61.そんな大事な魔道具、きちんと管理しろよ。運営に文句言ってやる。
前回までのあらすじ。
ダンジョン階位1位 信・セイクリアによる全ダンジョンの乗っ取りが完了した。
ダンジョンマスター達は信の魔獣によって牢獄に閉じ込められた。
信によるテレビ生中継が始まった。
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題名:緊急事態なんだな 差出人:女神パチモ
ダンジョン階位1位の信・セイクリアが暴走中なんだな。
事態の詳細については、添付の手紙を参考にして欲しいんだな。
ボクらは上位の神に何とかしてもらうように頼んでくるから、しばらく我慢するんだな。
添付:パチモの手紙
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封に包まれた手紙が現れる。
他のダンジョンマスター達も同じ物を受け取ったみたいだ。
『これから君達には、牢獄で猛反省してもらう。
何も変わらない永久の日々に苦しむといい。
君達のダンジョンとその“元”配下は、僕が世話してやろう』
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では、先ほどダンジョンの女神のパチモ様から送られた情報も併せて現状説明をします。
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信とやらが喋っているのを適当に聞き流しながら、人工音声さんの話を聞くことにする。
ゲームをしながら、だがな。
俺はポケットから万能ゲーム機を取り出す。
やはり動かない。
同様にテトリスのゲーム機を取り出す。
こいつも動かない。
トランプを取り出す。
紙がひっついていて使えない。
アイテム袋は口が開かない。
『君達に与える罰は、現地住民からアンケートを取って、後日発表することにしよう。
僕が罰するのではない。君達によって虐げられた現地住民が、君達を罰するのだ。
これは君達の自業自得なのだ』
くそ、やはりゲーム関係のアイテムまで細工されていて使えない。
と思っていたら、どこからともなく新品のトランプが現れた。
イチより、と書かれている。
封を開ける。
カードを広げたりシャッフルする。
……問題なく使えるぞ。よし。
俺はソリティアを始める。
ソリティアのルールだが、ジョーカーを除く52枚をシャッフルし、場にカードを裏側で7列並べる。
それぞれの列には1、2、3、4、5、6、7枚のカードがある。
残りは山札となる。
『僕から与える罰は別にある。
それは君達の汚れた魂を浄化するための、生活指導だ。
まず朝一番の祈り、そして聖典の書写、それから……』
場の列の一番上のカード各1枚の計7枚をめくる。
山札からカードをめくり、数字が小さいものが上になるような順番で赤黒交互にひとつながりで並ぶよう、場にカードを置く
。
または、場のカードを別の場のカードへ移す。
置くカードが無い場合、山札は2枚飛ばしでめくる。
めくる枚数は人によるだろう。俺は2枚飛ばしでやっている。
そしてキングは例外として場の空いている列に置き、同じマークのカードがその上に番号順になるように置く。
場の一番上のカードが裏の列は、その一番上のカードを表にする。
これを繰り返し、最終的にマークが揃った、番号順のカードの山を4つ作る。
途中でカードを移すことが出来なくなったら詰み、また最初からだ。
言葉で説明したらややこしいけど、やってみたら単純なルールのゲームだ。
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まず、ダンジョンマスターの信は、全てのダンジョン内産魔獣を自分の配下へと変更したようです。
つまり、主を自分へと書き変えたようです。
そのせいで、全てのダンジョンは信によってクリアされた扱いとなり、収入DPは全て信の物となりました。
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ソリティアをしながら、人工音声さんの説明を聞く。
なるほど、俺の配下がダンジョンに侵入した宝石ゴーレムに無反応だったのはそのせいか。
ちっ、ソリティアは詰みか。
もう一度だ。
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信が行ったのは他に、DP使用権とDPによって購入したアイテムの使用権の没収です。
これでダンジョンマスターが実質ダンジョン運営出来なくなりました。
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よし、よし。
今度は上手くいきそうだ。
で、人工音声さん、他には?
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この2項目だけ変更したようです。
魔道具によってこれ以上設定を変更されないように、ダンジョンの女神達は上位の神にかけ合ったみたいです。
残念ながら2項目だけは魔道具を取り返して設定を直す必要があるのですが。
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やったぜ、ソリティア成功。
まとめると、俺はダンジョン内産の魔獣全部没収され、DPで買った物を使うことは出来ない。
そんなことになっている原因は、とある魔道具が信にとられたせいだ、と。
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はい。
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そんな大事な魔道具、きちんと管理しろよ。運営に文句言ってやる。
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運営は現在、業務を凍結しています。
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まあそうだろうな。
ソリティア成功2回目っと。
で、当然ルールの穴はあるんだろ?
例えば人工音声さんが未だに俺の味方だったりするし。
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はい。
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ダンジョン内で生まれた魔獣が盗られたってのがミソだな。
ダンジョンの外で出会った人工音声さんには適応されないわけだ。
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その通りです。
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そして、その理屈が通るなら……
「キェェェエエエエエエ!」
「な、何だ?! 牢獄の外に機械ティラノが現れたぞ!」
「静かにするの。うるさいの」
『喜べ。21号室の君達の監視役を申し出た勤勉な魔獣だ。
伊乃田命君の魔獣だったそうだが、今は僕の立派な手足だ』
テレビ映像が切れると同時に、食い倒れがやってきた。
こいつのスポナーを設置した場所は確かダンジョンの外だったよな。
つまり、食い倒れのマスターは未だに信ではなく、俺だ。
さらに、さっきからトランプで遊んでいるが、これはイチの疑似DPによって購入したものだ。
ということは……
俺はトランプに、爪で『翻訳の腕輪を新調してくれ』と書く。
そして、お駄賃代わりの11連ガチャ引換券(ゲーム)を1枚取り出す。
「キィェェエエエエエ!(異常なしや異常なし。監視なんてするまでもあらへん)」
目にも止まらぬ速さで俺の翻訳の腕輪と引換券が分解され、同時に新しく購入された腕輪が装着された。
この腕輪も疑似DPで購入されたものだ。
つまり、DPによって購入したアイテムでないので使うことが出来る。
また、食い倒れが俺の行動に気付いていないわけがない。
わざと見逃しているのだ。
彼は信の配下になったフリをして、何か企んでいるとみた。
ふふ、俺だけに分かるように一瞬だけ村人Aの姿が見えたぞ。
VR操作で姿を消していたのか。
彼女は最初からダンジョンの魔獣ではないため、今回の集団洗脳(?)の影響を受けていないのだ。
あの二人が何を企んでいるのか知らないが、彼らに一つ任せることにしよう。
俺の近くにイチニーサンが潜んでいるみたいだし、こいつらに何か頼むのもアリか。
聞いてくれるかどうかは知らないが。
それと、回廊にいたUFO達はどうだ?
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残念ながら、回廊はダンジョン内扱いなので彼らも敵となっています。
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そうか。
味方が少ないな。
食い倒れ、村人A、イチニーサン3人組か。
ま、ゲームさえ出来れば俺はどうでもいいのだが。




