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第三話 さらなる成長への予感、されども当たっているとは限らない

 学院をサボりながら狩りを始め、すでに三日が経過していた。


 僕のステータスは現在こんな感じ。



 ラクト=ユウキ 種族 (人間) 年齢:16

 レベル:11 取得経験値量:99

 筋力 :38

 瞬発力:46

 体力 :41

 魔力 :0

 出力 :0

 抵抗力:40


 スキルホルダー:空き数3


 スキルリスト



 あれからもさらにレベルが上がり、肉体の強化量もかなり上昇していた。

 ゴブリン複数体に囲まれた所で容易に切り抜ける事が出来る様になったし、前は討伐に苦労した・体が小さく素早いキラーラビットでさえ簡単に討ち取る事が出来る様になっていた。


 レベルアップの恩恵は凄まじい。今までどうやっても前に進めなかったのが、今ではこんな簡単に進む事が出来る。正直、拍子抜けするぐらいだ。






 レベルという概念について、一度真剣に考えた事がある。

 前にボード見た時、レベルが上がるのは『魔素』というのが関係している事は分かった。でも、じゃあその『魔素』はどうやって手に入れているのか。


 僕は魔獣狩りをする事でレベルを上げてきた。その事から考えるに、魔獣狩りをする事で『魔素』が手に入るのは間違い無い。

 でも、じゃあ何で魔獣を倒すと『魔素』が手に入るのか? 魔素とは空気中に浮かぶ魔力に似たエネルギーではなかったのか。


 これは僕の推測だけど、普通の獣と魔獣の違いはここにあるんじゃないかなと思う。

 獣と魔獣の違い───それは、『魔素』を宿しているかどうか。

 落ちこぼれだった僕が、『魔素』を吸収しただけでこんなにも強くなれたんだ。だから、『魔素』を持つ魔獣は、普通の獣と比べてあんなにも強い。


 この仮説に行き着いた時、僕はある事を思い付いた。


 元々『魔素』を宿していた魔獣の肉体。僕が倒し、そこから『魔素』を吸収したとしても、まだその肉体には『魔素』が残っているんじゃないだろうか? 飲み物を飲み干したとしても、その容器に着いたしずくを一滴残らず吸い出すのは不可能だし・汚染された地域、その空気の浄化だって、一瞬で完璧に浄化を行うのは不可能だ。魔獣の肉体に『魔素』が残る可能性だって十分にありえる。

 その『魔素』が残った魔獣の肉体───それを食べれば、より経験値が得られるのではないだろうか?


 いや、馬鹿な事を言っているのは自分でも分かってる。人間にとって魔獣の肉は毒───そんなの、五歳の子供だって知ってる事だ。

 こんな一例がある。その昔、酒に酔った冒険者が「度胸試し」だとか言って面白半分に魔獣の肉を口の中に入れたそうだ。その後、冒険者の容態はすぐに悪化し、倒れ───魔獣の肉を口に含んでから僅か三十分で死に至った。


 魔獣の肉を食す───そんなのは馬鹿のする事だ。それは分かってる、でも───。






 僕は近くに転がっている討伐したばかりのキラーラビットの死体に目をやる。

 確かに、魔獣の肉体は毒。………でも、所詮毒。解毒のポーションがあるなら食べられるんじゃないか?


 ポーションというのはそれぞれの分野に特化した万能薬の事だ。例えば、再生のポーションだったら傷を治し、力のポーションだったら一定期間だが筋力を強化させる。

 一言で言うなら、とんでもねぇ薬って事。


 いや、普通、魔獣の肉を食べたいからって高価なポーションを使ってまで食べようとはしない。今の僕の思考が異常だって事は分かってる。

 でも、今はそんな一般論よりも、少しでも強くなれるのならその可能性を試してみたいという気持ちの方が強い。

 可能性があるのなら、試してみたい。


 解毒のポーションは僕の一週間分の生活費と同額。僕からしたらかなり高価な代物だ。

 でも、何か大変な事が起きた時の為にコツコツと貯めておいた貯金・最近丸一日を使って稼いだ余分なお金を合わせれば、買えない事も無い。


 もしかしたら強くなれる・ギリギリそれが行えない事も無い───その二つと、最近になってようやく強くなれたという激情が拍車を掛け、僕は歯止めが効かなくなっていた。




              ▂▅▆せ、▆▅く▃




 僕は下に転がっているキラーラビットの死体を布で包み、街へと戻り始めた。



   □□□



「換金お願いします」


「あ、はい」


 僕は三日前に依頼受諾をしてもらった受付嬢さんの所に行き、討伐確認部位に登録されているゴブリン・キラーラビットの耳を提出する。


 別に狙って同じ受付嬢さんの所に行った訳じゃない。たまたま空いている受付の所に行ったら、三日前に担当してくれた受付嬢さんがいたという話だ。

 確かに、この眼鏡を掛けた受付嬢さんは、クールで仕事が出来る女性の雰囲気を感じさせながらも、体から出る大人の色気もあり、とても魅力的だ───けど、そういう下心は無い。無いったら無い。


