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68.酷い悪路なのだろう。領主に文句言ってやる。

前回までのあらすじ。

ダンジョンマスター達は信のダンジョンを攻略しようとしたが、失敗した。

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信のダンジョンは天空にあったため、俺と村人Aはスカイダイビングし、パラシュートで着地した。

不死の体とはいえ、寿命が縮まりそうだった。


そして現在、馬車に揺られて自分のダンジョンへと帰っていた。馬車は村人Aの手作りで、引いているのも村人Aだ。


----------------------------*----------------------------

どうやらダンジョンマスター達は、信のダンジョン攻略に失敗したようです。

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人工音声さんは、自分の分身を監視カメラに憑依させ、様子を伺っていたようだ。

さすがの五島亜理子でもあれだけ縛りがあったら、ダンジョン階位1位には敵わなかったらしい。

作戦前から分かっていたことじゃないか。


それに、勝利条件は信のダンジョン攻略ではない。

奪われた魔道具の奪取だ。

魔道具の場所を信から聞き出そう、なんてことをするから失敗したんだろう。

素直に魔道具が見つかるまで、食い倒れに偵察させておけば良かっただろうに。


……ま、食い倒れが見つけられたとは思えないがな。

信が隠した場所は、もっと奥だ。


数日間、馬車に揺られて旅が続く。

俺はヘッドギアを被りネトゲをしていた。

揺れが大きい。酷い悪路なのだろう。領主に文句言ってやる。

もっとも、領主が誰かなんて知らないが。

そしてこの揺れは村人Aが高速移動で馬車を引いてたせいだったが、ゲーム中だったので俺は気がつかなかった。



「もうすぐ到着です、マスター」



村人Aが言う。

俺は設定で、外部からの音声が入るようにしていたから聞こえる。


やれやれ、ようやく帰宅か。

家じゃなくてダンジョンだが。


機械が埋め込まれた、白い塔。

やっと帰って来た。


閏の作ったガラスドームと、大量の水は撤去されていた。

信の仕業か、やるじゃん。


そして俺達は機械ゴブリン達から熱烈な歓迎を受けた。



「ギャギャー!(逃亡中だったダンジョンマスターだ!

捕まえろー!)」


「ですよねー」



村人Aが機械ゴブリンを切り捨てる。

1階層の機械ファフニールに気付かれる前に、階層エレベーターに乗る。


10階層に到着。

バッハが居ないことは知っている。


村人Aに雑魚を任せ、俺はダンジョン大部屋にダイヤル式近未来トランスポーターを設置した。

大きな渦が描かれた円盤状の機械だ。


こいつを使うためには大量の電気が必要なのだ。

信のダンジョンで使えたら良かったのだが、彼のダンジョンでは電気が得られなかった。

仕方なく自分のダンジョンに帰ったというわけだ。


俺はトランスポーターのダイヤルを91ill@ewqに設定する。

よし、起動、っと。



「ガァァァアアアアア!(オレサマ登場! せいっ!)」



装置から、機械ファフニールが現れた。

1階層にいる俺のダンジョンの機械ファフニールとは、ちょっとフォルムが異なっている。



「さっそくで悪いが、装置を壊されないように、周りの雑魚の掃除を頼む」


「ガァァアアルルルル!(おうさ!)」



機械ゴブリンや機械バチは、現在信の配下となっている。

なので俺達を襲ってくるのだが、機械ファフニールがブレスで溶かしている。

熱い熱い。


----------------------------*----------------------------

こ、これは……?

この人工強欲竜アーチファクト・ファフニールはいったい?

----------------------------*----------------------------


「キキッ(無事に移動成功なのですよ!)」


「キェェエエエエエ!(到着や! って熱ッ?!)」



次々に機械ボス達が現れる。

食い倒れも現れる。

大トロとうな丼は魔法で小さくなっている。



「よーし、深ちゃんはここで待機。

あとの奴らは全員、信のダンジョンに行って来い」



俺は自分の仕事は終わったので、ネトゲをするためにヘッドギアを被ろうとする。

しかし、人工音声に何度も説明を要求されたので、説明してやることにした。



◇ ◇ ◇ ◇


しん・セイクリア視点



信の元に、宝石ゴーレムが急いで報告しに来た。



「ガチャリ(信様! 機械魔獣達が侵入してきました!

