44.ふざけんなぁ! 運営は何考えてるんだ!
前回までのあらすじ。
五島亜理子のダンジョンに1階層を突破された。
1階層のサイバーファームを破壊された。
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・ダンジョンマスター
五島亜理子視点
「よぉーし! 食料施設を破壊してやったぜぇぇぇええ!」
戦いの基本その1、それは相手の補給経路を断つことだぜぇ!
俺は配下の数人をヴェガ王国に潜伏させている。
そいつらの収集した情報によれば、このダンジョンマスターは食料を自給自足してるらしいじゃねーか。
きっとダンジョンに食料供給施設があるだろうなぁ、と踏んでいたが……まさか1階層にあるとはな!
侵入者に破壊してくれと言ってるようなもんだよなぁ!
ひゃはっはっは!
「これで奴らはジリ貧だな!
もう何もしなくても勝てるんじゃねーか?」
「マスター、それはないであります」
ダンジョンアドバイザーの人間、海賊服に身を包んだ男ベネットが俺に言う。
「あぁ? どういうことだよ?」
「このダンジョンの魔獣、どうやら電気で動いているようであります」
「電動の魔獣? ってことは発電所を潰せってことか?」
「いいえ。電気は、ダンジョン効果で供給されているようであります」
何だって?!
ダンジョンの効果で、配下の飯が供給されているだとぅ?!
俺や他のダンジョンマスターは、食料供給や補充について必死に頭を悩ませてるってのに!
ずりぃぞ!
「ってことは、ファームを奇襲したのは無駄ってことかよ?」
「いいえ、敵のDPを得る手段が減ったのであります」
そういや相手はダンジョンマスターを始めて2ヶ月くらいだよな。
まだ所持DPは少ないはずだ。
にしてはダンジョンが豪華な気がするが。
ファームって確か3,000,000DPだったよな?
駆けだしのダンジョンマスターが所持していい施設じゃねーぞ?
◇ ◇ ◇ ◇
・命視点
俺はフリーゲーム【汁見】を遊んでいる。
コマンド形式のアドベンチャーゲームなのだが、このゲーム……、
「ぷっ! くっそ、腹筋が崩壊する……」
笑えるゲームという説明文の通り、笑い過ぎて腹が痛い。
主人公や周りが馬鹿やってる、いわゆるバカゲーというやつなのだろうか。
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2階層ボスの人工蜘蛛神が討伐されました。
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2階層への侵入から1時間くらい経過してるな。
敵は順調に進んでいるらしい。
相手を討伐した時に入るはずのDPが入っていないところを見ると、かなりのやり手なのだろう。
俺は3階層のボス部屋の様子を、監視カメラで見る。
食い倒れと、7階層から移動してきた大トロがスタンバってるな。
大トロはおそらく変身で小さくなってから移動したんだろう。
ボス部屋は勝手に伸び縮みしてくれるみたいで、丁度良いサイズに変更されている。
水も張っているみたいだ。
ちなみに本来の3階層ボスであるふんたーでは力不足なので、10階層に避難している。
大トロが暴れるとヤバそうだから、4階層には人工盲目蛇が衝撃吸収役として控えているようだ。
大トロ達がやられるようなら俺が本気出すしかないが、その心配はないだろう。
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私の計算では、マスターの勝利する確率は99.9%です。
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人工音声さん、俺の敗北フラグを建てようとするなよ。
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・ダンジョンマスター
五島亜理子視点
俺達は2階層の攻略を終え、3階層に向かってる。
「ここのダンジョンやっべーなぁオイ」
10万度の部屋や絶対零度以下の部屋を設置するとか、正気の沙汰とは思えねぇーよ。
ボスの蜘蛛も平気そうな顔してたしなぁ。
先兵であるファントムバードはゴーストに分類される魔獣だから、冷気や熱気みたいな物理は効かないから良かったものを。
普通の鳥にマッピングを任せてたらチキングリルが出来上がってたところだぜ。
「マスター、嬉しそうであります」
「俺が?」
最近は、ダンジョンバトルを真面目にしない連中ばかりと対戦してたからな。
上位の連中はDPでDKPを大量購入してるから順位だけは高いが、ダンジョンの中は、殺る気があるのかってくらい生ぬるい。
それに比べて、どうだこのダンジョンは!
