58.ケチだなぁ運営は。
前回までのあらすじ。
雅姫閏の連れてきた魔獣を全滅させ、彼女をぐるぐる巻きにした。
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あれから数時間。
雅姫閏をどうするか、ようやく決まった。
「損害賠償はひとまず後回しだ。
まずダンジョンの中と外にある大量の水の排水を2週間後から開始する」
「排水に今すぐ取りかからないのはどうしてなの?」
「ん、ボツリヌス毒が抜けるのに5日かかるらしい。
安全を考えて毒が無くなる2倍以上の期間が過ぎた後に排水する。
そうすれば環境に悪影響を与えないだろ?」
「どうせこの世界の野生魔獣や原住人が苦しむだけなの。
大した問題じゃないの」
大問題だ。
近所迷惑どころの話じゃねぇ。
苦しむのを通り越して死人が出るぞ。
それに、これだけの水を一気に放出したら、洪水間違いなしだ。
だから、ちびちびと川なり海なりに送るのがいいだろう。
だがそれも2週間後から、だ。
「それなら、私は自分のダンジョンに帰るの」
閏が何かを購入し使おうとしたが、イチニーサンにより分解された。
「何するの」
「このまま帰すとでも思ってるのか。
排水するのはお前の仕事だ」
「ちっ、断るの」
今度は水竜が30体ほど一瞬で現れたが、何かする前に死んだ。
残念ながら、アンデッドか即死対策をしている魔獣でなければ、人工三首邪竜は相手を即死させる。
死んだ水竜は光になる。
イチニーサンが死体を分解しているだけだが。
一部はミルフィーユの食事用に取っておいてもらうことにする。
「……」
「五島亜理子はお前よりも潔かったぞ?
素直に損害賠償してもらおうか」
「いやなの」
「とにかく、水が抜けるまでお前は拘束させてもらうぞ」
こうして閏の監禁生活が始まった。
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入手 「自然獲得(500DP)」
手持ち1,884,335DP→1,884,835DP
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入手 「サイバーファームでの屠殺」(280,695DP)
手持ち1,884,835DP→2,165,530DP
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閏を監禁した翌日だ。
壊れていた方のファームが復旧したので、700匹の災厄ネズミを移し、魔獣動物植物も移した。
明日からは屠殺で300,000DP以上入ることだろう。
さて、彼女の様子を見に行くか。
もちろん片手にはゲーム。
万能ゲーム機は携帯ゲームに形状を変化させている。
ゲームソフトは、2071年のお勧めゲーム詰め合わせに入っていたディスガイオ38RETURNだ。
斜めビューの2D風のマス目状マップで戦う、やりこみシミュレーションRPGだ。
現在はストーリーをクリアしつつレべリングを行っている。
ストーリーはこんな感じだ。
舞台は魔界のとある都市。
災厄魔界交響楽団の一員である主人公は指揮を担当していた。
しかし、最近楽団の数が減り、楽団長は主人公に楽団を押しつけて去ってしまう。
悪魔である主人公は、悪魔らしく力によって他の悪魔を屈服させて楽団に入団させようとする。
が、歌姫の幼馴染に暴力じゃなくて音楽で戦えと文句を言われて、ことあるごとに喧嘩している。
順調に楽団数は回復していくのだが、主人公達に目ぼしい人材を取られまいと他の魔界楽団の妨害が入る。
やがて戦いは魔界全体を巻き込むことになる。
まあ、このシリーズらしい魔界をベースにしたストーリーだな。
ゲームをしつつ、俺は自室から出る。
◇ ◇ ◇ ◇
8階層では閏が青プレートを付けた音楽担当の機械ゴブリンたちに囲まれて歌っていた。
一体何事だ。
「ギャギャギャー(命様。これは大変な逸材です)」
「逸材?」
「ギャンギャ(ええ。
10年……いえ、100年に1人居るかどうか分からないくらいの美声の持ち主です)」
「ふむ。で、何で今歌ってるんだ?」
「ギャーギャ(我々に協力すれば、命様はだいたいのことは聞いてくれるだろうと言ったのです)」
俺が聞きたかったのは、機械ゴブリン達がいつの間に閏に目を付けたか、ということなのだが。
あと、いくら俺が放任主義とはいえ、勝手に人質と取引してんじゃねぇ。
歌い終わった閏は転がる。
何せ未だに全裸で拘束されているからな。
俺の命令じゃないぞ。
機械ゴブリン達は、『次は防音室で録音するので連れて行きます』とノートPCに打つ。
それを閏に見せ、彼女を担いでエレベーターを使って10階層に上がる。
「これが終わったら、人魚姫さんを舐め放題権と、水生機械魔獣の飼育権が手に入るの」
水生機械魔獣の飼育権って何だ。
ダンジョンの一角を貸せってのか。
閏には自分のダンジョンがあるだろうが。
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雅姫閏のダンジョンは湖底のダンジョンです。
機械魔獣を飼うとなると、維持費にかかる電気代が馬鹿にならないのです。
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俺の所は、発電や送電機能があるんだっけか。
俺のダンジョンで使ってる電気を、他のダンジョンで同じくらい使ったら電気代はどのくらいになる?
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ざっと一日一億DPくらいでしょうか。
巨大ボスが2体いますからね。
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やばいな。
電気代無料の恩恵って、何気にデカいんだな。
つまり閏に一区画貸すことは、彼女の電気代が浮くってことか。
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ただし閏の配下に電気を与えることは認められていないです。
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ケチだなぁ運営は。
なら、彼女の希望を聞き入れるためには、どうするんだ?
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マスターが該当する配下を貸出するしかないですね。
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仕方ない。
亜理子を倒した影響でスポナーから発生した機械タコと機械サメ、機械カメを貸出してやろう。
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別に閏の言うことを聞く必要もないのでは?
どうせ2週間と少しで追い出すのですし。
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いいや、気が変わった。
彼女がそれほどの歌の逸材と言うのなら、引き留めておくべきだろう。
機械ゴブリン達が作ってるゲームの主題歌を歌わせるのもいいな。
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今回の成果
増減前1,884,335DP
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収入281,195DP
支出0DP
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現在2,165,530DP
手持ち1DKP
過去3年の記録41DKP