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67.(エクストラ)ダンジョン共同攻略

前回までのあらすじ。

ダンジョンを攻める用意を始めている21番牢獄の連中。

ただし命はネトゲ中。

----------------------------*----------------------------


しん・セイクリア視点



それはダンジョンマスター達を投獄してから3週間くらい経ったある日のことだった。



「ギャギャース!(大変です、信様!

各地で災厄ネズミが発見されているようです!

被害はダンジョンマスター・テイマー狩りに匹敵するかと!)」


「何だって?! 災厄ネズミ?!

僕が世界から撲滅したハズなのに?!」



信は、配下の宝石竜が持ち込んだ情報に驚いていた。

災厄ネズミは、ペストを始めとする疫病をたくさんばら撒き、人類魔獣問わず多くの者を殺すだろう。


そんな危険な魔獣だから、信はわざわざ災厄ネズミ狩り専用の魔法を作って、世界から災厄ネズミを消した。

それだけでなく、その一つ下の進化前の凶悪ネズミも絶滅させた。

さらにその一つ下の進化前の鬼ネズミも同様に絶滅させた。

さすがに一つ下の人食いネズミは数が多すぎて駆逐出来なかったみたいだが。



「居るはずのない災厄ネズミが増殖している……ダンジョンマスターの仕業か?」


「ギャッス(どうやら、伊乃田命の所持するファームで増えていたようです。

ファームの魔獣は、増殖が早くなるように改造されているのです)」


「馬鹿な?! ダンジョン産の魔獣は、ファームで飼育しても1DPも手に入らないはずだ!」


「ギャーース(それが……自前で人食いネズミを3段階進化させていたようです)」


「彼は中級者以上のダンジョンマスターで最下位だったはずだ!

そんな上等な育成ノウハウ、持ち合わせていないはず……」


「ガチャチャ!(報告します! 緊急事態です!)」



宝石ゴーレムが慌てて走って来た。



「災厄ネズミについての続報か?!」


「ガチャン!(いえ! ダンジョンマスター達が、牢獄から逃亡!

ダンジョンアドバイザーを引き連れ、ダンジョンを攻略中とのことです!)」


「馬鹿な?!」


「ガチャッチャ!(間もなくここに来ます!

