XXII
「は、はい……」
じーっと、俺の方を睨みつけてくる皐月さんの表情は、男の俺でも、ドキドキするほどかっこいい。だから、男女問わず、人気があるのだと思った。
「そう。だったらいいわよ」
皐月さんは、俺から離れてくれた。そして、俺から少し距離を取る。
ゆっくりと体を起こした俺は、皐月さんの方を見ると、さっきまでの鋭い目つきではなく、恋する乙女みたいな表情をしていた。
「あ、俺、この後、どうすればいいですか? とりあえず、この中の荷物は全部片づけましたが……」
「そうね。後は、バレーの道具とか、簡単なものばかりだから、大丈夫だよ」
「そうですか。それじゃあ、俺、自分の部屋に戻りますね」
「うん、ありがとう」
俺は皐月さんに背を見せ、部屋を後にし、自分の部屋に戻った。そのままベットに飛び移り、うつ伏せになったまま、俺は、一度、頭の中で整理する。
あの手帳に映っていた幼い男の子は、間違いなく俺だ。見間違えるわけがない。でも、だとするなら、栞は? あれくらいの歳なら栞は産まれているはず。
皐月さんと、どこで会ったのか、思い出せない。どこだ、どこで会った。思い出せ、記憶をたどれば、思い出せるはず。
俺は、幼い頃の記憶まで遡ろうとするが、全く思い出せない。
あんな人、一度、会ったら忘れるはずがないんだが……。
俺は、そのまま、目を閉じたまま、深い眠りに入った。
あれ? ここは、確か……。俺は、部屋に戻ってそのまま、ああ、寝落ちしてしまったのか。
そしたら、この記憶は、俺が幼い頃の……。
そこには幼い頃の俺が、女の子に手を引っ張られながら、どこかに連れられて行く。
この場所は、俺の家? それにリビングか?
その後、俺はリビングのソファーで、女の子に押し倒されながら、何かされている。
おい、見えねぇ。もう少し、アングルを変えろよ。
やはり、俺の記憶なのか、記憶の中に介入することができない。
「ねぇ、陣平君」
「何、皐月ちゃん?」
お互いに名前を呼びあっている。
やはり、あの二人は、俺と皐月さんだ。一体、押し倒されて、何をされているんだよ。
「ねぇ、キス。……してみない?」
はいいいいいい!