敵の魔獣の戦闘技術はお粗末だが、各階層のトラップや配置など、侵入者に容赦しない姿勢には好感度が持てる。
綺麗に消毒したくなるぜぇ!
「ひゃっはーー!!」
「マスター、3階層のマッピングが終わりそうであります」
「よーし、奥に進め野郎どもー!」
俺の海賊船ダンジョンは3階層を進み、ボス部屋へとたどり着く。
3階層のボス部屋は、とてもとても広大だった。
「電波スキャン機能によれば、どうやらこの部屋、地球くらいのサイズがあるであります」
マジかよ。規格外なサイズだなぁ。
部屋の四辺は水で囲われていて、真ん中が巨大な機械大陸らしい。
「キェェェエエエエエエ!(昔々、世界はプレート状である、と信じられていた時代があったんや)」
「誰だぁ?!」
俺の船の上に、銀色のティラノサウルスが乗りこんでいた。
いつの間に。
「キィェェエエエエエエエエ!
(世界が乗ってるプレートの端から漏れた水は、その下の巨大な海に注がれてる。
そう思われてたらしいで)」
エセ関西弁を喋ってたのは、この機械爬虫類か。
「キャッキャッキャ!(プレート状の世界が下に落ちないのは、巨大な魚、バハムートが世界を支えてるおかげやと、そう信じられとった)」
一体、何の話をしているんだぁ?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
んあ?
機械床の大陸が動いている?
「キィィェェエエエエエエエエエ!
(世界を支えるだけの巨大魚、地球サイズの魔獣を再現しとるさかい。
勝てるもんなら勝ってみたらええわ)」
機械爬虫類は船から飛び降り、さっさとボス部屋から退室した。
それと同時に、そいつは姿を現した。
「ギャァァァァアアアアアアアーーッス!!(こんにちは~)」
「なんだとーー?!」
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人工巨大魚 Lv:120
スキル:【スキル共有】【重力マスター】【自動HPMP回復】
HP 5,700/5,700 MP3,150/3,150
力522 頑丈さ1,320 素早さ45 知識2,331 魔法力1,050 器用さ5
かつて世界を支えていたという伝説の魚を再現したもの。
世界は丸いと言われてから、その存在は疑問視されるようになった。
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目視ではとらえきれないほどの巨大な機械の塊。
地球サイズの魔獣とかふざけんなぁ!
運営は何考えてるんだ!
俺の海賊船ダンジョンは不壊だが、あのサイズの魔獣に体当たりされたら、内部に強烈な衝撃が来て、俺の配下が死ぬ。
というか、この機械ダンジョンだってタダじゃすまねーはずだ!
いや、この世界ごと滅ぶぞ!
「心配ご無用であります。ダンジョンの中の攻撃は、ダンジョン外へ伝わらないであります」
「そうかよ!
犠牲になるのは俺達だけってことかよ!」
冗談じゃねー!
「野郎ども! 逃げるぞ! 全員撤収ー!」
俺様の合図で海賊船は大部屋から出たが、
「キェェェェエエエエ!
(ワイが逃がすとでも思とるんかいな?)」
通路にスタンバってた機械爬虫類がプラズマ砲を撃ってきて、海賊船ダンジョンが吹っ飛び、大部屋へ戻される。
そして、時速100kmくらいのスピードで機械巨大魚が海賊船に衝突した。
地球が高速道路の車並みのスピードでぶつかったようなものだ。
海賊船ダンジョンの中にいた俺達は全員、衝撃でミンチになった。
ファントムバードもやられたから、あの体当たりは魔法による破壊力もあったのだろう。
「ギャァァアアアアアァァァーーッス?(あれ~? 食い倒れさ~ん?)」
機械爬虫類は衝撃に巻き込まれないように逃げていたのだが、肉塊になった俺はそんなこと知らなかった。
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今回の成果。
増減前2,646,630DP
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収入0DP
支出0DP
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現在2,646,630DP
手持ち1DKP
過去3年の記録11DKP