マスターは急いで退避の準備を!)」


信は頭を振って、水を水瓶から汲んで飲み、ふぅっと一息ついて、冷静さを取り戻した。


「……いいや、奥に籠るまでもなさそうだ。

適当に対処するとしよう」




◇ ◇ ◇ ◇



・ダンジョン改造屋SP達視点



時は少し遡る。

21番牢獄の4人+イチニーサン、食い倒れは信のダンジョンを攻略することにした。

食い倒れの情報を元に、海賊船ダンジョンの亜理子を先導者として。


作戦はこうだ。

まず各牢獄のテレビをハッキングして、各ダンジョンマスター達に協力を得る。

協力内容は、ダンジョンを攻めるために、ダンジョンアドバイザーを貸しだしすること。

“ダンジョンアドバイザーを”守るために、ダンジョンマスター達は盾となること。


現在DP使用制限をかけられているため、ダンジョンアドバイザーは蘇生できないからだ。

何度でも勝手に蘇るダンジョンマスターを肉壁として使用する。

かつてダンジョンマスター・テイマーの連中が行っていたように。


ダンジョンマスター達は、ハッキングされたテレビから作戦を聞いた。

彼らは肉壁になることはあまり乗り気になれない。

しかしこの作戦以外に良い案があるのかと言われたら無いため、しぶしぶ同意した。


イチニーサンはダンジョン改造屋からダンジョン改造屋SPに強化していた。

そのため、ダンジョンマスターの出来ることならほぼ出来るようになった。

ただし、現在の所有者、つまり命のダンジョンで出来る事限定である。


例えばイチニーサンは、食い倒れの蘇生は出来るが、他のダンジョンマスターの配下の蘇生は出来ない。

代わりにダンジョンの改造は疑似DPが許す限り、余所のダンジョンでも制限なく行うことが出来る。

ちなみに魔獣も召喚できるが、今召喚しても全て信の配下になってしまうため、意味がない。


それから何と、命から11連ガチャ引換券(ゲーム)の残りを全て貰ったのだ。

信のダンジョンを攻めるつもりなら、疑似DPの足しにしろ、と。

代わりに命は、ダイヤル式近未来トランスポーターとかいう物を1つ購入するように頼んだ。


命の真意はよく分からないが、イチニーサンは、命が元のダンジョンに戻れるように、全力で協力するつもりだった。



「てめーらー! 作戦開始だー!」


「イーッ!(よし、俺はダンジョンアドバイザーを解放するアル!)」


「イーッ!(わたくしは、ダンジョンマスター達を解放するペコ!)」


「イーッ!(自分はダンジョンマスター達に、使用可能な回復アイテムを配るっス!)」



作戦開始3分で、イチニーサンは仕事を済ませた。


そして怒涛のダンジョン攻略が開始された。


まずイチニーサンが階層エレベーターを購入し、ダンジョンに勝手に設置した。

もちろん誰でも使用可能なタイプだ。


階層エレベーターの乗員は50名ほど。

7つ設置し、ダンジョンマスターとダンジョンアドバイザーが乗りこむ。

総計300名越えの大勢がダンジョン89階層に到着する。


宝石の大蛇が突進してきて、ダンジョンアドバイザーを30名ほど失ったが、なんとか撃退し、邪魔する魔獣を倒し進む。

途中の数えきれない罠は、イチニーサンが分解する。

食い倒れの情報のおかげで、罠による被害はなかった。

信の元へたどり着いた時には、ダンジョンアドバイザーは10体ほどになっていた。



「おやおや。まさかアンラッキーアイテムまでもが協力していたとは」



ここまで攻められたというのに、信は涼しげな顔だ。



「へっ! テメェ覚悟出来てんだろーなぁ?」


「覚悟? 僕はいつだって真摯に生きている。

常に覚悟していると言っていい。

マリア様に誓って、ね」


「てめーみたいな気色悪ぃ狂信者に愛されるマリア様も可哀そうだなァ、オイ」



亜理子の煽りも、信には効いていない。

それどころか、



「今すぐ投降するなら、痛い目に遭わさずに帰すことを約束しようじゃないか」


「ハッ! 自分の立場を弁えてねーみたいだなコラ」



ダンジョンマスター達が信を包囲しているが、その包囲網がだんだん小さくなっていく。



「最後の警告だ。10数えるまでに投降するんだ。

さもなくば君達を消し炭にする。

10、9、……」


「野郎ども、かかれーッ!」



信のカウントダウンを律儀に待つ必要などない。

信にダンジョンマスター達が襲いかかる。

しかし、彼らの中心にいた信は遠くへ転移した。



「イーッ!(くそ、転移の腕輪に保護をかけているペコ!

分解できないペコ!)」


「8、7、6、……」



信は己の言ったことを律儀に守り、カウントダウンを続ける。



「あきらめんなテメーら!

あいつを捕まえて魔道具の有りかを吐かせるんだ!」



食い倒れの調査では、魔道具の有りかは分からなかった。

おそらくダンジョン外に有るのではないか、との結論だった。


その食い倒れは、信の配下に倒されてしまっている。



「5、4、3、……」


「イーッ!(食い倒れを蘇生っス!)」



食い倒れが信の前に蘇生される。

食い倒れの攻撃が信に当たる。



「ぐふっ?!」


「ガチャ!(信様!)」



宝石ゴーレムは直ちに排除された。



「大丈夫……2、1、0。

時間切れだ、ごふっ」



信は倒れた。

それをイチニーサンは回収しようとしたが、



「グォォオオオオオオ!(食らうがいいぞい! ふん!)」



天井からバッハが下りてきて、部屋を埋め尽くすほどのレーザーが放出され、イチニーサン以外の全員は消し炭となった。

バッハは信の体を回収し、どこかへ行ってしまった。

イチニーサンは、今日1日は故障で動けなくなった。


動けないイチニーサンに、うな丼の舌が伸びてきて、体内に回収されてしまった。

彼の体はプラズマの塊であり、回復しても故障してしまうため、イチニーサンはもはや脱出できない。


ダンジョンマスター達が復活した頃には、牢獄は元通りとなり、彼らも元通り閉じ込められていた。

彼らは信のダンジョンを攻略するのに失敗した。


唯一1人、命だけが行方不明だった。

命は最初から、このダンジョン共同攻略に参加していない。

彼は村人Aをお伴に、自分のダンジョンへ帰ったようだった。



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