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旅人助人「魔術師スケウトの旅」  作者: ゴーストサンタ
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第1話 他所為の希望


 黒い涙が流れ続いていた。他に気づく者はこの場にはいない。怒り?恨み?ここは戦いの場所なのか?戦う力はある。力を合わせてここまで来た。


『―私は彼女を助けたい―』


 その言葉を聞いてしまっていたとしてもまだ分からない……助けるという事が、自分が助けたかったのはただ一人だったのに未だに助けられていない自分に目の前にいる存在達をどうすれば助けられるのか力を合わせてくれている仲間が教えてくれる訳じゃない、だけど助けたいと強く心に語りかけてくる。


 敵として仲間として友として力を合わせてくれている存在達がただ一つを願った。力を与え願いを叶えると言われた存在達が「人」、一人の心に叫び訴え、その心を破壊した。


 その想いに体を支配され力任せに二つの存在の衝突を防ごうと空間を跳び力の衝突を自身が受ける。





 体が崩壊するほどの衝撃を受けるはずだった―




 目の前が歪み景色が変化していく場所が変わり目の前には西洋服やドレスを着た人々が目の前で驚いた顔、恐怖する顔、不安な顔をした者ばかりだった。状況の確認は空間と時間を把握することによって大体のことは掴むことはできるか?と考え始めたとき目の前にいた女性が話しかけてきた。


「貴方が神様?」

「違います。」


 その言葉を聞くと落胆する者、泣き出す者、緊張が緩み笑い出す者、意味が分からなかった。まぁ目の前に全身鎧で何故かずっと体が黒い炎の様に燃えている存在が目の前に出てきたらこんな反応になるのは当たり前だが、それよりも聞かなくてはいけない事がある。


「・・・神に何か様なのか?」


 問い掛けに対して彼らはまず謝罪し神の召喚について話し始めた。


「私は、この国の姫巫女フィーリア・・貴方を召喚した者です。この度は申し訳・・」


「・・・・(疲れた)」

 やっと最後の話になるようだ酷い有様を見せてしまった為その場にいた全員から謝罪を頂いた、もう一時間経ったのだろうか?確認したら二十分ほどだったようだ。貴族のような話し方のせいか非常に疲れる。


「我がヤムト王国は今、隣国カーリアと戦争状態いえ・・一方的な虐殺と略奪が行われている状態です・・・」

(一方的・・・?)

「この状況を覆す力をヤムトは持っておらず神の力をお借りしたいと言う事だったのですが…」

(力量差?)

(まぁそんな所であっているわ。この国も隣国も仲良くやっていたみたいだけど仲が良いと思っていたのはこの国だけだったみたいだけどね。)


 時間を知り歴史を知りこの世界をみた、時の杖クリスタル・クロック・アワーどうやら調査、魔法での解析が終わったようだ過去から現在の歴史など情報を要点だけ流し込まれる。多少頭痛のような感覚があるが一瞬で収まりこの世界の知識を得た。


「――――そうか・・」

(で、旅人助人はどうするの?)

(・・クリスター五月蝿い)

(頼ってくれたからそのまま話していただけよ。負担なら消えるわ。)

(ああ、ありがとう)

(ええ、ごめんなさい)

(・・・・)


 僅かな時間の会話も終わり目の前の現実に話しかける。


「それで貴女達はどのように助かりたいんだ?」

「え!?」


 当然の反応としか思わなかった。望んだ神の呼び出しに失敗したのだからもうこの国も滅ぶ。そう考えていたのだろう、驚きと少しの笑みを見る事が出来たがその場の者の全ての不安に思う心は晴れる事はないだろう。彼女らにとっては、まだ目の前の存在は現時点で正体不明の存在に変わりないのだから…


