表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖人帝軍諜報部  作者: ナナイロナイト
グンタイ妖人行方不明事件
7/58

妖刀夜々壱

妖刀夜々壱との出会い

灰色のスーツに身を包み、同色のネクタイを締めた。

「これで人間のサラリーマンに見えるだろう」

あとは、夜々壱。

幾度となく命を救ってくれた、なくてはならない頼れる相棒。

置いていくなど考えられない。今回もきっと活躍してくれるだろう。


夜々壱との出会いは、実に運命的だったと言える。

まだ新兵だった頃のことだ。

蛍が飛び交う、とある夏の夜。夕立後のじっとりした重い空気と下がらぬ気温で熱帯夜となっていた。

こんな夜は外に出ようと夜市に出掛けたカナメとモンス。

夜店を冷やかしながら歩いていたところ、店頭で偶然見かけたのが夜々壱だった。

その日本刀は刀掛けではなく、他の骨董品の化粧ケースに無造作に立てかけられていた。

まるで運命の人との邂逅。吸い寄せられるように目を奪われ、引き付けられて離せない。

(日本刀は横置きが基本なのに、無神経なことだ)

カナメは刀が可哀そうになった。

そしてなぜか、日本刀が『自分を買え』と言っているような気がした。

刀には値札が付いていなかったので、店の親父に聞いた。

『親父、あの刀はいくらだ?』

『刀?』

店の親父には見覚えのない刀。不思議そうに手に取った。

『こんな刀、仕入れたっけ?』

鞘から抜くと、真っ黒な刀身が出てきた。

長年手入れを怠り傷んでいた、切れ味がとても悪そうな完全になまくら刀。普通なら売り物にならないだろう。

『……まあ、いいか。一分金でいいよ』

一分金は、蕎麦一杯分。

店の親父にとっては、少しでも金に変わるならありがたい。

カナメは、一分金を支払い、日本刀を手に入れた。

横で見ていたモンスが、『一分金でも高いよ。蕎麦を食べた方が良かったんじゃないか?』と笑ったが、カナメは気にしないで持って帰った。


兵舎に戻ると、刀身を見ようと鞘から抜いた。

驚くことに、先ほどとは打って変わって黄色く発光してとても美しかった。

カナメもモンスも目を丸くした。

『さっきと全然違う!』

『綺麗だなあ!』

『見間違えだったのかな。いや、確かに真っ黒だった。取り違えたようにも見えなかった』

良品を劣悪品にすり替える詐欺はあっても、その逆はないだろう。

モンスが昔聞いた伝承を言いだした。

『これ、いわゆる妖刀じゃないか?』

『妖刀?』

『刀の妖ってこと。妖刀は不思議な力を宿しているらしい』

近くにあった空き缶で試し切りすると、スパッと切れた。その切れ味にカナメとモンスは顔を見合わせた。

『これは名刀に違いない。いい買い物をした』

カナメはとても気に入った。

『私にも触らせてくれ』

モンスがカナメから刀を借りると、刀身が真っ黒に変化したので二人はまた驚いた。

『これはまごうことなき妖刀! 持ち主を選んでいる! カナメ以外には使わせてくれないということだ!』

モンスは、羨ましそうな顔でカナメに返した。


カナメは、夜市で買ったから妖刀に「夜々壱」と名付けた。

モンスが言った通り、夜々壱には不思議な力が宿っていた。

カナメの命令に従って動き、形を自在に変化できる。

それ以来、戦場で大活躍。幾度もカナメの役に立ってきた。


今回も夜々壱を持ち歩きたいが、人間世界で刀は目立つ。

考えた末、夜々壱に命じた。

『私の背中に隠れろ』

夜々壱は透明化すると、カナメの背中に吸い付いた。

『姿を消すこともできるのか。これで、夜々壱の存在を誰にも気づかれないですむ』

カナメが知らない夜々壱の能力は、まだまだありそうだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