第七話
そんなこんなで、週末になった。
俺としては普段と変わらない週末を過ごすだけなのだが、小町としては戦いの日だろう。
……いや、恋人同士に見えるように行動しなければいけないのだから、俺としても普段通りにはいかない。しかし、恋人がいた経験がないために何をどうしたらいいのかも見当がつかない。
一体どうしたものやら。
そう思案しつつ自室で物思いに耽っていると、ピピピ、とスマホがSNSの着信を知らせた。
開けば小町から、出かけるから家から出てこい、という旨が記されている。
「まあ、悩んでいても仕方が無いか」
いつも使っているバッグを肩に掛け、俺は家を出た。
小町の家は隣にある。とても大きく、立派な佇まいの家だ。一目で金持ちが住んでいると見て取れるほどに目を引くが、華美な豪華さではなくシンプルながらも美しいと感じさせる建物である。
小町の父親は医者、母親は教師をしている。どちらも仕事が忙しいらしく、度々小町は俺の家に預けられることもあった。
そのため、今でも時々小町は俺の家で夕飯を食べたりする。俺の両親としても、小町は娘のような存在なのだろう。小さな頃から面倒を見てきた、という積み重ねがあるのだから。
「さあ、行くわよ、決戦の地へ」
丈夫そうな作りの門を開け放ち、小町はそう宣言した。
「直接対決でもする気か?」
「アクションを起こしてくれるなら儲け物でしょ?」
「俺は平穏無事に過ごしたいけれどな」
「平穏無事な日常を得るために、今日働きかけるんでしょうが」
「静かに引き下がってくれれば良いんだが」
「まあ、アンタがいればどうにかなるわよ」
頼られているように聞こえるが、その実、貶されているということに俺は気付いている。
「俺の顔と身長があれば、か?」
「泣く子も黙る大倉大和に睨まれて、尚も歯向かってくるなら大したものよ」
「なんだその評価は……」
泣く子も黙るは置いておいて、歯向かってくる奴がいたのならそれはそれで面白いかもしれない。
俺のことを怖がっていないのか、怖がりつつも意思が強いのか、そういう者なら見てみたいとも思う。
「さて、そろそろ行くわよ」
小町はそう言い、手をこちらへ差し伸べた。
その行動に疑問符を浮かべている俺に向けて、小町は強く眉を寄せる。
「手を繋げって言ってんの!」
「なるほど」
恋人らしい行動、か。
差し伸べられた手を優しく握り返し、俺たちは歩き出した。
今日は少しでも恋人のように見られるよう、行動しなくてはいけない。気恥ずかしい思いもあるが、それも飲み込んでいかなければならないのだ。
まあ、俺たちの身長差からして、親子にでも見られているのではないか、とも思うが。
いつものようで全く違う、新たな休日が始まったのであった。
腰を据えて書かないと、と思い早数週間。ずっと追いかけられている状態です。
余裕が欲しい。
あ、パソコン変えたのですが、流石に文章に影響はないかな?