――だから彼は幾千回、幾万回、続けたであろう自己紹介をする――


「俺は、旅人助人…ただの旅人だ」

「旅人様?」


 彼は問いかける。間違わない様にまちがわないようにマチガワナイヨウニ・・・助けを求める者たちが求めている救いを、救われ方を問いかける。


 助けるための破壊 助けるための再生 極端に考えればどちらかである。しかし望まれないプロセスというものがある。望まれない破壊の結果で助けたとしても絶望する者もいる。純粋に命を助けて憤怒する者もいる。何故そんな事が起こったのかは理解していた。


 彼の心は力を得るとともに壊れてしまっていたのだから彼には分らないのだ、助けられる者の気持ちが分からない理解ができない判断できないのである。


 協力する話をすることになり立ち話が終わり応接間になるのだろうか?王族にしては小さめの部屋に通され、さっそく本題に入ろうとするのだが―


「旅人様、この度は誠に申し訳ありませんでした。」

「謝罪は必要ない……それと俺の名はスケウトだ。」

「!?失礼致しました。スケウト様」


 姫巫女のフィーリアと付き添いが二人いるのだが何故かこの者達だけには睨まれている。

眼が悪い?目つきが悪いだけ?極度の緊張状態?などと考えていたが、目の前で姫巫女と話をする時は表情が明らかに違ったので何かしら警戒されているといったところだろう。


「・・・それで姫巫女フィーリア、この国をどう助けてほしいんだ?」

「それは‥この国の防衛をお願いしたいのですが―」


 こう言った場所で話・交渉なら最初は無理難題をさらに大きくする位言っておく方が通常の話術・交渉術だと経験してきたが神に祈り願う状況の十代の少女にそれは無理かと歯切れの悪い返答を聞きながら考えていた。


「それで、貴女達が救われるのなら構わないが本当にそれだけで良いのだな?」

「はい―」


 どうやら姫巫女は何かを隠している様だが?


 話せない。


 何故話せない状況なのか?ならば、その原因は信仰する神でもない者を頼る事か?防衛は望むと言う事だが・・?そんな風に考えていたのを察してか時間を止めて知識の主が意識の狭間で声を掛けてきた。


(答えが欲しいかしら?)

(必要ないぞ、クリスター眠ってろ‥)

(う~ん?今は読書の気分だから!またね♪)

(なんなんだ…)


 考え中に横槍を入れる存在が消え落ち着いて現状を考え直そうと視線を話し相手に向け、ふと思った。


「…姫巫女・・王族・・か」

「えっ?」

(声が・・まぁいいか・・)


「ふむ、すまないが姫巫女フィーリアよ。貴女に頼みがあるのだが聞き届けて頂けるだろうか?」

「頼みですか?」


「防衛の話なのだが出来れば、どの様に動くか?など詳細についても話しておきたいのだが?」

「それでは、この国の騎士や兵を・・」


・・・王族・姫巫女・自身を召喚した存在だが、ただの少女に過ぎず女帝の様な裏があると言う印象も受けない。(隠してるなら大物だろうが)戦争らしき事も無かった今までのこの国ヤムトなら、この子はお飾りだったが別の形でまだお飾りであろうとしていると言う事なのだろうな。


