始まりの夢
これはもしものお話。
いや、こうなったかも知れない可能性のお話。
過去かも未来かも現在かもわからない。
幸せだったのか幸せでなかったのかも分からない。
訪れなければ分からないから。
その時にならなければ分からないから…………。
聞こえるのは絶叫。
見えるのは深紅。
赤。
あか。
アカ。
その中で一際鮮やかなその色を纏うのは無邪気に笑う竜人の少女。
彼女のもつ二対の大剣は彼女に群がる者達を次々と切り捨て、真っ赤な花とくぐもった悲鳴を生み出していく。
彼女によって築かれたアカの楽園。
本来ならば異様な禍々しい光景なのだろう、だがこの場にいる誰もがそれを異様だとは思わなかった。
彼女を殺そうとし骸になった者は皆、最期に魅了され動きを止めたのだ、だからこそ彼女は傷一つ作ることなくただただ花を咲かせ続ける。
そこに神聖ささえ感じるのは金とも銀とも呼べるその他の色とも呼べる光のような髪のせいか。
それとも銀に金縁の瞳孔をもつ碧い瞳のせいだろうか。
くるくるとただひたすらに剣を振るう様は、赤く染められてさえいなければ神へ奉納する舞楽のようだった。
「どこー?どこー?」
時折止まり、誰かを探すように周囲を見渡す。
それで求める者がいないとわかるや、またくるくると剣を振るう。
そして終わりなどないのではないかというほどの時が過ぎさり今日も彼女は赤い花を咲かせる。
彼女は幼いままだった。
けれど何事にも終わりはあるもの。
ある日いつものように赤い花を咲かせていた彼女は両の目で違う変わった瞳の男と白銀の髪の女の二人組の人間がやってきた。
いつもの様に剣を振る少女。
そして彼女は2人と激戦を繰り広げたのち、敗北し膝をつき何事かを言った。
その言葉が何だったかそれを知るものは、幼女と幼女と戦ったその二人だけ。
ただ彼女は最期にも笑っていた無邪気に…いや安心したように。
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「っう……、あっベット壊れてる、うぅやな夢見た気がします。」
──────
「うーん、なんか嫌な夢見たような。せっかくギルドからパートナー見つかったって報告来たのに…幸先悪いなぁ。」
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「最悪…。」
──
これから始まるのは奇妙な運命で結ばれた三人のお話。
では、とくとご覧あれ……。