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美味しいご飯



「ご飯って何がいいですか? 」


「……おいしいごはんがいい。」


「わかりました、おいしいご飯ですね!」


「なんか、嫌な予感がするんですけど。」

レイユエ達のやりとりをみてリーニャが呟く。


「こっちで待ってて下さいね。」

そう言ってレイユエは部屋から出ていく。


銀糸で刺繍のされた白いクロスが敷かれたテーブルに見るからにふかふかしてそうな椅子。

その他の調度品も白で揃えられておりところどころに入る植物の緑が美しい部屋である。


「……すごっ。」


じーと部屋の調度品を見て手を伸ばす。

「売ったら……。」

「それ以上は言わせませんし盗らせませんから!!」

「ちっ。」


「舌打ちするな!と言うかなんで拘束はずしてあるんです!? 」


「いつのまにか外れていた。」


「えっ? 怖いんですけど。」



「あぁ食べるのに邪魔なので外したみたいですね。」


ちょうど部屋に戻ってきたレイユエがそれに答えた。


「いやいや、ちゃんと拘束しててくださいよ。逃げちゃいますから。」


「島は魔方陣で覆ってありますからすぐに感知したり捕獲できますし、飛び降りたところで死ぬだけですよ。」


「「……。」」


「どうかしました? 」


「なんでもありません。」


「じゃあ、とりあえずご飯食べましょう。」


そう言いながら白くて粒々した何かがよそわれた皿を短い前足でテーブルに置いた。


「あのーこの粒々した白いのは……。」


「ご飯ですよ!東の国の中で生産されているご飯の中でも一番美味しいと言われているやつです。」


「えーっと。」

「……。」


「もしかしてお米知らないんですか? 」


「お米ですか? 」


「はい、さっきもいった通り主に東の国で栽培されている物です。」


「東の国って確かユエさん着てる服も東の国の物ですよね。」


「龍族の始まりは東の国ですからね。ちなみに竜族は西の国です。」


「へぇ竜っていってもいろいろなんですね。てことはもともとユエさんは西の国にいたんですか? 」


「いえ、私は龍と竜のハーフですし、出身は関係ないんですよね、現に私は生まれも育ちもクレアールジェミニシティですし。」



「へぇ。じゃあ……。」


「そんなことより飯食いたい。」


続けて質問しようとしたリーニャ声を遮りシンが言いった。

その言動を見たリーニャの堪忍袋の尾は切れた。

「なんなんです、さっきから!」


もともとリーニャはシンを保護することを反対していた。


リーニャは常識人だ、悪いことは悪いことで裁かれる。

罪は償わなければならないそれがリーニャの常識だ。


「捕まえられてるのはあなたが物取りなんてするからでしょう? 理由があっても犯罪は犯罪ですよ。悪いことしたら裁かれる当然のことです!」


「……。」



だが、貴族であり自分より確実に実力も立場も上位のレイユエがシンを庇っていた、だからこそ言い返すだけに止めていたのだ。


「だけど、ユエさんは犯罪者であるあなたを庇いました、訳があるだろうと。」


「そんなこと、頼んでない。」


「頼んでなくても助けられたなら感謝するのが道理でしょう?おそらくユエさんはあなたを余裕で衛兵につき出せたはずです。」


リーニャが一番許せないのは罪を償わないことではなく、人の好意を無下にしたことだろう。

訳があるのは言動からわかる、だがそれを理由に人の好意を無下にしていいはずはないそれがリーニャの常識だ。


「まぁまぁ、私は気にしてませんから…。」


「そう言うユエさんにも非はあるんですからね!」


「……えっ。」


苦笑いをしながらリーニャを止めようと、羽を羽ばたかせリーニャの前に来たユエはピタリと羽の動きを止めた。

止めても浮いていることから羽を羽ばたかせる意味はそこまでないのだろう。

ぴきりと固まった表情からはなぜリーニャが怒っているのかわからないと言うのがありありと伝わってくる。


