第10話 ~ ソラが見る空 虚空 ~
「私をっ!!馬鹿にするなぁぁぁっーーーー!!!!」
ソラが手から放った魔法弾がスケウトに直撃し、その衝撃で体が空中へと飛ばされた。直撃とはいえ牽制の一手であり続けて追い打ちをかける。
空中に投げ出されたスケウトだがソードロッドと共に体制を整える為、火炎放射・ブレスの反動を利用した。荒野の真ん中で遮蔽物がないこの場所で適切な回避行動だけが命綱だが、その着地までの僅かな時間それを憤怒の感情を剥き出しにしている彼女が見逃すはずがなかった。
「まだっ!」
魔法弾を放ちながら魔法で空中に足場を形成し跳躍しながら剣のように手に持った鋸を構え溢れ出る感情のまま強く握りしめる。
「ソーラーブレードォォーー‥‥‥!!!」
攻撃魔法を放った直後に体を嫌な音を出しながら回転させ、その回転と勢いと共に空間を切り裂く大きな鋸は刃を伸ばし変化してゆき、その刃はスケウトを捉えスケウトは死に至った。
一瞬の出来事であったが宙に飛ばされつつもスケウトはソッドで攻撃を確かに防いだ。
だがソラの一撃は上空から地に向けて叩きつけられ、そのあと鋸の本来の使い方の様に刃が短くなり始め元の長さに戻りながら対象物を空間ごと切断した。
―体は痛い―
―久しぶりに思いっきり動かしたから―
―こんなに必死になったのは、あいつ以外初めてだな―
―でも、勝てたのは嬉しいな・・私は勝ったんだ!!それで杖も―
「ハァハァ・・・あれ?」
闘いでの辺りの土煙が収まり出した頃、金髪に赤いコートを着た青い眼をした少女の目前、そこにあるのは自分の行動で出来た結果だった。
少し時間が経っただろうか少女は言葉を発するまで思考していたのだろう結果がどうなったのかを目で確かめた後も少女は思考し続けていた。少女は口を開き始めた。それはこの現状の再確認をする様に始まった。
「私がやったの?そうか私が殺しちゃったんだ・・」
「ソラ・・?」
様子がおかしいパートナーを心配したのかイエアが声をかけた。
「ハハッ、ハハハ、ハハッ!!・・・・・」
「私何を?あいつを追いかけてただけなのに!!」
「私はわたしはワタシハッ!!!・・」
「何をしてるの・・何をしたの?・・・・」
「殺した・・・えっ、殺した?私が?」
「何で!・・違っ!!違うっ!!私は殺したかったわけじゃ!!」
「うぅっ、あぁ・・なんで・・いやあぁあああぁぁぁーーーーーーーーー―――――・・・」
少女の叫びは自分の名と同じ空の赤色に響きその叫びに冷静さを取り戻したのか感情を失った様でもある少女は、その場を離れる様に歩き出した。
赤い髪の少年、結果の赤、赤い空、少女は赤い世界を歩き始め、その後ろを英国淑女のような装いの女性が少女を心配しながら歩幅を合わせ歩き始めた。見慣れた光景、人が力を手にして狂って行くその姿を―
全てが赤くなるその二年前 魔法学園 初心クラス教室内
「ソロネ・ソルバーン十三歳です。得意な魔法は炎の魔法が得意です。ここに来るまでは・・・」
私は出身や、どんな事を学んできたかを簡単に説明した。
(そして、完全無欠の金髪美少女である!えっへん!)
「皆さん宜しくお願いします。」
私の自己紹介は無難にこなした。魔法学試験に何の問題も無く合格し魔法学園に今年から入学。私は私に与えられた座席に腰を下ろし他の者の自己紹介を聞いていた。こんなところで他者を牽制する必要もないし、かといって下手に出る必要もない。ほかの学生達も無難にやっているようだ。
そんな中、変な奴がいた。
「フォルネ・クロティアトと言います・・得意な魔法はありません。宜しくお願いします。」
(七三の背中まである長い黒髪で、どんな顔か見えない…)
なにかしら才があるか学に優れているかで、この魔法学校に入学できる。
だがフォルネと言う生徒は後者の様な言い方をしたのが少し気にかかった。
(勉学で入った人かな?ふぅ~ん・・)
入学当初は、その程度の認識だった。
まずは学校の事を知る為に数日は退屈な校則などの説明、教本各種の配布等が行われた。よく言う魔導書・魔術書に聖書やら薬学など興味が出そうな物や、そうでも無い物も勉強する事になる様だった。そんな気分が浮き沈みしたその後、学校施設などを見回っていた時、見知った人物が視界に入った。
「ん?あれは」
そこにいたのは消極的な自己紹介をしたフォルネ・クロティアトだった、配布された本を読みながらユラユラと歩いていた。彼女も学校に慣れる為ここにいたのだろうか?
