第二十一話
「せっかくだし、お茶でも飲んでいく?」
「ああ、すまないな。いただくことにする」
小町の様子はおかしいままだが、お茶を勧められたのでご相伴に預かることにする。
話さなければいけないこともあるし、解かなければならない誤解もある。
何にせよ、話をしなければ前には進まない。
ティーポッドから注がれた紅茶を飲みつつ、チラリと小町の様子を伺い見る。
小町はこちらを見ようとはしない。ティーカップを注視しながら、目線を動かさないように努力しているようにも見える。
「……久しぶりだな、こちらの家で話をするのは」
まず二人で話すことが久しぶりだな、とは言わないでおく。
デリケートな問題だ。藪をつつかなければ、蛇は出ないのだ。
「そうね、あんたと話すことがちょっと久しぶりのようにも感じるけど」
藪を突かずとも、蛇は出る。自分から出る。最早襲いかかってくるレベルだ。
しかし、これはチャンスでもある。虎穴に入らずんば虎子を得ず。踏み出すしかないのだ、次の一歩を。
「今日、翔太と話していたんだ。俺が小町に避けられている、と」
「……まあ、そうよ。私は正直なところ、あんたを避けていたわ」
「ストーカーを撃退したあの日から、か?」
「そう、というかそうに決まっているじゃない! あんなことを言っておいて、私が平然としていられるとでも思っているの!?」
顔を真っ赤にして、小町は怒鳴った。
その頬の紅潮具合は、怒りからだけではなく他の原因があるようにも見える。
これは翔太の言う通り、勘違いさせてしまっている可能性があるのかもしれない。
「俺は、小町のことを大切な人だと言った。あれは、愛の告白じゃない。
家族のように大切だと思っている、妹のような存在だ、という意味で言ったんだ」
みるみるうちに、小町の顔がもっと真っ赤になっていく。
これは一目で分かる。怒り120%の真っ赤具合だ。
「紛らわしいのよバカ! もっと他の言い方はなかった訳!?」
「紛らわしいと言われてもな。別に嘘を言っている訳でもない」
「本当にあんたは、見た目でも周囲を勘違いさせるし、口下手なところでも変な勘違いを産むんだから、もっと気を付けなさいよね!」
「言わせて貰えば、小町がそういったように受け取るとは思わなかったんだ。
俺たちはそういう関係じゃない。これからもならない。小町もそう考えていると、そう思っていた」
「ーー うっさいわボケ! 死ね! 帰れ!」
紅茶も飲み干していないのに、俺は蹴り出されるようにして小野寺家から放り出されてしまった。
まあ何はともあれ、小町の誤解も解くことが出来た。
これからは前のような日常が送れるに違いない。翔太にも、明日報告しておこう。
手持ちぶさたになってしまった手をポケットに突っ込み、俺は自宅へと向かった。