階層エレベーターを用いて、89階層まで来ました!)」


「逃げたダンジョンマスターの伊乃田命の配下か?

いや、しかし、彼の配下は僕の支配下にあるはず。

どうなっている?」



信が、止まるように命令しているが、全く聞いていない。



「ガチャガチャ(分かりません!

もうすぐ、この89階層の信様の部屋へと到着します!)」


「そうか。

伊乃田命は随分とイレギュラーなことをしてくるようだ。

安全を期して、僕は隠れることにしよう」



彼と配下の宝石ゴーレムはダンジョン内転移の腕輪で、7513階層へと転移した。

例の魔道具も、ここに設置していた。

ダンジョンマスター達は外に設置したと思っていたようだが。


信のダンジョンの隠し機能『隠しダンジョン』の効果で、ダンジョンの一部を隠すことが出来るのだ。

これによって、部外者は89階層までしか認識出来ないようにしていた。

89階層のボスを倒し、隠し通路を見つけることで隠しダンジョンへ進むことが出来る。

イチニーサンは『隠しダンジョン』を知らなかったため、90階層以降にエレベーター入口を設置出来なかった。




「伊乃田命が差し向けたボス相当の戦力は、たったの10体。

89階層の魔獣をなんとかしたようだから、それなりの実力があるのだろう。

だが、隠しダンジョンが続いていることに気づくまい」



この秘密を知っているのは信の配下とダンジョンの女神達だけのはず。

ダンジョンの女神がもし他のダンジョンマスターにバラせば、重要な個人情報漏えいとして上位の神から罰せられる。

パチモ程度の女神なら、女神の座を下ろされるだろう。


などと考えている間に、赤帽子の機械老人であるふんたーがガーゴイルの宝石像を3度撫でる。

そして、そこから4歩北の足場でふんたーと食い倒れとバッハが20秒ウマウマ踊りを続ける。

すると、足場の前が開き下階段が現れた。



「馬鹿な?! 何故隠し通路解除のギミックを知っている?!

ダンジョンの隠し通路のギミックの謎解きは、3日ごとに配置と解除方法が変わるはず!

この3日間は偵察が入っていないはずだ!

なのに“まるで予め知っていたかのように”何の迷いも無く解除した?!」


「ガチャリンコ(ど、どうします?!)」


「しかし、攻めてくるにしても、この戦力差を埋められるわけがない。

89階層までの魔獣は、他所のダンジョンの連中の者がほとんどだ。

まだ僕の配下は健全だ」



信の主戦力は、隠しダンジョンで待機していた。

その数、ボス相当が10万体超え。

それだけの数を用意出来るのは、信のダンジョンが命のそれと同じようなダンジョン機能を有するおかげであった。

配下の食糧ともいえる魔力の供給を、ダンジョン機能によってタダで行うことが出来るのである。


普通はそんな場所に、少数精鋭とはいえ10体だけで挑むのは無理である。

実際、伊乃田命の用意した魔獣よりもステータスが上回った魔獣が何百体も居たのだから。



「ダンジョン階位1位の僕に牙をむいたことを後悔させてあげよう。

きっと彼は、自分のあまりの無力さに絶望し、懺悔することになる。

もちろん許してあげよう。僕の心は海のように広く深いからね」



だが、30分後に宝石ゴーレムが持ち込んだ報告は信を驚かせることとなる。



「ガチャガチャ(報告します! 現在侵入者は104階層を攻略中!

こちらの損害はボス相当が約150体! 侵入者は無傷とのこと!)」


「馬鹿な?!」



ボス特有の全快スキル【HPMP自動回復】は、戦闘後1分無戦闘でなければ発動しない。

監視カメラの映像では、侵入者は常に戦闘中だ。


侵入者に全く攻撃が当たっていない。

なのに、こちらの配下への攻撃は必ず当たっている。

まるでシューティングゲームで、敵や弾の固定配置を知っているゲーマーのように。


信はダンジョン機能で侵入者を鑑定するが、向こうの配下とステータスに差はそれほどない。

むしろこちらが上回っているくらいなのに。



「どうなっているんだ?!」



一体何が起こっているのか、信には分からなかった。


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