「ねぇちょっと危ないわよ!?」
「大丈夫だから」
彼女は慣れている様にソロネに返答した。それは機械的な返事で感情が全くなくソロネは少しムッとしたがフォルネと言う人物を探ってみる事にした。
「ねぇ、フォルネ・クロティアトさんよね?」
「ええ」
そのソロネの言葉にも彼女は機械的な返答を繰り返した。
「じゃあ今までどのくらい本を読んだ?」 「覚えてないわ」
「大体で良いんだけど」 「数えてない」
「好きな本は?」 「ない」
「じゃあなんで本を読んでいるの?」 「本は読み物」
「その本、面白い?」 「マテリアル調合に興味が出たかしら」
「それにしても本を読みながら話せるって器用よね・・・私、邪魔かな?」 「大丈夫」
「そう?」 「ええ」
「へぇ~でも人付き合いは不器用なのね」
少し嫌味を言ってやった。だが彼女は何も変わらず「そうね」そのあとも相変わらずな返答が続いた。嫌味を言ったのにだ。言われ慣れているのか自覚しているのかそれともこの子は何も感じないのだろうか?
これがフォルネ・クロティアトと言う人物に興味を抱く、きっかけであった。
その翌日から魔法学の室内授業がスタートした。
「その本、面白い?」 「マテリアル調合に興味が出たかしら」
まだ始まったばかりの授業の為、フォルネが言っていた教本の中盤にあり薬学の知識もいるであろうマテリアル調合をするのは、まだ先になりそうだななどと考えながらフォルネが座っている席に目をやったがそんな事を気にしている様子は無く彼女は、何時もの如く教本を読んでいた。
午前の授業が終わりソロネは昼食時に彼女を誘ってみる事にした。
その彼女は相も変わらず自分の席で本を読んでいた。
「ねぇ」 「なに?」
「ランチにしない?」 「いえ」
「ランチ嫌いなの?」 「昼は食べない」
「ここの学食はなかなか美味しいのだけど」 「そう」
「一緒に行かない?」 「行くことは可能」
「じゃあ今日は何を食べようかなぁ~」
ソロネは、そんな事を言いながら横で本を読みながら歩くフォルネを横目でチラチラ気にしながら共に食堂に向かっていた。やっぱりこいつ変な子だなと思いながらも面白いので、もう少しだけ一緒に行動してみようと思っていた。
「ねぇねぇあれって・・」「えぇ?そうなの」「そうは見えないけど・・でも言われてみれば・・」
「う~ん、う~ん違うでしょ?」廊下を歩いていると上級生や同じ新入生からも微妙に聞え辛い話声や変な視線を感じた。確かに隣の奴は変な子だし自分も優秀な部類に入るとは思うが新入生が、こんなに目を付けられるって異常事態な気がする。これも探ってみるべきか・・?