「いや、俺を召喚した姫巫女フィーリアとだけで交渉と契約がしたい」

「私とですか?ですが戦などの話は」


 話を逸らそうと口ではそう言っているが目は真っ直ぐこちらを力強く見つめている。先程と違い始めたのはそれだけではない何かしら変化あると思っていたが鋭い眼光が刺さる。


 二人の従者・・・やっぱりこの二人邪魔だな。それと―


「悪いが姫巫女よ。何か勘違いしているのではないか?」

「勘違いですか、どう言う事でしょうか?」


 ここで自分はただ事実を言えば良いただそれだけの話だった。


「姫巫女フィーリア、貴様の信じる神ではないが、貴様を救える。」


 こちらの伝えたい事は伝えた。これでいい面倒な事はこれで終わりだ。


 姫巫女フィーリアは、少し驚いたようだが予期していた言動だったのかその言葉を聞いて笑顔で返答しようと口が動きかけた時、



「ウォォォッッーー!!」



 スケウトは銀色の一閃の攻撃を受ける。



「何をっ!?」

「・・・・」


 三者三様に従者の行動に驚く姫巫女・鎧諸共切り裂く従者・ただ状況を観察している従者


「――どうして…ガルダ」


 先程まで話をしていた存在は従者の剣の一撃により傷口から消滅していき、やがてその姿は消え去った。


「フィーリア様、失礼致しました」

「・・・・悪魔消えた」


 姫巫女は二人の考えを落ち着いて考え自分の考えとは違う者達に行動の理由を知る為に言葉を発する。


「ガルダ、リンダ、悪魔とはどういう事ですか?」

「最初から異質な者だと思っておりました。召喚時に紛れ込んだのでしょうな…」

「やっぱりガルダの剣で倒せた。弱いなら救えない。嘘つくのはやっぱり悪魔だと思います。」


 姫巫女フィーリアの問いに目の前に移動した仕込み杖の様なステッキを持ちショートの黒髪に黒一色の執事服を着たガルダとセミロングの黒髪にシンプルなメイド服を着たリンダが返答した。


「スケウト様が悪魔…」


「まぁ見た目が完全に悪魔騎士っぽいのは言い訳できないわね。仕方ないので今後は私が応対致しますね。姫巫女様♪」


 部屋に突然声が響き悪魔騎士がいた場所が輝き出し、そこから金色の髪に紺碧の瞳、白いワンピースに太陽を模ったような杖を持った少女・邪を打ち滅ぼす聖なる杖・セイントが消失したスケウトの代わりにソファーに座っていた。


「無礼者には無礼者であれ?小さき者には目線を合わせろだったでしょうか?もし挨拶をしたいというのなら先程の挨拶をガルダとリンダと言ったか?貴様らだけでなく、この国の国民総てに返礼致しましょうか?」


 暫しの静寂、耳をすませば窓の外から鳥のさえずりが聞こえる。この時間がずっと続けばいいと思っている人も少なくはないと思う。だがこの状況では継続することはなく断ち切ったのは呆然としている従者ではなく小国とはいえ王族の姫巫女フィーリアだった。


「ガルダ、リンダ出て行きなさいっ!!」

「フィーリア様それはっ!?」

「・・・っ!!」


「護衛も必要ありません。この部屋から遠ざけてください。」


 如何やら話し合いは終わり従者達や部屋の周りにいたであろう護衛も部屋から離れて行ったようだ。私も帰ったらクリスターと剣でも使って体を動かして遊ぼう!そうしよう!!


「スケウト様、従者の無礼な行い我が身をもって―」

「オッケー!許します!!この話は終わりです。そして私はスケウトじゃなくてセイントよ!!セイで良いわよ。今後とも宜しくフィーリア♪」


 心内を隠す者には心が壊れるほどのフレンドリー?な対応で心を壊してきた聖なる杖であり他の杖に干渉しまくって、ろくでもない事を遣り抜いた存在ではあったが現在では丸くなって今のような口調になっている。


「寛大な対応に―」

「ムムムゥゥーーー」

「セイ様?」


 唸り声をあげるセイにフィーリアが疑問を持ち名前を呼びかける。


「ねぇ、フィーリア?従者も人払いもしたんだしもっと気楽に話してくれない?」

「気楽にですか?」

「そうそう!貴女はこの国の王族でも私はこの国の者じゃないし気を張る必要はないのよ?」


 困惑する姫巫女にセイは言葉を続ける。


「話して、フィーリア貴女の―」

「駄目です。セイ様、私の願いは叶えてはならないのです。」


 従者がいなくても話させないこと王族か人としてなのか彼女にとって黒い話になってしまうのだろうし初対面なら確かにこれ以上は無理かな?と思案するセイだが実の所、連なる杖の力により大体の把握ができており現状にツマラナイと感じながらも人の理性を感じ嬉しくもあるといった微妙な状況であった。


「では、少しずつ決めていきましょうか?」

「決める?」

「スケウトも言ってたでしょ?」



「―交渉と契約の話―」





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