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自宅の二階にあるベランダの柵に縄が結ばれており、何かが吊るされている。
思い出したのは、子供の頃に作った沢山のてるてる坊主だった。通りからその光景を見た俺は現実から乱暴に引き剥がされた思いになり立ち尽くす。
静かに呼吸をするように脳が動き出せと警告を出す。弟の名前を叫んだ。何度も叫び自宅へと駆けた。玄関の扉は開いていた。二階へ上がり弟が吊るされているベランダに続く部屋に入ると中はひどく荒らされていた。
ベランダの戸を開け柵の下を見た。吊るされた弟が小さく揺れている。
俺は叫びながら縄を解こうとする。縄は固く結ばれていたが無我夢中で解こうとする。やがて縄は次第に解かれていき、完全に解けた時には弟の重さでベランダの下へと落下していった。しまったと俺は柵の下を見た。
俺は息を飲んだ。
目があった。何も映さない虚空を孕んだ二つの目があった。口は笑っている。
やっと逃げ出せたぞ。そんなことを言っているかのような顔をして、弟は死んでいた。