そんな事を考えている間に食堂に辿り着いた。と言っても教室からは割と近いので辿り着いたと言うほどでもないか?その代わり実習棟などは安全性の為に座学教室とは離れている。お腹が痛くなった場合、遅刻は確実だ・・・まぁそんな事はともかく御飯です。
基本的にバイキング方式なので美味しい物は無くなってしまう可能性が高いのである。だから昼休みは戦争!!と言うイベントが・・・ごめんなさい。残念ながら、この学校には、その様なイベントは存在しない・・基本的に量は普通なのだが、この学校は女子校である。大食な方もいるが一部の人達なので学校としては人数分、歴史ある献立で丁度良い量を作られていると言った感じである。無くなってしまっていたとしても厨房の方に言えば手際良く、ちゃちゃっと作ってくれたりもする。なぜ新入生の私がここまで詳しいのかと言うと・・・まぁ説明はともかく御飯食べたい。
「よし、オムライスを食べよっと♪今日はデミグラスで~っと♪」
「じゃあ私は席を取っておくわね」
今のソロネにはフォルネの言葉は聞こえてないのかルンルン気分で料理が保温されている容器の蓋を開けて手に持った、お皿の上に乗せデコレーションしてゆく、この後それをすぐに崩して食べるのでデコレーションをしても意味はないのだが、これは一種の料理人の気分を味わうと言う事をソロネが好んで楽しんでいると言う状況である。まぁそれはともかく
御飯食べたい。
「じゃあフォルネ・・ってフォルネどこよ?」
辺りを見渡すとフォルネがいなくなっていた。まさか教室に帰ったのかと思って探していると異質な光景が目に入りフォルネが見つかった。少し安堵し少し怒りを覚えソロネはフォルネが座って食堂という場所で本を読んでいるテーブルまで近づいて行った。
「フォルネ勝手にいなくなってびっくりするじゃない」
ソロネは声を抑えながらも少し語気を荒げた様に言葉をかけた。その言葉を聞いて少し驚いたのかフォルネが本から視線を外しソロネを見上げた。その時のフォルネの表情は少し驚いたと言った顔をしていた。
「ソロネ・・あなた聞こえてなかったの?」
彼女の表情や言葉にソロネは一瞬で理解した。自分で誘っておいてと言う事・・・いやいや時間的には数分も掛かって無かったはず悪意は無かったのだが、ほったらかしにしてしまった自分は一体・・・などと表情を変えながら考えていたら
「ふふっ、貴女って本当に面白い人ね」
!?面白い子に面白いって言われてしまった。いやいや私より貴女の方が面白いから・・何だか疲れて来た。
「立ってないで座ったら?冷めてしまうわよ?」
フォルネに促され気疲れしながら席に着いた。そうするとフォルネは持っていた本を閉じテーブルの隅に置き「じゃあいただきましょうか?」とソロネに言葉をかけた。
ソロネがその言葉で前にいるフォルネに目をやるとテーブルの上にホワイトソースがかかったオムライスがあった。
「んっ?」
自分のデミグラスソースのかかったオムライスを見てから
「フォルネあなた昼は食べないんじゃなかったの?」
と気付いた時には言葉を発してしまっていた。彼女が食事をしたからって別に誰が迷惑するはずもないのに無意識から出た言葉に自分にびっくりしていた。
その言葉を聞いたフォルネは少し微笑み。
「せっかく誘ってくれたのに私が食べないのは悪いからそれに・・」
「それに?」
ソロネは聞き返してフォルネが何を思い考えているのかを知る為に言葉を待った。
「・・貴女を見ていたらオムライスが食べたくなったのよ」
「はぁ?」
フォルネ、彼女が言っている意味が良く分からなかった。私を見てオムライスを食べたくなった。私は決してオムライスを勧めた訳でも広めようとしている者ではないハムの人ではないし私にそんな力は無いはず、だが彼女がそう思ったのなら、そうな訳で・・・もういい、御飯を食べる。(胃袋の声)
「はぁ・・・もう食べましょ、本当に冷めるし」
ソロネがそう言って二人で祈りを捧げる様に手を合わせ
「いただきます。」「・・・・・・」
赤と白のデコレーションされた黄色い物体を二人は味わいながら食べ始めた。お腹が空いて美味しいオムライスを食べていて気づかなかったがソロネがフォルネの方に目をやると、とても楽しそうな顔をして食事をしていた。こんな顔が見れたのなら(誘って正解だったわね。)と思った。
