第9話 新たな世界・新たな力・あとナマモノ
セカイノギアによってナオサレ旅人助人スケウトが解放されたのは
《 ― ギア・ジャンクワールド ― 》
なおったはずなのに目を覚ましたらジャンクワールドとは・・・元の世界に戻さないのは、また壊れることを恐れてのことだろうか?周囲はゴミ捨て場のような場所で粗大ゴミ?見たこともない今はもう動かない金属機械の塊や謎の素材の塊に大きな獣の骨などが放置されている。
「ギア・ジャンクワールド・・・」
スケウトの目線の先には大きな立て看板が有り多種類の文字で書かれていた。どうやらここはこの世界の入口なのだろう他にも案内板のようなものがある。ノギアかそれに連なる者の仕業だろうが新参者への案内に関しては最低限やっているようだ。
「さて・・村があるのか?」
スケウトは案内板を見ながら道を定められている気持ち悪さと不穏な気配を感じながらゴミ捨て場のような世界の入口をあとにした。
数人が並んで歩ける広めの道を歩いている。少しずつ道の両脇に木々が生えている間隔が短くなりどうやらこのままいくと森を突っ切る形になるようだ。道を歩き続け誰かと出会うこともなかったが不穏な気配は変わらず感じていた。
(森に入る前に対処するか、それともこのまま村まで無視するか・・・)
その場で立ち止まったスケウトは右手に魔力を集め始めた。
(なにっ!)
魔力増幅のアイテムなどを利用しながら魔法と武器の発現を行使したはずだったが発現には至らず、まだ魔力を溜めなければならないほど弱体化していると言うよりもその魔力自体の保有量が皆無に等しかった。
「一人か」
現在スケウトの所持してる星の形を模した魔のシンボルに宿っていた者達がいない。それは精霊と人を繋ぎ力を行使する魔法の装飾品と言う事になっている。実際はなんか良い感じだから住み着いちゃった的な感じで<<ただ玄関の扉>>ある。つまり今は全員外出中と言う事であり外から呼びかけても誰も出てこないと言う事になる。
「よく判ったな赤いのっ!!」
・・・・後方の木の陰から青い二つの光が動き飛び出してきた!その姿は白く、その耳はナイフの様な形をしていた。ウサギだった。かわいい!
とっても可愛い生き物が現れた!
どうしますか??
→攻撃する。
どうしますか??
→攻撃する。
モフりますか?
→攻撃する。
おい、まてっ可愛いだろっ!!
→攻撃する。
「うぉい、やめろっ!!」
攻撃しようとすると生物が怒鳴ってきた。全く訳が分からない・・生きて帰れると思うなよ。と考えているとナマモノが話しかけてきた。
「お前は、直ってないのか??」
忌々しい言葉が聞こえた。忘れたい過去が頭の中で動き出す。
目の前の剣を引き抜き天へと掲げる。一振りで相対する者を薙ぎ払う。力はある。だが届かなかった目の前で死に逝く友を最愛の人を、ただ叫び権を振るう。暴力と言う己が許された絶対的な権利を振るい続けた。天に掲げた剣は欠けて、折れた、だが権利を主張し続けた。そして彼は今に顕在する。
「ぐっ、ああ、あっ、ああああぁぁぁっーーーーーー」
スケウトは自分の意識とは関係なく泣き叫び出した。頭が痛い泣きたくないのに涙が止まらない言葉にならない叫びが止めたくても止まらない痛い痛い痛い止めろ感情が止まらない。誰だ誰なんだ救えなかった事が辛いのか何だ!何がしたいんだ。
「・・・・直ってないんだな。そうか、」
感情が止まらず膝を突き頭を抱えて痛みを堪えるスケウトの目の前の白いウサギは悲しそうな嬉しそうな声でそう言うとスケウトに近付き涙を舐めた。
「その苦しさ解放してやんなよ。思われてる方も辛いってもんさ。」
頬擦りしながらウサギは語り掛ける。スケウトに向かってスケウトとは別の者と話す。
「こいつの事が心配なんだろ?大丈夫、私が付いてるから安心して行きな。」
「んっ、まだ心配かい?じゃあ・・それ、置いてきな。あんたの相棒なら信頼できるだろ。」
体から何かが抜き出て行く気がした手から足から背中、頭へと温かいとても暖くて優しい大切な何かが出て行く気がした。だから僕は、俺は、感情がまだ収まらない状態でそれに、手を伸ばした。
(――よかった。とどいた。――)
とても、安心した。眠い・・・自分の感情じゃないが、感情の発露が引き金になって酷く疲れて眠気が堪え切れない。それにふわふわ暖かい・・・―――
「 」
「眠っちまったのかい。このお子ちゃまは、まだまだだね~」
さて、抜け出して・・だが抱き絞められている。
どうしますか?
→抜け出す。→失敗
どうしますか?
→抜け出す。→失敗→モフられる。
どうしますか?
→抜け出す。→失敗→モフモフされる。
どうしますか?
→抜け出す。→失敗→枕にされる。
「おいっ飽きたのか飽きたのか!なにこれ酷い!?」
三大欲求の一つには勝てなかったようだ。当然である。
「扱いが酷い、こんなの絶対おかしいよ!!マジあり得ない!!」
ウサギは大声で抗議するが、三大欲求の一つ睡眠欲には勝てなかったようだ。当然である。
「もう疲れた。考えるのやめよ。寝よ。」
ウサギと人が道で大の字になって気持ち良さそうに眠っていた。
旅人たちに暫しの休息を―