婚約者に叱られましたが、なんだか幸せです。
アーサーさまとリリーさま。
それに、パトリックさまと私の四人で一緒に街歩き。
それはとても楽しい一日になりそうだと、私は廊下を歩く途中も楽しくて仕方がない。
「楽しそうだね、ローズマリー」
私の隣を歩きながら言うパトリックさまは、まだ少し不満そうに前を歩くアーサーさまとリリーさまを見た。
「楽しみですから」
「ローズマリーとふたりきりのつもりだったのに。ごめんね」
はあ、とため息を吐くパトリックさまの憂いを帯びた横顔。
この、ごめんね、という言葉に含まれるもの。
それを私はきんと理解している。
だから大丈夫なのだと、これは言っておかないと、と私は姿勢を正した。
「パトリックさま。一緒に街へ行く、と言っても、もし何か事があればパトリックさまが優先してお守りになるのはアーサーさまであり、リリーさまです。最悪の場合、私を見殺しにしたとしても文句はありません」
アーサーさまは次期国王、リリーさまは次期王妃。
もしもの時は、おふたりを守るのが最優先となるので、私は見捨てられても仕方がない。
それが、さきほどのパトリックさまの『ごめんね』に含まれる大切な事柄。
でもそれは、当たり前のこと。
私は、心からそう思って強く頷いて見せたのに。
「街中での小競り合いくらいなら、みんなまとめて守るから大丈夫。アーサーも強いし心配ない。それより今、聞き捨てならないことを言ったよね。見殺しにする?俺が君を?そんなことするくらいなら、俺が死ぬ」
強くきつい、怜悧な眼差しを向けられて私は身が竦んだ。
「そ、それは、もしもの場合で」
「例えそうだとしても。臣下としては正しいけれど、そんな言葉、俺には言うな・・・まあ。そんな君だから、俺はローズマリーが好きなんだけど」
途中からはやわらかな瞳になったパトリックさまが、それこそ、仕方ない、というように私の頭をぽんぽんと叩く。
打って変わった優しい仕草に、私の心臓がさっきとは違う意味でとくんと跳ねた。
「パトリックさま」
「何があっても守るし、まあそんな心配いらないと思うから、気にせず街歩きを楽しもうね」
そして言われた言葉にこくんと頷いて、私は隣を歩くパトリックさまを盗み見る。
今も、また。
パトリックさま。
私のことを、好き、って。
今日は。
好き、って、たくさん、言われた気がする。
そう言ったときのパトリックさまの、そのときどきの表情を思い返しながら、ふわふわと歩いていた私は。
「危ないっ!」
障害物も何もない、平面の廊下で躓き転びかけてパトリックさまに力強く支えられた。
すみません、パトリックさま。
ありがとうございます。
お蔭様で、廊下の床と私の顔面がこんにちは、するのを避けられました。
ブクマ、評価凄く嬉しいです。
読んでくださってありがとうございます。




