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「あなたの気持ちは分かります。ですが、私がこのように魔法が使えるのはある人のおかげでありまして、今の生きる人たちの未来が変わってしまうと、この魔法、いや、私たちの存在すらなかったことになります。これは私たちにはできないことです。大丈夫、未来の坂田さんも少女たちを救っているから未来があるのです。これはあなただけの未来ではありません。他の人の未来もかかっているのです。だから、ここは……お願いします。やってください」


 富山は頭を下げてお願いしてくる。


 頭を掻きながら、俺は困った表情をして、当然、悩みながら最終的には心が折れ、首を縦に振った。


「分かった……。それなら何をすればいい。恋仲になるには、色々としなければならないんだろ? 例えば、恋愛ゲームみたいな感じなのか?」


 俺は再び、犬伏に話しかける。


「そうですね。恋愛ゲームと言えば、そうなりますね。ラブコメや恋愛のアニメなどにも当てはまります。私たちは、あくまでもサポート側、少しはあなたを助けることはできます。そのためには、この短時間で、あなたにはラブコメ、恋愛の基礎を徹底的にその体に叩き込んでもらいます」


 と、犬伏は、近くに置いてあった段ボールを机の上に置いて、段ボールの中身を取り出す。


 漫画や小説、ゲーム。どれもラブコメ、恋愛系のものばかりだ。


「こ、これを全部、やるのか?」


「はい。少しでも多く、その身に叩き込んでください。時間がありません。一人目の少女の天使化は、今にも少しずつ進行しています」


 犬伏は、俺にそれを渡す。


「それで、一人目の天使化する女子生徒って誰なんだ?」


「そうですね。一人目は、私たちと同じクラスの辻中葵さんです」


「辻中葵? 誰だ? そんな奴、いたっけ? んー……」


「いますよ。我々のクラスメイトです。席は、あなたの近くだったはずですよ」


 そう言って、犬伏は、クリアファイルを取り出して、ホワイトボードに少女の顔が載せられた写真が貼られる。


「それが辻中葵という女子生徒の写真なのか?」


「はい。彼女が辻中葵、三月三日生まれ。身長一五四センチ。後の体重とスリーサイズは、秘密らしいです。女性として、男性には知られたくないらしいですからね」


 犬伏は、急に話を切り替える。その隣でじーっと、睨みつけていた富山が犬伏に対して、小さいため息を漏らす。


「さて、この辻中さんが、今回のターゲットです。後は富山さんに説明してもらいましょう」

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