XIX
『ええと……。状況が全く理解できないのですが、どういう事でしょうか?』
「だよなぁ……。もう少し詳しく述べると、家にいるっているよりか、今日から同じ屋根の下、同居することになった」
『………』
返事が返って来るのに数十秒かかった。一瞬、電話が壊れたかと思った。
『そ、そうなんですか……。それはなりよりで……。ちょっと待ってください? 今、何と言いましたか? 僕の聞き間違いだったら、申し訳ないのですが……。皐月さんって、藤峰皐月さんの事でしょうか?』
「そ、そうだけど……」
ガチャ、ドンッ、バンッ!
と、電話の向こうから何か物が落ちるような音がした。
「おい、大丈夫か?」
少し心配した俺は、動揺していると思う犬伏に言う。
『あ、いや……。大丈夫ですよ。ちょっと、荷物が倒れたくらいですので……』
いつもクールに見える犬伏が、ここまで乱れているとは思わなかった。
どうやら、この事態は予測していなかったらしい。だって、急な事だからな。
「それで、相談だが、今後、どうすればいい? さすがに俺も一緒に住むことになるとは思わなかったからなぁ」
『そうですね。僕としては、普通に接することしか、今はアドバイスできないですね。こんな事態は、流石の僕でも対策を立てていませんでしたので……』
「ですよねぇ……」
『すみません』
と、俺と犬伏が、話をしていると、扉をノックする音が聞こえた。
「陣平君、ちょっとお願いしたいことがあるんですけど……」
この声の持ち主は、皐月さんだ。一体、何の用だろうか。
「今の声、聞こえたか?」
『あ、はい。本当に同じ屋根の下、一緒に住んでいるんですね』
「わりぃ、一旦、電話切るわ。話は明日な」
『分かりました。それじゃあ、おやすみなさい』
犬伏は、そのまま電話を切った。
「あれ? 陣平君? 部屋にいる?」
「あ、はい! 入ってもいいですよ!」
俺は皐月さんを部屋に招き入れる。扉を開けて、部屋に入ってきた皐月さんは、ちょっと、頬を赤くしていた。