「えーっと。」


何が悪かったのだろうかとユエは考える、ユエは人間が好きだ。

人間は弱い、だからこそ弱くて儚い小さな人間がとてもとても愛おしい、人間の言うことなら何でも聞いてあげたい、そう思っている。


シンは痩せていただから助ける、ユエには当然こと。


だから何がいけなかったのかわからない。

ただ分かるのはリーニャが怒っていることこれ以上の話はいけないと言うことそれだけだ。


「話はあとでしましょう。」


「「……。」」


だから、明るい調子でご飯の話に戻そうとする。


本当は逃げてしまいたかった、人であるシンの自分を軽蔑する目が怖い、怒っているリーニャが怖い、なぜそんな目で見るのかわからないことが怖い。

だけどここで逃げたらもっと怖いことになるそれがわかっていた。


唇をつきだしむぅという表情をユエがとる、あとにすることは簡単だ。


さっきシンにしたことをもう一度する、リーニャとシンの口ににんまり笑いながら美味しい料理を突っ込むのだ。


「えい! 」


「ちょっ、ふぐっう! 」


「んぐ。」



二人がむぐむぐと料理を食べる、若干顔が緩んでいるのが分かる。

さっき突っ込んだのは鶏皮春巻きパリッとした皮が最高に美味しいユエの好物の1つである。



「もうユエさん、なにするんですか! 」


「……。」

シンは無言のまま、だけど少しばつが悪いのだろう少しだけ眉が下がっている。



「あぁもう泣かないで下さいよ。ほらご飯にするんでしょう? 」


「へ? 」

確かにユエの瞳からはぽろぽろと雫が落ちていた、それはリーンっと言う鈴の音のような音をたてて床の上に落ちる。


「うわ、なにそれなんで涙が魔石になってるんです? ってシンさんは盗ろうとしない!なんて図太いんですか!」


「魔力の保有量が多いせいですね、魔力の多い人なら竜でなくてもなりますよ。」


「……ふむ。」


「そこ、悪巧みしない! 」


「まぁまぁ、そろそろ皆が料理を持ってきますから座って待ってましょうよ。」


「……わかった。」


「はい。」


「そろそろ来ますね、扉の前です。開けていいですよ。」


「失礼いたします。」




扉の開く音がしすると同時にふわりと料理のいい匂いが漂ってきた、次に見えたのは彩りも鮮やかな見たこともない料理たちだ。

匂いが今にも食べて言っているようだ。


「「うぁぁ。」」


「何が好きか分からなかったので東西南北の大きな国はもちろんその他の国の料理までいろんな料理があります。」


「すごいんですけどこんなに食べられませんよ。」


「食べられる分で構いませんよ。」


「えっ、でも残ったのが勿体無いですよ。」


「ん?あぁ残ったのは使用人に下げ渡されますから問題ありません。」


「使用人さんって食べ残し食べるんですか?」


「あぁ、下げ渡すって言っても皿からそのまま食べたのを渡すんじゃないですし。」


「? 」


「んーと、ケーキとかって切りますよね? 」


「じゃないと食べきれませんよ。」


「それと同じです。大皿にある料理を私たちで取り分けて食べるんです、ただ使用人は雇われてる立場なので後で食べるんです。」


「あぁ、何となくわかりました。けどユエさん一人の時とかどうするんです?使用人さんに行き渡らないんじゃ。」


「下げ渡すのとは別に料理が作ってあるんだよ嬢ちゃん。」


そのリーニャの質問に答えたのはおそらく誰もが見ればなぜコックコートを着ているんだという疑問を抱くであろう赤の髪に金の瞳をもつ体格のいい男。

強面な顔だが笑うと優しそうである。



それに漆黒の髪と切れ長の銀の瞳を持つ黒の執事服を着た青年が続いて発言する。


「ただ下げ渡された料理の方がやっぱり質はいいんですよね。だから沢山の物を少しだけ食べるのがいい主の条件だと言われてますよ。」


「身分が違えば常識も違うんですね……。」


平民であるリーニャには良く分からない遠い世界である。


「ところであのぅもしかして日暮さんですか?色的に。」


「良くわかりましたね、改めまして日暮と申します。」


