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第十話 ドミーが女の子を探していた訳

 仕事を探している頃、ジャンは風邪をひいて寝込んでしまった事がありました。いつも航海での話しをするジャンが「なぁ、ドミー。俺は昔一度だけ結婚したことがあった。俺の嫁さんはそりゃあ優しくて可愛くてな。俺らは幸せだった、本当に幸せだった。だけどな」と言うと、つらそうに言葉をつまらせました。「俺には娘がいたんだよドミー。産まれてすぐに嫁さんと一緒に天国へ行ってしまった。生きてりゃ今頃は嫁さんに似て優しい娘になってるだろうよ。一緒にどんなに楽しくて幸せだろうな」

 ドミーはジャンの話しを聞いた時に優しい女の子を探して会わせてあげたいと思いましたが、どうにもなりませんでした。そして、ジャンが窓を閉め忘れた時に羽ばたいたのでした。


 ドミーは隣町の窓辺でベッドに座っている女の子の所へ行きました。女の子はドミーとすっかり仲良しになりました。ドミーはジャンから聞いた航海の話しをすると、女の子は目を輝かせて聞き入っていました。そして、自分も元気になって色々な所へ行きたいと思うようになりました。

 食事を運んでくる人はお嬢様がいつもになく、食事を食べられるようになった事を不思議に思いました。返事をする声も弾んでいます。血の気のない青白い顔は、日に日に赤味を帯びてきました。それで、ご主人様と奥様にお嬢様のことを言わなければと折りを見て「旦那様、奥様、お嬢様が不思議に元気になっていっております。一度お話しをされてはいかがですか?」と報告しました。ケティの父親は優しい人でしたが、いつも留守がちで家族と過ごす時間がありませんし、奥様も様々なお付き合いに出席するためにケティはいつも召使いと教育係に任せるしかありませんでした。


 数日後、旦那さまと奥様はケティの様子を見に来ました。ケティの部屋から知らない声が聞こえてケティが笑っています。「あなた」と言う奥様に「ちょっと待ちなさい。話しを聞いてみなさい」と言うと部屋の中から聞こえる話しに旦那さまも奥様も笑いをこらえるのに大変でした。

「また来てね、ドミー」というケティの声がした後、部屋の扉を開けました。窓から鳥が飛び去って行くのが見えました。「ケティ、誰と話していたんだい?」と旦那さまが言うとケティが「お父様いつお帰りになったのですか?うれしいわ」と目を輝かせて言ってから「あのね、お友達のオウムのドミーの話しを聞いていたの。晴れた日は毎日来てくれて本当に良い友達なの」と言いました。そして、ドミーが一緒に暮らしている船乗りだったお爺さんから聞いたことを話してくれていると説明しました。

 旦那様と奥様はケティが見違えるように元気になったのを驚くと同時にうれしくてケティを抱き寄せました。そして「そのオウムの友達は、とても楽しい話しをしてくれるらしいね。実は友達の話しを少し聞いていたのだよ、ケティはお友達ができたので元気になったのかな?」と言いました。ケティは「そうなの、ドミーの話しを聞い後は、お腹も空くし、何よりドミーが話してくれる色々な場所へ行っているような気持ちになって、いつか自分も行ってみたいと思うとドミーの話してくれた土地が目に浮かんで夜も楽しいことを考えながら、すぐに寝られるようになったのよ」と話すケティの元気な姿は両親を喜びと幸せで満たすのでした。そして言いました「ケティ、ドミーという友達とその友達に話しをしてくれたお爺さんにお礼を言いたいのだが、今度友達がきたら伝えてくれないだろうか」と微笑みました。ケティは「お父様、私うれしいわ。だってドミーが大好きなんですもの」と顔を高潮させて言いました。その唇はドミーが思っていたとおり、バラの花が咲いたように愛らしく輝いていました。

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