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旅人助人「魔術師スケウトの旅」  作者: ゴーストサンタ
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第7話 歯「世界」車



カチコチカチコチ、クルクルくるくる、がチャンガちゃん、色んな音がする。


音楽を奏でているような錯覚を覚えるリズムで複合音が流れているが雑音は雑音だ。


 作曲され演奏される音とは比較対象にもならない。


 ガチャッ!・・・カチカチカチ・・・ガチャ!


 今まで同じリズムだった音が何故かズレ始めた。


 戻さないと壊れた歯車を直さないと


「壊れた歯車の所為で他の歯車もヘンテコになってる?」


 直す?早くしないともっとヘンテコになるかも?


 新しいものと交換だね




「ありがとう。これでこの世界は救われた。」

「この輝きはっ!!」

「おおっ神よ!?」


 神はスケウトに感謝し、カーリアの者達は目の前の出来事についていけず歴史の中で度々ヤムトを救っている神の出現に驚き只々祈りを捧げている様だった。


 神の前には魔人から人型へ戻った銀髪の少年シルバー・ローランズがいた。


 彼は彼女を思い出す。助ける為に裏切る彼女の事を思い出した。


 水を飲む。


 紅茶を飲む。


 ケーキを食べる。


 「おいしい」


 水を飲む。


 ロッキングチェアをギーコギーコする。


 時の杖・クリスタル・クロック・アワーは、こんな感じだったはずだ。


 俺を助けたい?ありえない、そんな存在ではない。


 そう答えが出た時、視界の空間が歪む。召喚される感覚と似ているがどうやら空間の引き寄せの様だ。周囲の空間が引き千切られ強引に引っ張られる。この現象を起こしている者は俺を絶対に逃がす気はないようだ。視界に入る世界が変わり星々が煌めく星の外、空のない空間にて出会う。


「何でこんなのが出来るのかな?」


 言葉を発する何かが目の前にいる。次の現象に対して準備を始める。コアシンボル内の五つの属性が混ざり濃縮された魔力が黒リング・ドラゴンリング・オーバーリングに魔力を循環させ増幅させる。介入者の行動に備えて右腕に黒い魔力を纏い今出来る魔法を発現する。


「ん?どうしたの怖いの?」


 目の前の何かが語り掛けてきた。ただ疑問を持って発言しただけで他意は無い様だ。


「誰だ・・・」


 スケウトは疑問には答えず、介入者に問いかける。



「私は世界の歯車・セカイノギア」


 歯車、カラクリや機械に用いられる部品の一つだが目の前に存在するのは人型であり、少女?少年?子供の声を発している。恐怖と言う感情も湧き上がる段階でもないが代わりに疑念と怒りの感情が発露する場面なのだろうと感じた。


「世界の歯車・・運命を操る者と言ったところか?」

「私は壊れたものをなおしてるだけだよ?」

「なにっ?」


 世界の歯車・セカイノギアの話は簡単だった。

 壊れたものをなおす。今回に関しては俺を使いこの星を直すと言う事だと思った。


「お前、壊れてるから早くなおすか交換しないと・・」

「どう言う意味だ?」

「色々おかしな歯車がいっぱいあったから外して分解し易くしたの」

「狙いは俺だったか―」


 スケウトは敵と認識後に跳躍・セカイノギアに近付き右腕に纏い魔力を集中させていた物を至近距離からぶつける。零距離ではなかったが今出せる最大を解き放ったが、セカイノギアには届かず目の前に突如出現した複数の白・黒・銀・エトセトラ・・の色取り取りの歯車達に防がれてしまった。


「フフフッ、弱ってる弱ってるピヨピヨだね♪」


 セカイノギア・攻撃して本体の姿が見えた。宙を舞う歯車達の隙間から垣間見た黒髪の縦ロールに三つ編みと言った滅茶苦茶な髪型で黒いドレスを着てサンタクロースが履くような長靴の少女が無傷で楽しそうに笑っている。


「オーバーリング・オーバーゲート!」


 魔力循環増幅器・リング・アミュレットやタリスマンの様にお守りや加護を与える物に近い物だがオーバーリングは一定量の魔力を注ぎ込む事によりオーバーゲートを出現させ所持魔力を倍以上に発動中の魔法の威力も強化する事が出来るが、現在のスケウトの状態では先程使用した魔力を元に戻しただけである。魔力があれば重ね掛けも可能ではあるがオーバーリングに貯蔵されていた魔力ストックを利用しゲートを使用した為もうストックはなく改めて魔力をリングにて溜め始める。


「あれ?戻っちゃった・・」

「順番が逆になったがクリス・・いや、俺の歯車に何をした?」

「ん?あぁ~」


 歯車が歯車で遊びながらスケウトの話を聞き思い出したように語り出す。


「壊れた歯車って、それ自体を交換するの変形してたり物が詰まって動かなくなったり大変なんだ」


「だからね。壊れてない子を外してあげると隙間が出来て交換しやすいの!」


「そうか・・・行くぞっ歯車!!」


 スケウトが人の心を全て捨て去っていれば、セカイノギアに勝つ事が出来た。


だがスケウトは、まだ人であった。彼の中の感情が無ければ目の前の脅威に立ち向かわず体勢を立て直しただろう。しかし、彼は―旅人助人―であったのだから引き継いだ呪いは終わりそうにない。


「クラウッ!!」


スケウトは纏っていた魔力から大きな魔力結晶に目を引く仮面を取り出して被り仮面の力を即座に使用した。仮面の口の部分にあたる場所が亀裂が入り割れる。


その瞬間、セカイノギアの周囲に浮遊していた歯車達が喰われた。

物質の魔力変換の一種なのだが、スケウトが歯車を魔力に変換して吸収した事になる。

一飲みにされた歯車はただ静かに消滅し食べ残され食い散らかされた歯車達は悲鳴に断末魔に似た金属音を発している。あれも運命を弄ばれた成れの果てだと分かると感情が暴走した。


「ノギアッ貴様っ!!」

「私はセカイノギアだよ?」

「貴様を世界だとは俺は認めない!!」


吸収した歯車達は抵抗せずスケウトの魔力となった。反発など危惧していたが歯車達はそれを望んでる様に吸収されていく。悲劇・悲痛・悲哀の感情が流れる。そして、

―お前が認められていないのだよ。旅人助人・サクシャ・ドウジン―



声が確かに聞こえた。そしてスケウトは輝く星々の光に貫かれた。




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