「ええ、ありがとうソロネさん」 「心を読まれた!?」
フォルネは再び驚いた顔をしていたがこう言った。
「・・・ソロネさん貴女考えている事が口に・・時々出ているのだと思うけど」 「・・・・・」
絶句だった。
―絶句した日の夜―
ソロネは寮のベットで、「ウキャー!いつから・・いつからだぁっー!!」と掛布団の中で小声で叫び恥ずかしさと戦っていた。
その隣で同室の同級生が、なんだこれという感じで唸る白いオムレツ状態のそれを見ていた。
「ソロネ・・なんなの?」と黒のセミロングヘヤーで黒眼のパジャマ姿のツェーヴァリスフォン・エレノワールさん(クラスリーダー)が聞いてきた。
「はっ!!もしかして聞こえてたフォン?」
「・・・フォンで定着なのね・・」
今まではツェーバ、ヴァリス、エレノワさんなどと呼ばれてきた事が多かったのだが、同室の子は何故かフォンと呼ぶようになりすぐ普通の呼び方になるかと思っていたのだがフォンと呼ばれて一週間以上経っていた。残念ながら同室の子ソロネの中では私はフォンという呼び方がしっくりくるのだろう。まぁ確かに今から他の呼び方にされたらそれはそれで気持ちが悪いのでフォンで良いと思った。
と、言いますかフォンという呼び方で呼ばれた事が無かったので新しい愛称と言う事で考えればなんだかちょっと嬉しい様な気がする。訳がない。でも、私は心の広いレディーなので許すのであった。(クラスのリーダーで淑女)
「とりあえず、何を唸っていたか分からなかったけど、で・・なんなのよ?」
「フォン・・それは言えないわ」とソロネはフォンから視線を外し窓の外を見ながら愁いを帯びた表情をわざとらしくした。
ツェーヴァリスフォン・エレノワールは少しイラッとしたが大人なレディー淑女なので許す事にした。(リーダー大淑女)
「はぁ~、じゃあソロネ早く寝なさいよ」面倒くさそうに言ってフォンはベッドの中で再び目を閉じた。
「フォン冷たい・・私の事なんかどうだっていいのね。好きじゃないのね!?」
「ええ、あんまりね」
「ぇ・・・・・」
第二の絶句だった。
「・・・でもまぁ、大切な同室の子って位には想ってるわ」
「ウキャ~!!わたしも~おやすみ~♪」
「ええ、お休みなさい・・はぁ~」
部屋の明かりを消し暗くなった部屋の中の音は外の風の音が聞こえたりするだけになった。
ツェーヴァリスフォンさん・・・少しずつだけど硬いのが無くなってきた仲良くなれるといいけど・・・
(ソロネ・ソルバーンさん・・・学校とは違い過ぎるけど、どういう人物なのかしら?掴めない・・・)
明るく接すれば堅い人でも仲良くなれるってママが言ってたけどハズレかしら・・・同室だし頑張らないと…よしっもう寝よっ!!
そんな母の言葉を思い出しながらソロネは夜に身を任せた。
その隣のフォン・・完璧な淑女レディー・ツェーヴァリスフォン・エレノワールさんは難しい顔をしながら困った状況を悩んでいたのであった。
(・・・ソロネさん・・全部聞えているのだけど・・・どうしよう?普通に接して欲しいのだけど・・また明日にでも話すしかないか・・・)
複雑な思いが発生しているが眠気とともに擦れ行く
そして夜が濃くなる。
―同日夜―
フォルネ・クロティアトは部屋で本を読んでいた。
眠くなってきたのでベットに入り寝た。
その隣では同室の金髪琥珀色の眼リラタイト・ディペラがもう既に眠りに落ちていた。
―その数時間前―
フォルネ・クロティアトは部屋で本を読み始めていた。
「 ?」
フォルネ・クロティアトは部屋で集中して本を読んでいた。
「 ?」
彼女の口が動いていた。フォルネは簡単な質疑応答の場合、口が勝手に答える事がある。これは彼女が本ばかり読んでいた生活の中で身についてしまった癖であり特技で弱点であった。だが、簡単な質疑応答でも自分の口が勝手に動いているのである。自分でも本に集中しているとはいえ難しい質問や質問攻めをされた場合、癖・特技と言えど思考回路を無意識下で使うのも限界があり本の世界から現実世界へと引き戻されるのであった。意識が戻ったフォルネが声をかけ続けていた人物の顔を見る事にした。