「これが今日の報酬です」


「───! あ、はい! ありがとうございます」


 そんな事を僕が考えている間に換金が終わった様で、僕の一日の生活費+@の額が手渡される。


 僕はそれを受け取ると、薬局に向けて走り出した。



   □□□



 ラクトがギルドを出てから少し経ち、依頼達成報告に来る冒険者がまばらになった頃。


「はぁ……」


 ラクトを担当した眼鏡を掛けた受付嬢が背もたれに体を預け、溜め息を吐く。


「ありゃ珍しい。先輩でも疲れたりするんですね」


「いやアンタ、私を何だと思ってんのよ」


「ん〜、完璧超人?」


「………まぁいいわ」


 彼女からしたら変な事を言う後輩受付嬢に呆れながら、彼女は続きを話していく。


「三日前に話した事、覚えてる?」


「三日前……? あっ! もしかして、Fランクの少年の事ですか!?」


「そう、その子。………はぁ」


「でも、その子がどうしたんですか?」


「………」


 眼鏡を掛けた受付嬢はどこか憐れむ目で虚空を見つめて。


「あの子、最近朝から毎日見かけるんだけど……」


「へぇ、頑張ってますね」


「あの子ね、学院に通っている筈なのよ」


「え、学院? 学院って……もしかしてあの『修練棟学園』ですか!?」


「えぇ」


「はぁ〜、あの子、実は凄い子だったんですねぇ。………あれ? でもF?」


「なのに、最近は朝早くから依頼ばっかり。学院はどうしたのかなって……」


「あ〜……」


 その一言で何が言いたいのか理解した様で、後輩受付嬢は目を明後日の方に向ける。


「……何で男の子は無謀な挑戦をしようとするかな。現実見て、少しでも早く現実的な道を歩む方が絶対いいのに……」


「………」



   □□□



 僕は薬局で毒のポーションを買って寮に戻ってきた。


 そして、ギルドに寄る前にすでに寮の部屋に置いてきていたキラーラビットを包んだ布をほどく。


「………」


 いざやろうとしてきたら、少し緊張してきた。


 と、とりあえず、すでに血抜きは討伐後に終えてるから解体だな。

 僕はそれからぎこちない手付きでキラーラビットの解体を行い、そして火を通していく。


 その間も、僕は強くなれるかもしれないワクワクと、失敗したらどうしようという恐怖が混ざり合いながら───その瞬間に行き着いてしまった。


 椅子に座り、目の前には机に置かれた調理済みのキラーラビットの肉を見詰める。


 今更になって、色々な考えが浮かんできた。

 別に、こんな危険な橋を渡らなくても、地道にコツコツとレベルを上げていけばいいじゃないか、とか・魔獣の肉の毒性を、薬局で売ってる標準性能なポーションで打ち消せるのか、とか───。


「アホか、僕は」


 冷静に考えれば、分かることだ。

 過去は長い。それこそ、世界は、僕が生まれるよりもっと前から存在している。

 そんな中で、誰も似た様なことを考えるものはいなかったのか? いや、そんな筈は無い。僕程度が考えつくことなんだ───それこそ、誰にだって思いつく。

 でも、それらを総合して───「無理だ」と歴史が言っている。




            ───▎▃▊▆んだろ?




「え?」




         ───強く、なりたいんだろ?





「───」


 そうだ。僕は、強くなりたい。

 僕は───すでにかなり遅れてしまっている。そんな僕が、コツコツとなんて流暢りゅうちょうな事を言っていていいのか? “最強”に至ると誓っておきながら、そんな甘えた事を言っていていいのだろうか? ───否だ。そんな事では、とても“最強”なんて至れない。

 僕が憧れる“最強”は、そんな甘っちょろいものなのか? ───そんな筈が無い!


「………」


 いや落ち着け。一時の感情と思いつきで命を懸けるのは馬鹿のすることだ。

 命あってこその力だろ? それなのに、強くなるために命を捨てるなんて、本末転倒ではないか。




            ───食せ、食せ、食せ




 そうだ───やるんだ! やってみるだけの価値はある! ここで無茶をやれなきゃ、僕に先なんて無いんだ!!


 違う、落ち着け。そうじゃないだろ。

 強くなりたいなら、効率的で現実的な努力を。




          ───力が、欲しいんだろ?




 今起きている現象は現実的か? 僕が成長したのは効率的な努力をしたからか?

 違う、そうじゃない!

 全ては奇跡だ! 奇跡が僕を成長させてくれたんだ!

 なら、さらに成長するにはどうする? また奇跡が起きるのを待つのか? 次の奇跡はいつだ、何年後か? 何十年後か?

 違うだろ! ここまで来たら、もう自分で奇跡を起こしにいくんだ!

 僕はもう、奇跡が起こることを知った。なら───!






 僕は解毒のポーションを飲み、キラーラビットの肉を───頬張った。


「はむっ、はむ……んぅんぅ……っ、───!?」


 キラーラビットの肉を噛み、千切り、そして飲み込む───すると、急に喉から何かがこみ上がってきた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも面白いと思っていただけたら、ブクマ又は感想等 貰えると嬉しいです。作者自身、自己顕示欲の塊みたいな者なんで、貰えると滅茶苦茶 励みになります。

また、誤字や辻褄が合わない点などがあれば即修正に入ろうと思いますので、言って貰えると幸いです。


よろしくお願いしますm(_ _)m。


次回更新日や更新時間を知りたい方は、私の活動報告やTwitterで色々と呟きをしていますので、そこを見てくださればと思います。プロフィールに行けばTwitterのURLや活動報告が確認出来ると思いますので、気になる方はそちらに飛んでください。


それではまた次回の更新で。

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