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妖人帝軍諜報部  作者: ナナイロナイト
グンタイ妖人行方不明事件
11/58

怪しいラボラトリー

――プルプルプルプル……。

カナメの軍用通信機が鳴った。

携帯電話ほどの小さな機器は、暗号化された秘密回線を使用していて、誰かに傍受される心配はない。

『カナメ、新たな情報が出た』

ハラシガからだ。

マイナーは、新情報が手に入ったら連絡してくる。

『モンスの信号をキャッチした。地図を送るから、そこに向かってくれ』

「わかった。そこに向かう」

各自の通信機から出る微弱な電波を本部がキャッチできれば、居場所を特定できる。

カナメは、通信機に送られてきた地図を確認した。北西に9㎞。さほど遠くない。

早速、そこへ向かった。



地図が示した場所に行ってみると、高い塀に囲まれた研究施設のような建物があった。

ぐるりと囲んだ塀の上には有刺鉄線。門ごとに設置された監視カメラ。入り口には鉄門と守衛詰所。警備員が一人いる。

入り口には『ドクター・ブラウン生物化学研究所』と書かれている。

「本当にここからモンスの信号が?」

どうみても人間の建物。妖人は人間との接触を避ける。モンスが意味もなくここに来ることはない。理由があるとしたら、失踪者がここにいたと言うことだけとなる。

奥を覗くと、100mほど先に入り口がある。

無駄な装置や装飾など一切なく、無機質な不愛想感が出ている。

軍人訓練を受けているカナメにとって、民間施設への侵入に怖気づくことはないが、モンスが消えたことから、慎重に調べることにした。


まずは周辺。

ここは人里離れており、人工的なものは近くにない。ここへ来るまで1㎞ほど商店や人家もなかった。

唯一の人工物はアスファルトの舗装道路。まだ新しく、ラボラトリーのために敷かれたもののように見える。

建物もできたばかりのように新しい。

(このラボラトリーに侵入して調べてみるしかないな。昼間は人目がある。夜になるのを待とう)

妖人は人間と違って暗闇でも見える夜目を持っている。

(それまで周辺を調べてみるか)

監視カメラに入らないよう遠巻きに周りを歩いてみると、有刺鉄線が凹んでいる個所を見つけた。

(ここなら私の跳躍力で飛び越えられそうだ)

ここに向いている監視カメラを破壊しておけば、見つかるまで時間を稼げるだろう。


雑木林を歩くと、ブービートラップを見つけた。

踏むと足を挟んで捕らえる狩猟用トラバサミと、そこからワイヤーでつながれた小さな爆弾が見える。

この二つは連動していて、トラバサミに掛かるとワイヤーが引っ張られて爆発する仕掛けだ。

ワイヤーに引っ掛かっただけでも爆発する。

(狩猟用にしては殺傷力が高い……。どういうことだ?)

近くの木に血がべったりと飛び散っているのを見つけた。

「誰かがこのブービートラップに引っかかったようだな」

他の木も探したが、他に血痕は見つけられなかった。

(目につく場所は洗い流して、たまたま、この木だけ見逃したのだろうか)

残酷な罠で厳重に守られたラボラトリーは、まるで刑務所のように見える。

カナメは、妖人の死体を思い浮かべた。上あごから上がなく、両腕も切り落とされていた。

誰かの悪意による所業でなければ、考えられない状態だ。

「ここは怪しい」

何かとんでもない恐ろしいことが、中で行われている気がした。

「モンスがここでいなくなったことは確かなようだ」

残る問題は生死。

生きているのか死んでいるのか。それを確かめるために、ラボラトリー内の探索を避けて通れないようだ。

周囲が暗くなるのを待った。


(そろそろ大丈夫か……)

深夜になったので侵入を試みる。

守衛詰所を覘いたカナメは、違和感に気付いた。

(誰もいない……)

職務放棄なのか、詰所に誰も詰めていない。

つまり、警備がガバガバで侵入し放題ということ。

夜間とは言え、これでは警備の意味がない。

(気が緩んでいる。我が帝軍だったら訓戒ものだ)

カナメは帝軍に倣って憤った。

軍事施設と違って民間はこんなもの、とは言えない。外の罠とのバランスが悪いからだ。

(まさか、あれを過信しているのだろうか)

夜にこのラボラトリーへ近づくものがいれば、罠に掛かって瀕死状態となるだろう。慌てる必要はないということだ。


(それにしても、この状況はチャンス)

カナメは、堂々と正面から侵入……しなかった。

明らかにこれも罠と思えたからだ。

誰もいなくても監視カメラはある。どこかでモニターしていることは確実。

先ほど見つけておいた、有刺鉄線が凹んで低くなっているところから侵入することにした。


(始めるか……)

まずは、石で監視カメラを破壊。それから驚異の跳躍力で塀を飛び越えて敷地に入った。

敷地内では警報が鳴らない。楽々侵入できた。

周囲を警戒しながら建物回りを伺う。ここにも監視カメラがある。

入り口に近づくと電子錠が掛かっていた。

カナメは持っていたハッキング装置を使って開錠した。

ドアを開けると非常灯のみが点灯する薄暗いロビー。

だが、カナメには問題なく見える。

ゆっくりと辺りを警戒しながら足を踏み入れていく。


ロビー中央まで来ると、カチャリと入り口の電子錠が掛かった。

「何?」

シュウシュウと白いガスが天井から噴き出してカナメを襲った。

(しまった、罠だった!)

視界が真っ白になったと同時に、意識が真っ白となった。

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