側面のお話 <焼却炉事件> パトリック視点4
「パトリック。あの防犯魔道具は本当に見事な出来だ。国の更なる治安に役立つだろう」
そして事件後、改めてそう評価したアーサーは、少し複雑そうに俺を見た。
「どうした?」
明らかな羨望の混ざった、そんな表情は珍しい、と思い聞けば。
「お前もしかして、ローズマリー嬢から何か聞いていたのか?」
アーサーが、俺を真っ直ぐに見てそう言った。
「と、いうと?」
恐らくは物語のことを言っている、と判っても俺が先に言う訳にはいかない。
「物語、のこと、だ。僕は、何も聞いていなかった」
苦渋の籠ったアーサーの声と瞳に、俺は先ほどの表情の意味を悟る。
「ああ。リリー嬢から聞いた話だけれど、とローズマリーから教えてもらっていた」
淡々と答える俺に、アーサーはすべてを悟った様子で頷いた。
「それで、あの防犯魔道具を創り、わざわざ焼却炉に設置したのか」
「ああ。だが、あの場でも言った通り魔法省の承認は下りているし、当然学園側の許可も貰って、管理させてもらっている」
俺の言葉にアーサーがため息を吐く。
「ローズマリー嬢は、お前を心底信頼しているのだな」
「リリー嬢だって、お前を信頼しているだろう。ただ、事が事だけに安易に口に出来なかっただけで」
「だとしても、羨ましく思った」
心底そう思っている様子のアーサーに、俺は苦い目を向けてしまう。
「俺は、子どもの頃からリリー嬢とずっと一緒にいられたお前が、羨ましくて仕方無かったけどな」
そう。
俺とローズマリーは、デビューの年まで会うことを許されなかった。
そのことだけは、どうしても納得できない。
「何を言う。実際に会っていなかった、だけじゃないか。ああ、まあ音声は聞こえないのだったか」
苦々しく思っていると、アーサーが揶揄うように笑った。
「まあ、そうなんだが。まだ言ってくれるなよ?」
「パトリック最大の秘密、だな。安心しろ。ローズマリー嬢には言ったりしないから」
「それ、リリー嬢には言う、ということか」
まあ、リリー嬢とてアーサーからの話を軽々しく口にしないだろう、とは思うけれど、ローズマリー相手にはどうなのだろう、とも思う。
それにしても、アーサーは子どもの頃から一緒にいられたことへの感謝が足りない。
俺だって、もっと早くにローズマリーと会いたかった。
小さなローズマリーと小さな俺とで一緒に遊びたかった。
俺は、もうずっと前から、ローズマリーの傍にいたかったんだ。
ただ見ている、だけじゃなくて。
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