後書き 愛するドミーとジャンに寄せて
------後書き-------
ジャンはお屋敷の中庭の手入れをする仕事をしながら、ドミーと一緒にお屋敷で住むことになりました。
お屋敷の庭は広くて、中央に大きな温室があります。ドミーはその温室が大好きです。午後になると温室の一角にあるテーブルでティータイムになるのですが、美味しいお茶とお菓子を食べながらひと休みです。
ケティはお茶の時間は毎日温室に来て、ジャンの話しを聞くのが一番の楽しみでした。ケティのパパやママも時間があれば温室に来てジャンの話しを聞くのを楽しんでいました。
ジャンがお屋敷に初めて招かれて来た日のことを覚えていますか?ジャンはケティに何かプレゼントを持ってきたのでしたね、あのプレゼントはどうしたのかしら…。実は帰る間際に誰にも気づかれないように、そっとケティの手に渡したのです。ケティはそれを大切に箱にしまいました。
ケティは車椅子がなくても、どこでも行くことができるほどに病気が回復しました。毎日ドミーやジャンと一緒に中庭で、太陽の光りを浴びて新鮮な空気を吸うことで、みるみる良くなっていったのでした。
やがてケティは十八才になり、いよいよ社交デビューをする日になりました。ドレスを身にまとったケティは箱の中からジャンにもらったプレゼントを出すと首に着けました。そうです、ジャンがあの日ケティにプレゼントしたのは南の島の王様からもらったネックレスだったことを覚えていらっしゃるかしら?
ケティは大勢のお客様がいる広間へと降りて行きます。みんなケティの可愛らしく上品な姿に見とれていました。
ジャンは広間の隅でケティの姿を見て目頭を拭きました。あの日からジャンはケティを自分の娘のように可愛がっていたからです。そこへケティが近づいてきて「ジャンおじさん、ありがとうございます」とドレスの裾をつまみ正式なお辞儀をしました。それを見ていたケティのパパも近づいてきてジャンにお礼を言おうとした時です「ケティ、そのネックレスはどうしたのだ?」と驚いたような顔をして言いました。「このネックレスは初めてジャンおじさまにお会いした時に頂いたものですのよ」と屈託のない微笑みを浮かべて言いました。「なあに、いいんでさ。俺はあの日何もお嬢さんにあげるものがなかったけれど、ネックレスがあったのを思い出してね」とジャンは照れくさそうにドミーを見ながら言いました。
「これは、もしかしたら」と言うケティのパパに「チンパンジーを見つけたお礼に南の島の王様にもらったものでしてね」ジャンは懐かしそうに言いました。「南の島の王様がまさかドット国王だったなんて!」とケティのパパが言うと「パパ、ジャンのお話しに出てくる南の島の王様を知っているの?」と尋ねました。
驚いたことに、ジャンにネックレスをくれたのはケティのパパの親友であるドット国王の父親だったのです。ネックレスの模様に南の島の王様の紋様があるのをケティのパパはすぐに気がついたのでした。
その後、ジャンとドミーそしてケティの家族は南の島へ招待されました。ケティのパパがドット国王にジャンの事を話すと、ドット国王の父親がぜひもう一度ジャンに会いたいと言っていたとのことでした。
船の甲板に出て南の島が近づいてくるのをケティの家族と見ながら、ジャンは風をうけて言いました。
「ドミーや、見てみろ。俺はな世界中の港を回った船乗りだったんだぜ!」
「ドミー俺は船乗りだったんだぜ世界中の港を回ったな」とドミーがジャンの肩にしっかり掴まりながら言いました。
---愛すべきドミーと船乗りのジャンに寄せて
南の島の物語りは単独で別冊として書かせていただいております。題名『南の島へようこそ!』です。船乗りジャンと共に…




