63.暴力反対。運営に文句言ってやる。
前回までのあらすじ。
命の牢獄の監視が偽装された。
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「とりあえず自己紹介をしよう。
吾輩は獣人ダンジョンの獅子緒武。
よろしくしてくれたまえ」
太った中年のオッサンだ。
「拙者、猫ダンジョンの猫飼虎雄。
よろしく頼むでござる」
痩せた大学生くらいの男だ。
「俺ァ、海賊船ダンジョンの五島亜理子だぜ」
「湖底のダンジョンの雅姫閏」
この二人は俺のダンジョンに迷惑をかけた女だ。
「俺は……7のダブル!」
ただ今ジャックのダブルの効果で一時的に革命状態である。
「イーッ!(6のダブルアル)」
「イーッ!(5のダブルペコ)」
「イーッ!(パスっス)」
サンは首を振った。
彼らが何言ってるのかは分からないが、素振りで分かる。
パスってことか。
「この時を待っていた!
3のダブル!
革命状態だから最強のダブルだ!
そして場は流れ、俺のターン!
8で流れる!
4! 上がりで下剋上完了だ!」
「「「イーッ?!」」」
よーしよし。
やはり大富豪は番狂わせが楽しい。
下剋上とは大貧民が大富豪となること。
この時点で勝負終了となり、順位が前のゲームと逆になる。
つまり貧民は富豪、富豪は貧民、大富豪は大貧民になる。
「さあ、次の試合」
「俺達を無視するとは、いい度胸だなァ!」
五島亜理子に胸倉を掴まれる。
暴力反対。運営に文句言ってやる。
「何だよ?」
「協力しろって言ってんだぜ?
まずは自己紹介しろやコラ」
「伊乃田命だ。
協力って何だ。俺はゲームで忙しいんだ」
「吾輩、猫耳娘のしもべの膝枕でなければ寝られなくてな。
頼むから、吾輩のしもべを解放するのを協力してくれたまえ」
「拙者も、家族の可愛い猫達が心配でござる。
どうか取り返すのに尽力願うでござる」
「俺は、こんなふざけたことした階位1位をふっ飛ばすために、とりあえず配下を元に戻してぇ。
力貸せやコラ」
「……家来をぺろぺろしたいの」
この牢獄の5人で力を合わせて、あの金髪男と戦いましょう、ってか。
だが、
「お前らに一体何が出来る?」
もし俺の戦力に頼り切りだと言うのなら、丁重に断らせてもらう。
「海賊船ダンジョンマスターの俺を舐めんなよ?
今あるダンジョン全ての主な魔獣の弱点データなんかは頭に入ってるぞ」
こちらから攻めるなら、亜理子の知識は役に立ちそうだ。
「水攻めなら任せるの」
閏は水攻めについての知識がありそうだ。
ダンジョン配下を用いない水攻め、という選択肢が増えるな。
「獣人の好物なら任せてくれたまえ」
「猫の喜ぶおもちゃを知ってるでござる」
……このデブガリ男2人は役に立つのか?
「で、偉そうなテメェは何が出来るってんだコラ?」
亜理子が俺に尋ねる。
「俺に出来る事?
見れば分かるだろ。
俺はゲームが出来る」
言いつつJのダブルを出す。
「要するに、男2人と同じく無能かよ。
そこのダンジョン改造屋どもに命令できねぇのかよ?」
「出来ないな」
頼めば言う事を聞いてくれるかもしれないが、基本的に彼らは自分の意志で動いている。
つまり、いつ階位1位の金髪に寝返ってもおかしくないのだ。
というか俺が彼らなら、速攻で寝返るだろう。
あとは食い倒れと村人Aの2人に協力してもらうことが出来るが。
「キェェェエエエエエ!(おっと、信が呼んでるさかい。
行ってくる)」
「おう、行ってらっしゃい。
ついでにダンジョンの情報を集めておいてくれ」
「キャッ!(ん?
主、今は翻訳の腕輪使えんはずやないか?
ワイの言う事が分かるんか? どないしたんや?)」
「イチニーサンにちょっとな」
食い倒れは、俺が腕輪の新調を行った事に、本気で気が付かなかったらしい。
それを説明してやる。
「キェェェエエエ!(なるほど!
疑似DPで購入したアイテムは、信の影響を受け付けないってことやな!
ということは、村人Aの【課金アイテム購入】も影響受けないんとちゃうか?!)」
おお、さすが俺のダンジョンのブレイン、食い倒れ。
頭の回転が俺よりずっと早い。
村人Aのスキルまで考慮するとは、さすがだな。
食い倒れが信の元へ向かう。
どうやら同じダンジョン内に居るらしいな。
そして、隠れていた村人Aが牢獄の鍵を開けて俺の前に現れる。
合鍵はその場で自作したらしい。
「おい命、そいつは誰だ?
味方か?」
「俺のゲームアバターだ。
少なくとも敵じゃないな」
「マスター、命令をどうぞ……じゅるり」
俺はサイフから、ありったけのMA硬貨を取り出し、村人Aに課金する。
そして、時間つぶしのゲームを注文をすることにした。




