第九話 窓辺の少女ケティ
ジャンはチラシを取りに行っている間、ドミーは女の子を探す日々が続いています。町ではジャンの事をオウムを連れた人として知られるようになりました。いろいろな人が毎日ドミーに話しかけてきます。今では、自分の家で作った料理をお裾分けとくれる人もいます。
いつものようにチラシを取りに行くジャンを見送ると、ドミーは窓から飛び立ちました。今日は少し遠くまで足を伸ばそうと思っていました。この町を回りつくしてもドミーが探している女の子が見つからなかったからです。隣町まで飛んできたドミーは休憩しようと思い、大きな木にとまりました。そこから大きくて立派なお屋敷の二階の部屋の窓が見えました。暖かい日のためか窓は開いています。部屋の中には、ベッドで本を読んでいる女の子がいます。ドミーは、しばらく女の子の様子を見ていました。女の子の顔は透き通るように白くて、もう何年も外に出ていない事がわかります。体も細くて弱々しいそうです。でも、大きな目と形の良い鼻、そして唇はもし元気であれば花びらのように愛らしいだろうと思いました。すると、女の子の部屋に誰かが入ってきました。お盆にのせた食事を運んできたようです。「お嬢様、お食事の時間ですよ。少しお召し上がりにならないと」と言いました。「ありがとう、でもちっとも食べたいと思わないの。食べなきゃいけない事はよくわかっているんだけど」女の子はそう言うと少し笑って見せました。その人が部屋から出て行くと、女の子はため息をつきました。とてもさみしそうだとドミーは思いました。ドミーはその部屋の窓まで飛んで行くと、女の子のすぐ側にとまりました。突然飛んできたオウムに驚いた様子でしたが、オウムが何もしない事がわかると女の子は少し微笑みを浮かべて「あなたはどこからきたのかしら?はじめまして、私の名前はケティよ」と言うとドミーは「ケティ、ケティ」と繰り返しました。女の子はうれしそうに「あら、あなたはお話しができるの?あなたの名前は何ていうのかしら?」と尋ねました。「ケティドミードミー」とドミーが口ずさみました。この時から、ドミーとケティはお互いに仲良くなれそうだとわかりましたし、ドミーは女の子が優しい心を持っていることもすぐにわかりました。
ドミーは「また帰ってくるからなケティ」と言うと部屋から飛び立ちました。女の子はまた来てねドミーと心の中で呟きながらドミーの飛んで行く空を見上げました。
ドミーはチラシを配り終えようとしているジャンを見つけると、カートにとまりました。「今日はえらく遅かったなドミー、さあ家へ入るぞ」と言うとアパートの階段を上がって行きました。




