第十二話 ケティの家へ
翌朝、ジャンが出掛けると、ドミーはテーブルに置かれた紙をくわえてケティの家まで飛んで行きます。そしてケティに小さな紙を手渡しました。紙を広げて読んだケティの頬は紅潮し「ドミーありがとう。ジャンおじさんに手紙を渡してくれたのね」
その時「ケティお嬢さま、朝食はお済みになりましたか?」と扉をノックして入ってきた人に「ばあや!パパとママに知らせてちょうだい。ドミーの飼い主のおじさんが来てくださるのよ」とドミーが持ってきた手紙を渡しました。「お嬢さま明日ではありませんか、これは大変ですこと」と言うとばあやは手紙を手に慌てて階段を駆け下りていきました。
「ドミーありがとう、本当にありがとう。明日気をつけて来て下さいとジャンおじさんに伝えてね」と言うとケティは薔薇のような唇でドミーに軽く口づけしました。
翌朝ジャンは「今日はチラシ屋に休みもらったからなドミー、ケティというお嬢さんの家まで案内してくれ」と言うとアパートの階段を降りました。すると、何という事でしょう!アパートの前に止まっている黒塗りの高級車から出てきた運転手が「あなたがドミーさんの飼い主のジャン様ですか?お待ちしておりました、どうぞ車にお乗り下さい。ご主人様や奥様がジャン様をお待ちです」と車のドアを開けました。
道を歩いている人は皆その光景を足を止めて見ています。「あれは隣町のドーブル様のお車ではないかね!しかし驚いたな、あのチラシ配りの人とドミーが車に乗ろうとしているよ」と町の人たちは囁きあいました。
ドミーと一緒に車の後部座席に座ったジャンは「ドミー、見てみろよ。町の者がケティさんの家っていうのは、ひどく金持ちらしいな。こんな車に乗るのは、南の島の王様の車くらいのものだからな」とジャンは落ち着かない様子で言いました。
さて、その頃ケティの家では「隣町だと、あと20分くらいで着くだろう。ドミーの飼い主はどんな人なのかな?」とケティのパパも落ち着きなくウロウロしています。そんなパパを見て「パパったら子供みたいだわ、ドミーとジャンおじさんに会うのが楽しみなのね」とケティが明るく笑いました。




