第四話 ドミーに聞かせる航海の話し (南方の港で)
チラシ配りの仕事が決まり、アパートに戻ったジャンは帰りに買ってきたドミーの餌をテーブルに置きました。「ドミー、仕事が決まったぞ」と少し弾んだ声で言いました。「仕事が決まったぞ、決まったぞ」とドミーは羽をパタパタさせながら繰返します。ドミーの餌と水を取り替えると、パンと牛乳を出して食べ始めました。餌を食べ終わったドミーはテーブルに来て、ジャンを見ています。「チラシ配りは明日からだ、海の仕事はきついけれど、長年やっていると面白いこともあったもんだ」とドミーを相手にその夜も航海での話しを始めます。
南国の航海での事だ、ドミーよく聞けよ。吹き出しちまうくらい面白い話しだからな。船が港につくと荷物を降ろしてから食事をしようと一軒の店に入ろうとしたら入口に檻に入れられた猿がいたのさ。聞くと港の町に突然現れた猿が店という店で食べ物を探して大騒ぎになったので、店の人達が捕まえて檻に入れたと言うんだ。おかしな話しだ、港に猿がいるはずないからな。次の朝、港を出発すると厨房で「猿だ!猿がいるぞ」と料理長が叫んだ。俺らは大騒ぎで猿を捕まえると、檻に閉じ込めたのさ。しかし、よく見ると可愛い顔をしてるじゃねえか。俺は厨房で食べ物をもらうと猿の所に行って毎日やったよ。するとなドミー、猿は俺になついちまって手を出して甘えるようになったんだ。おっと、この続きは明日また話してやるよ。明日は初めての仕事だ、おやすみよドミー。
そう言うと、ジャンは明かりを消してベッドにもぐり込みました。