「あぁ、よろしくお願いいたします。私はリーニャです。」

「……。」


「そしてこちらは料理長の紅蓮さんです。」


「おう、よろしくな。」


「敬語を使いなさい、お客様ですよ!」


「まぁまぁ、いいじゃねぇか。」


「……はぁ。乱暴な上に馬鹿で申し訳ありませんね。」



「はぁ、あの…大丈夫ですよ。」


「良く言うぜ、乱暴なのはてめぇだろ?まぁ、何か欲しいもんがあれば日暮か俺にいいな、すぐに作るからな。」


「「夜明けが。」」


「えっ!? 」


「……。」


「飛ぶのが上手すぎるせいで教える仕事がまわってきて料理人の仕事を追われただけですしねぇ、本人心底嫌そうですし。」


「……ハイスペックなんですね。」


「料理作るスピードなら俺よりはぇーしな。味も保証するぜ。」


「まぁ、とりあえず取り分けますね。」


そういって短い前足……いや手にカトラリーのナイフとフォークを持ち大皿前をパタパタ飛行しつつ素早く取り分けていく。

他にもお玉などが宙を舞っている。


「「……器用な。」」


「なんですか? 」


「いえなんでもありません……いただきます。」


「……いただく。」


「まぁ一杯作ってありますからどんどん食べていって下さい!私のおすすめですよ!」



そして皿を持ちリーニャとシンの前へてくてく歩きそっと皿を置く。

皿に入っていたのは茶色いドロリとした液体大きな野菜やお肉がところどころに浮いている。


「あのーこれはなんですか?なんか怖いんですけど。」


泥みたいな見た目なのでちょっと引きぎみにたずねた。


「南の国のカリーと言う料理を私たちにも食べやすいように料理したカレーです、ご飯に良く合うんですよね。」


「へ、へぇ……。」

「……。」


「とりあえず食べてみてください!」


「うぅ、はい!」

そーとスプーンをカレーにいれそっとご飯の上にのせ、グッと目を閉じて一気に口にいれる。

目を閉じて耐えるような表情をしていたのは一瞬である、すぐに花の綻ぶような笑みを浮かべ二口目を食べ始める。

「ふぁいしい。」


「それはよかった、シンさんどうで……うわぁなにやってるんです!? 」


レイユエが見たのはシンのカレーでどろどろになった手である。


「……うまいが食べにくい。」


「いや、カトラリー使いましょうよ!」


ここまで流してきたレイユエが初めてのツッコミをいれる、リーニャはツッコミをレイユエがいれたことに固まっているようだ。


「ユエさんってツッコミできたんですね……。」


「うわぁリーニャさんがおかしくなったぁ!?」


「……。」

モソモソとシンは食べ進める。


「ってだからカトラリー!」


「使い方が分からない……。」


「じゃあ、私が食べさせますから!フィンガーボールで手を洗ってくだ……ってなんでフィンガーボールの水が減ってるんです!?」


「飲んだ。」


「フィンガーボールの水はは食後に指先を洗うためのものですからね!」


「てっきり飲み水かと思ってました、飲まなくてよかったです。」


「…………。」


貴族との常識の違いを改めて実感し無言になったあと目だけで合図し食べる様式をそっと変更する。


「とりあえず、シンさんは手を出してください。」


「……? 」


そーと手負いの肉食獣のようにびくびくしながら何かあれば素早く動けるような体制で手を差し出す。


「洗いますね。」


その言葉と同時に宙に水球が出現しシンの手についた汚れを落とす。

水が消えると綺麗になっていた。


「……。」


「とりあえず今度食べかた教えますから今回は私が食べさせますね。」

「……。」


「はいあーん。」


「……。」


前ではなく少し横からそっと口に運んでいきシンの口にいれる。


「……。」


「ん?あぁあれですね。はい。」


「食べさせるのうま過ぎません?ユエさん。」


「そうですか? はいどうぞー。」




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