第十三話
「近づくな、とはこれまた、随分な物言いだな」
少し逢坂の圧に怯んだが、おいそれと受け入れられる問題でもない。
十何年と幼馴染をやってきて、いきなりもう近づきません、なんて出来る筈もない。
それも、ほとんど初対面に近い赤の他人に言われて、なんて納得できる訳がないだろう。
「貴方は小野寺さんの横に立つ者として、相応しくありません」
「相応しいかどうか、なんて誰が決めるんだ?」
「それは勿論、周囲の目ですよ。二人が並んでいて、周囲が納得するかどうか。
それが大事だとは思いませんか?」
正直なことを言えば、とてもよく理解できる。
誰だって、周囲の目は気になってしまうものだ。俺なんて、いつもそれで一喜一憂させられている。
……いや、喜んだことなんてあっただろうか?
閑話休題。
だがしかし、それを受け入れてしまっては逢坂の思う壺だ。
それすなわち、小町と一緒にいることが出来なくなってしまう。
それはとても困…………りは全然しないが、色々と面倒だろう。
断固、お断りだ。
「何とも、生きにくそうな考え方だな。周囲の目をそんなに気にして生きて、疲れないか?」
俺は疲れる。その上に傷付く。
気にしなければ、もっと心穏やかに過ごせたのかもしれないが、気になってしまうのは気になってしまうのだ。
「……うるさいですね、貴方には関係ありませんよ」
逢坂はわかりやすく視線を逸らし、言い訳するかのように呟いた。
その反応は意外だったが、逢坂も周囲の目を気にして大変な目に遭っているのだろう。
まあ、『微笑みの貴公子』なんて呼ばれるくらいだと普通とは違う悩みもあるのだろうが、俺は少しだけ親近感が沸いた。
しかし今、共感を示す訳にもいかない。
言葉を連ねて、追い払わないといけないのだから。
「釣り合うから付き合う、だとか一緒にいるっていうのは、おかしいだろう。結局は当人同士の問題であり、赤の他人に口出しされることではない。
お前はどんな資格があって、俺たちの関係性に口を出してきたって言うんだ?」
「僕は、小野寺さんのことが、好きなんです。だから、貴方に邪魔をされたくないんですよ」
そうなのだろう、とは思っていたし分かっていた。
しかし、そうストレートに言われると、気圧されるものがある。
「貴方がたは付き合っていないんでしょう? それならなおさら、いつも一緒にいるのはおかしい。
小野寺さんの隣には、小野寺さんのことが好きな僕がいるべきです」
暴論が過ぎる。考え方も自己中心的過ぎだ。
だが共に、熱も感じる。
コイツは本当に小町のことが好きなのだろう、と思わされる。
ーー俺は本当に、小町の横にいるべきなんだろうか?
「言いたいことは言えたので、この辺りで今日は失礼します」
そう言って颯爽と去っていく逢坂はまるで台風のようであり、俺はその背を見つめることだけしか出来なかった。