「~でね。不思議でしょ?私びっくりしちゃったんだぁ~それにしてもイルミ先生面白いよね。魔法も上手過ぎだよね!!~~!?」
フォルネは要らない情報を聞き流しながら笑顔で楽しそうに話す同室のリラタイト・ディペラの方を向き一旦机に置いた本を読むことにした。
(それにしても、リラさんやソロネさん・・この学校には変な人ばっかりね。・・・)
(きっと私も―)
元気な者も疲れている者も全ては夜と眠気が終わらせる。
―絶句した翌日―
昨日ソロネは色々悩んでいたが前列にいるフォルネの背中を見ながら引き続き今日も悩んでいるようだ。はぁ~近くで異様な雰囲気を感じる私の事も考えてほしいのだけど、そんなに気にしなくてもいいのかしら?同室の子とは言えプライベートは大切だし、あまり深く切り込んでいくっていうのも違うし
・・・・あ!今の説明聞き逃した。くっ・・私とした事が後で先生に聞かないと、いや難しいところじゃなかったしリラに・・・あっそうだ、ここはあえてスピードアンサーと噂されるフォルネさんに聞きに行こうソロネがあの調子じゃ何かと面倒だし私が気にする事ではないだろうけど私は何気に気配りができるレディーなので仕方ない。
授業が終わり休息の時まだ授業疲れが残っている頃ツェーヴァリスフォン・エレノワールは、まだ一度も話した事のない彼女に声をかけた。
「ねぇフォルネさん?」
「はい、なんでしょうか?」
「・・・・・・」
この時ツェーヴァリスフォン・エレノワールは違和感を感じたのだが、それが何か分からなかった。(今現在、私が持っている情報として彼女の名はフォルネ・クロティアト・・・少し変わった方で、本をよく読んでいて、それで・・・)
「あの何か間違っていたでしょうか?」
「えっ?」
フォルネは無言のまま目の前に立つ彼女に対してそう言い、その言葉を聞いたフォンは困惑が隠せなくなり気付いた時には口から勝手に言葉が出てしまっていた。
「やっぱり慣れない事はすべきでは」
「フォルネさん、ありがとうございます。」
「えっ?」
フォルネの言葉を遮ったフォンからの感謝の言葉は今度はフォルネの口から勝手に言葉を出させてしまっていた。
「それと、ごめんなさい。違和感が・・ちょっとね。」
「やはり、そうでしたか・・・」
その光景を見ていたソロネは苦悩していたことを忘れ珍しい組み合わせに興味を示したがソロネはある事に気づく。
「あぁなるほどね、そう言う事?」
ソロネは立ち上がって歩き出した。そして、座学教室の扉に手をかけて廊下に出た。
「ソロネ?」
「どこ行くのよ!?」
授業が始まる時刻だというのに教室から出て行く彼女に教室内の生徒たちの注目が集まる。ソロネは友人たちの方に振り返り彼女の思いのままに口を開いた。
「ちょっと面倒だけど用事思い出した。」
それだけ言うと彼女は授業放棄を行い廊下に出て行った・・・
「面倒な用事って何よ?」
「彼女、大丈夫かしら?」
「ソロネちゃん」
ツェーヴァリスフォン・エレノワール
フォルネ・クロティアト
リラタイト・ディペラ
の三者はざわつく教室内でいつもと雰囲気が違う彼女に不安を感じていた。
「私、超目立ってたわね!!」
そして、心優しき友人達に不安を感じさせた当の本人は珍しい事をして注目を浴び満足していた。そのまま廊下を歩いていると前から授業に向かう先生に気付いた。
イルミ・ジェノワードは基本的に魔術を教える。
「どこに―行くので―すか?」
何か力の行使によって姿が2重3重に見え実体が半透明に見える。足音は聞こえるが音がずれて聞こえている。不気味だが彼女はいつもこんな感じだ。過去に色々と失敗したらしいが理由は誰も知らない。知ってはイケナイ気がする。
「ドコニ、イクノ、デスカ?」
2度目の質問が先生から来た。3度目のは先生を無視していることに該当して怒らせてしまうかもしれないから私は即座に答えた。
「友達を叩き起こしに行ってくる」
「・・・・・ソウ?」
イルミ先生は良く分かってないみたいだけど雰囲気とノリがいいから感覚で分かってくれたみたいだ。
「いってきます!!」
「いってらっしゃい♪」
そう言って手を振りながら、その場を後にした。最後の言葉の一瞬だけ先生の言葉がちゃんと聞こえた気がした。




