはどういう意味なのだろうか?


 犬伏の言葉が引っ掛かる。『何もしなかった』という言葉が、どういう意味を示しているのか、はっきりとしていない。


 犬伏はニコニコして、こっちを見ている。


 すると、富山が自分のスマホの画面をこちらに見せてきた。


 それは先程の俺に葵が抱きついている写真だった。


 顔を真っ赤にする葵は、あわあわと、富山のスマホを奪い取ろうとする。


 富山の表情は楽しそうに、葵をからかっている。


 おいおい、静かにいつも通りの態度を取っていると思いきや、そんなことをしていたのかよ。

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